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34.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 明日の謁見式に向け、礼儀作法の授業を終えたアリスは、明日から同じチーム、クラスメイトになるエルフのアダンに付きまとわれて困り果てていた。だが、アダンはこれからのアリスたちの予定を聞くと……?

「やったね! 皓然だけだよぉ、いつもぼくを褒めてくれるの!」


 そう言って皓然に抱きつこうとしたアダンだったが、クロエに邪魔されてしまっていた。顔の前に烏が飛び出してきて威嚇されたのだから、さすがの彼でもひるんだらしい。しばらく、クロエに睨みつけられながら部屋の隅で小さくなる羽目になった。


 それを視界の端で捉えつつ、アリスは「おじいちゃんの所、行っていいでしょ?」とレオに笑顔を見せた。

「まあ、行ってもいいと思うけど……」


 レオは腕時計を眺めた。


「じいちゃんから、用意が出来たら連絡するって言われてるんだ。だから、もう少し待ってた方がいいと思う」


「はぁい……」


 アリスが素直に返事をした所で、アダンが慌てたように部屋を出て行った。


「ポポフ先生に会いに行くの!? じゃあ、ぼくはこれで! 明日からよろしく!」


 あわただしく閉じたドアを見つめ、アリスは首を傾げた。


「急にどうしたんだろう?」


「ポポフ先生は武術をボクらに教えてくれているからね。……すごく厳しく。だから逃げたんだよ、アダンは。よく練習をサボっては、お仕置きされているからね」


 パウラの顔を見るに、祖父はよほど厳しいらしい。


 だが、残念ながらアリスにはそんな祖父が一つも想像できないのだ。


 ガブリエルは、決まって年に四回尋ねてくる。一シーズンに一回だ。来るときは決まってラファエルと一緒。二人で一緒にやってくるが、ガブリエルは一泊だけして帰っていく。今思えば、彼の立場上、あまり王宮から離れられないからだったのだろう。


 遊びに来たガブリエルは、両親とよく話し込んでいた。その時は、アリスだけではなく、兄たちでさえ、話し合いに参加は出来なかった。


 それ以外の時は、アリスたちと遊んでくれる。ルイスは足が悪いから、ガブリエルが肩車してくれたり、出先で疲れ切ったアリスを抱っこしてくれたり。背の高いガブリエルに抱き上げられると、いつもと違った景色が見れるから、肩車してもらうのがとても好きだった。


 そんな優しい祖父から連絡が来たのは、それから十分ほど経ってからだった。指定された場所は、ガブリエルが住んでいる部屋。十一階の大きなスイートルームだった。


 ターコイズがあしらわれた扉をノックすると、アンが出迎えてくれた。


「お母さん!」


「いらっしゃい。ほら、おじいちゃんが待ってるわ」


 アンに案内され、アリスたちは広い部屋に足を踏み込んだ。


 何ともシンプルで殺風景な部屋に。しかし、あちこちにナイフだの剣だのが飾られている、少し危険を漂わせるような部屋に。


「お父さん、アリーたちが来たわよ」


「おお、お前たち!」


 リビングに入ってすぐ、ガブリエルが笑顔で出迎えてくれた。


 アンと同じ黒い瞳に、真っ白に染まった髪。深いしわが刻まれた顔。いかつい体に貼りつくような黒いティーシャツにジーンズ姿の祖父は、アリスとレオの頭をわしゃわしゃとかき乱した。


「よく来たなぁ! え? 少し見ないうちに背が伸びたんじゃないか?」


「じいちゃん、痛いって!」


 早々にガブリエルの手から逃れたレオは、チラリとパウラと皓然の二人を見た。友人たちに、こうして子ども扱いされている姿を見られたくないのだ。


 レオに逃れられたガブリエルは、手持ち無沙汰になってしまったその手もアリスを可愛がるのに使いだした。アリスの頬をこれでもかとこねくり回し、「相変わらず、可愛いやつだなぁ」なんて言い出す始末だ。


「お父さん、アリーが痛がってる」


「おお、すまんなぁ! いやぁ、よく来た! 買い物は大変だったなぁ。すぐ駆けつけてやれなくてすまなかったなぁ!」


「だから、アリーが痛がってるってば。放してあげて」


 最後にアリスの頭をポンポンなでて、分厚い手はアリスから離れた。


「おじいちゃん、久しぶり!」


 髪を整えながらアリスが笑顔を見せると、ガブリエルはさらに笑みを深めて何度もうなずいた。


「孫ってのはいくつになっても可愛いもんだなぁ。なあ、アン?」


「だからって甘やかし過ぎよ。毎回、うちに来るたびに色々と玩具だのお菓子だの持ってきて、甘やかして帰っていくんだから」


 アンはそう言って肩をすくめたが、アリスは首を傾げた。ガブリエルは自分たちを可愛がってくれているのだから、別に問題などないと思うのだ。


 最近知った事実だが、血が繋がっていない自分たちなのに。


「まあ、座れ。ほら、ツヴィングリと黄も」


「は、はい!」


 緊張気味の二人は、アリスたちと違ってカチコチになりながら勧められたソファに腰かけた。よほど、ガブリエルを怖がっているらしい。


「二人とも、そんなにおじいちゃんが怖いの?」


「怖いわけじゃないよ」


 どう見ても緊張しているパウラは、背筋をピンと伸ばしたままソファに腰かけた。


「だって、ポポフ家って身分の高い家なんだ……。ボクらは、戦闘訓練をしていただいているだけでも奇跡なのに」


「何を言う。ツヴィングリ家はうちと同じだろう!」


 豪快に笑うガブリエルは、自身の膝を何度もたたいた。パウラは何も面白いことを言っていないのに、大笑いだ。


 それなのに、パウラは表情を暗いものにした。


「そんな……。私たちは、平民身分ですよ。兄には勘当されたも当然なんですから」


「だが、お前は間違いなく、あのエルンストの娘だ」


 ガブリエルは何度も深くうなずいた。


「とはいえ、嫌な思いをさせたようだ。すまないな」


「いえ、お気になさらず……」


 そう言ったパウラは、愛想笑いを浮かべていた。


 何となくだが、パウラの家庭について聞いてはいけないような気がしたアリスは「おじいちゃんって、そんなに身分が高いの?」と別の話を持ち掛けた。


「自分で言うことでもないんだがなぁ。ポポフはアエラスの公爵家の一つなんだ」


「……へ」


 まさか、自分の母方の家が爵位持ちだなんて夢にも思わなかった。

お読みいただきありがとうございました!

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