33.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
魔術師になる前の最終確認「お使い」をする理由を教えてもらったアリス。これで、無事に魔術師になれるのだという。そんなアリスは、国王に挨拶をするため、謁見式の練習へ行くことになるのだが……。
正直、アリスはどうしても魔術師になりたいわけではない。許されるなら、別世界にいる親元でゆっくりと過ごしていたい。
だが、これはアリスだけの問題ではない。他の三人はきっと、魔術師になりたくて来たのだろうから。
「で、無事に魔術師になれたアリス・ランフォードさん」
レオは妹にニヤッと笑って見せた。
「明後日は謁見式だから、ヘマしないようにな」
「えっけんしき?」
「向こうで言う所の入学式みたいな。国王陛下に挨拶する式だよ。ちなみに、おえらーい人たちもたくさん出てる」
「えー!」
思わず声をあげたアリスに、「でも」と皓然が慌てて声をかけた。
「ポポフ先生もいらっしゃいますよ! ガブリエル・ポポフ近衛兵隊長!」
「おじいちゃんが?」
そうだ。アリスたち一家が魔術師なのであれば、その血縁者も魔術師ということになるではないか。
現在、アリスが知る血縁者は、自分たち家族に叔母夫婦だと思っていたヘレナとカイルの二人。それから、アンの実父であるガブリエル。つまり、アリスたちの祖父。この三人だ。
「ガブリエル・ポポフ先生は、この国の近衛兵隊長を務めてらっしゃる腕の立つ魔術師なんですよ。今、国王ご一家は国の巡視中で、ポポフ先生はその護衛で出張中なんです。だから、明日、アリスに会えることを楽しみにしていらっしゃると思います」
「明日帰ってくるの?」
「はい。だから、謁見式が明後日なんです。明日は、王宮に戻られて、お休みする日です」
それなら、謁見式も嫌ではないかもしれない。
「じゃあ、おじいちゃんが入学式に出てくれるんだ!」
「入学式じゃなくて、謁見式な」
それを知り、アリスはわくわく胸を躍らせながら明日を待った。どういう理由かは知らないが、アンもしばらくはこっちにいるらしいので、不安に思っていた気持ちも少しはマシになった気がする。
次の日。
アリスはクラスメイトになる桃子たちと一緒に、朝から生活指導のアドワ・アドナン先生のマナー講座を受けることになった。国王ご一家にきちんと挨拶をするためだ。
クラスメイトは、アリスを含めて二十七人。桃子、俊宇、ユーゴの三人以外は当たり前なのだが、全く知らない人たちだ。
その人たちが、教室に入ってきたアリスをジロジロと眺め、コソコソと話していた。
「まあ、金髪は珍しいからね! 気にしない!」
「そういう千夜族だって珍しいだろ」
小さくなるアリスの肩を叩く桃子に、ユーゴは呆れ気味に肩をすくめた。
そしてさらに、珍しいクラスメイトがやってきた。
「やあ。この後、一緒に中庭のカフェに行かない?」
「はあ?」
アリスと桃子の手を取り、いきなりお誘いをしてきたのは美しい少年だった。
日の光を浴びてキラキラと輝く銀髪に、燃えるように赤い瞳。そして何より目を引いたのが、彼の尖った耳だった。
まるで人とは思えない……。
「……君が噂のアダン・トゥータン?」
相変わらず口元を隠しながら尋ねた俊宇に、少年は「そうだよ」と笑顔で頷いた。
「ごめん、ごめん。名前言うの忘れてたよ。ぼくはアダン。エルフだよ。君がアリスで、君が桃子。そうだろ? これからよろしくね! アリスは、チームメイトとしてもよろしく!」
——本当に人ではなかった。
「エルフ……」
魔法使いだの魔術師だのも驚きだったが、実際にエルフという別の種族を目にすると、自分が異世界に来たのだと実感する。
アリスだけでなく、桃子も目の前のエルフをまじまじと見つめていた。
「なになに? もしかして、ぼくに惚れちゃった?」
「珍しいんだろ」
ユーゴが呆れ気味に言った時だった。
ずっと話を聞いていたアドワが、手を叩いて「注目!」と声をあげた。
「今年は珍しい新入生が多いようだね。さて、私も自己紹介と行こうか。アドワ・アドナンだ。階級は上級、専門は聖獣学だ。君たちのクラスを担当するから、一年間よろしく」
担任のアドワは、ベリーショートの黒髪に茶色の瞳を持つ、背の高い先生だった。肌の色が濃い彼女の手のひらは、なんだか異様に白いように見えた。
「さて、今日集まってもらったのは他でもない。明日の謁見式の流れを説明し、簡単に練習するためだ。別世界から来た者や、今年から王宮に上がった者もいる。礼儀作法を知っている者は、知らない者を助けてやるように」
生徒たちが返事をすると、アドワは明日の流れについて説明してくれた。
まず、国王による言葉。新入生を歓迎してもらう。その流れで、認定式へ。ここで魔術師の証である階級章が国王から手渡しされ、正式に魔術師として認められる。
その後、重役と先生たちの紹介、注意事項、諸連絡が行われ、式は終了。チーム入会式を経て、アリスたち新入生は王宮案内され、魔術師としてさらに注意事項を聞く。
「とはいっても、君らが明日一番気を張るのは認定式だろう。明日は礼儀作法を間違えることなく完璧にこなし、注意事項をちゃんと聞いてくれればそれでいい」
そして、アリスたちは二人一組になって礼儀作法を習った。
基本、国王が許すまで頭をあげない。そして、背を向けてはならない。
答えは「はい」か「いいえ」のみ。自分から話しかけてはならない。
早い話、国王から声をかけられるまで、アリスたちはお辞儀したまま動けないらしい。
お辞儀というのは、よく物語のお姫様がしているようなカーテシーだった。スカートの裾を持ち、膝を曲げて深く体を沈ませる方法だ。
ペアの桃子とお互いにお辞儀をしあって練習し、当日の動きを確認して今日は終わった。
名前を呼ばれたら、返事をして国王の前に立つ。そして、練習したお辞儀。国王から頭をあげるよう言われたら返事をして一歩前進。階級章を受け取ったら一歩下がってまた一礼。許可が下りたら元の場所へ戻る……。
半分ほど覚えるのを諦めたアリスは、当日の周りに合わせようと半ば開き直っていた。
何しろ、今日のアリスの一大イベントは祖父のガブリエルに会うことだからだ。
長い礼儀作法のレッスンを終えたアリスは、みんなにさっさと挨拶をして部屋に戻ろうとした。それなのに、どういうことだろう。あのエルフの少年が後を追いかけながら話しかけてきたのだ。
「——それでね、窓際にいたポニーテールの子がぼくらと同じ推薦で登城したセレナ・リラ・コルデーロ。その子とペアになってたのが侯爵家のルイーズ・ド・フレースって言うんだよ」
「そうなんだ。それで、君はいつまで私についてくるつもりなの?」
「何言ってるんだよ。同じ部屋に帰るんだよ。チームメイトじゃないか」
「それ、今日からなの? 私、パウラたちから何も聞いてないよ」
「そりゃそうだ。実際にぼくが同じ部屋になるのは明日からなんだから」
「じゃあ今日はまだ、自分の部屋が他にあるんじゃん!」
そんなこんなで、部屋に帰ったアリスは疲れ切ってしまっていた。
「……ただいま」
「やっほー! みんな、昨日ぶり! ぼくね、ぼくね、ちゃんとお買い物もクリアしたし、補講も受講してきたよ! 偉いでしょ、褒めていいよ!」
待っていてくれた三人は、二人を見ただけで何があったのか悟ったらしかった。
「相変わらず、お喋りさんですね」
テーブルに頬杖をついて、皓然は小さくため息をついた。
「補講が無ければ、もっと良かったんですけどね。まあ、ちゃんと終わったのなら良かったです。えらい、えらい」
「やったね! 皓然だけだよぉ、いつもぼくを褒めてくれるの!」
そう言って皓然に抱きつこうとしたアダンだったが、クロエに邪魔されてしまっていた。顔の前に烏が飛び出してきて威嚇されたのだから、さすがの彼でもひるんだらしい。しばらく、クロエに睨みつけられながら部屋の隅で小さくなる羽目になった。
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