35.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
アダンも去り、アリスたちは祖父のガブリエル・ポポフの元を訪れた。出迎えてくれたのは、母のアン。そのことに驚きつつも、アリスたちは祖父との再会を果たすことができたのだが……。
まさか、自分の母方の家が爵位持ちだなんて夢にも思わなかった。
「こ、公爵家……」
アリスは音を立ててつばを飲み込んだ。
「ってことは、もしかしてお父さんも?」
「ランフォードは平民の家よ」
みんなにお茶を配りながら、アンが教えてくれた。
「まあ、ユリア様の子孫だから、本当は平民身分なのがおかしいんだけどね。この国は三つの公爵家があるの。ピレネン家、ポポフ家、ツヴィングリ家の三家よ。アリーは一応、全部の公爵家と繋がりがあるけどね」
「え? 私、ピレネン家の人と会ったことないよ」
「あるでしょ。うちによく来てたエスコ・ピレネン」
「え、エスコおじさんもこっちの人なの!?」
思わず大きな声を出してしまったのには、理由がある。
アンが出したエスコ・ピレネンという人物は、ルイスが経営している会社の人間なのだと聞いていたからだ。昔からよくランフォード家に顔を出していた彼は、アリスたちともよく遊んでくれていた。
今思えば、両親とも随分仲が良かった彼は昔、アリスたちに「ピーピーおじさん」なんてマヌケな愛称で呼ばれていた。由来は、来るたびに口笛を吹いていたので、幼かったアリスが「ピーピーのおじさん!」と呼びだしたこと。
確かに、ランフォード家には各国からの客人が訪れていた。会社の関係者なのだと。
「そんな身分の高い人だったなんて……」
雲の上の存在だと思っていた公爵家の人たちが、まさかこんな身近にいるなんて思いもしなかった。
「エスコは私たちのチームメイトで、幼馴染でもあるの。本当はうちの会社の人じゃなくて、国王陛下の側近。でもきっと、今まで通り接してあげた方が本人は喜ぶんじゃない? あの人、そういう堅苦しいの苦手だから」
気の抜けた返事をしながら、アリスはカップに口を付けた。みんな、アリスに隠し事をしすぎなのではないだろうか。というより、そういう情報は早く教えておいてくれないと困る。アダンが明日から同じ部屋で暮らすことも含めて。
「あとは何か、私に隠し事ない?」
「なんでそんな疑ってかかるんだよ」
レオは思い切り顔をしかめたが、皓然が「まあまあ」となだめてくれた。
「アダンのことは、すみませんでした。言い訳になっちゃいますけど、少し忙しくて言うのを忘れてしまっていました。それから、別にみんな隠し事をしていたわけではないですよ」
皓然が言うのなら、そうなのだろう。アリスは素直にうなずき、みんなに疑ってかかったことを謝った。
「アリー、明日は楽しみにしているからな」
空気を戻すように、ガブリエルはアリスに笑って見せた。
「初めてお前の記念日に立ち会えるから、じいちゃんは嬉しくて仕方ないよ」
「うん、私も! あのね、今日は明日の練習してきたんだよ! やっぱり、おじいちゃんも明日来るの?」
「そりゃ行くさ! 俺の仕事は、陛下をお守りすることだからなぁ。陛下のすぐそばでお前を見ていられるよ! ラファエルの時も、レオの時も、俺はどの保護者よりも特等席で孫たちの晴れ姿を見てきたんだからな!」
その言葉に、アリスはさらに顔を輝かせた。これまで、学校行事に保護者が来てくれたことは一度もないからだ。
「お母さんもいるよね!」
「……ごめんね、私は今日の夜には帰るのよ」
笑顔が引っ込んでしまったアリスに、アンは本当に申し訳なさそうな顔をした。
「こっちには、仕事で来ていただけだから……。でも、帰る前に一目でも会えたから良かった。今度こそ夏休みまで会えなくなるけど、元気に頑張ってね。お家にいる時にも言ったけど、何か困ったことがあったらお兄ちゃんたちに相談してね。魔術師はとても大変でしょうけど、アリーならきっと大丈夫。ママもパパも、応援してるからね」
「うん……。頑張るね。お仕事、お疲れ様」
アンを困らせてはいけない。
それはよく分かっているから、アリスは祖父と母に笑顔を見せた。
それから他愛のない会話をして、アリスたちはお暇することにした。
最後にアンとガブリエルに抱きしめてもらって、部屋に帰ると大きな荷物が届いていた。
お読みいただきありがとうございました!




