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211.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 今回の中級魔術師昇級試験。どうやら、ルイーズは母親から「アリスを絶対に不合格にしろ」と命じられていたらしい。しかし、ルイーズは正々堂々とアリスと戦いたいという。そこで、アリスは「この試験が終わったら、もう一度戦おう」と提案し……。

「受験番号三十一番、不合格。十八番、不合格」


 試験監督者の言葉を聞きながら、ルイスは受験生リストに目を落としていた。


 今回から、中級魔術師昇級試験の審査方法が変更となる。


 これまでは、時間内に相性が最悪の人とペアを組まされ、一緒に『写しの洞窟』の最深部にたどり着ければ合格だった。それは、ルイスが学生だった頃からこれまで、変わらない。


 変更点。それは、アゴーナスのように、評価するに値する行動をした魔術師にポイントが加算されていくシステム。なお、公平性の観点から、自国の魔術師にはポイントを入れることができないことになっている。つまり、ルイスであれば、アエラスの魔術師たちにポイントを入れることができないのだ。


 最初は、また保守派の陰謀だと思った。魔術師家系では無い魔術師——例えば、ユーゴとセレナような魔術師を間引きし、保守派に取って使いやすい魔術師だけを残そうとしているのだと。後者は、ルイーズやアメリがその最たる例となるだろう。


 そして、アリスは必ずルイーズとペアにさせる。そうすれば、この二人が合格した時点でユリアの子孫であるアリスと、保守派貴族の娘であるルイーズを昇級させることができる。


 どんなに努力を重ねたって、血筋は変えられない。ユーゴとセレナの前には、どうしても越えられない高い高い壁がある。


 だから最初、ゼノ国王から今回の試験の採点方法について説明を受けた時、「公平性を著しく欠く」と言ったのだ。


 だが、どうやら目的は別にあるらしい。不合格者の中には、保守派貴族の子供も含まれているから。


 だから、ずっとその『別の目的』について考えていた。


 そして、やっとそれの中身が分かった。


 審査員として、各国からの上級魔術師が四人ずつと、全世界魔術師育成委員会の会長と副会長が選出されている。各国からの上級魔術師は、魔術師統括管理者と、その補佐役、魔法使い養成課程六年生の担任、魔術師養成課程七年生の担任だ。


 アエラスであれば、ルイス、トーマス・レンデル、村椿杏佳、サリー・スミスの四人。貴族だとか、保守派だとか、そんなことは一切関係ない。


 問題は、試験内容。


 試験について書かれた資料をめくり、ルイスは目を細めた。


 これは、中級魔術師昇級試験とみせかけたアリスのテストだ。アリスがどれほどの力を持っているのかを見るためのもの。


 そして、そのアリスが合格ラインを越えなかった場合、アリスに代わるヘレナ討伐に適した魔術師を見つけ出すため。もしくは、アリスとともにヘレナ討伐に向かわせるに値する魔術師を見つけるための試験。


 これに気付いたルイスは、もちろん全世界魔術師育成委員会の会長である千夜族、土御門(つちみかど)を睨みつけた。


 しかし、その土御門はルイスの視線には気付かないフリを決め込んでいる。モニターを睨んで、受験者たちを見定めようと演技しているから。


 恐らく、彼の中ではすでに合格者は決まっているのだろう。


 気分が晴れないまま、ルイスは受験者たちの見極めを続けた。


 中級魔術師ともなれば、生活をしているチーム以外の魔術師と組んで依頼を受けることができるようになる。それに、単独依頼も受けられる。だからこそ、初級魔術師に比べて、中級魔術師の死亡率がとても高い。一番死亡率の高い階級と言っても過言ではないだろう。


 特に、昇級したての中級魔術師が一番危ない。


 だからこそ、受験資格は難しく設定されているし、試験内容だって『相性の悪い人同士でペアになって、ゴールへ行く』という意地の悪いものになっている。


 加えて、今回からは上級魔術師が実際に見極めを行う。今回の試験は、過去一番の最難関となっているだろう。


 幸いなことに、今の所アリスたちはまだ不合格になっていない。ただし、一番ゴールから遠いのがアリスとルイーズのペアだった。コピーたちに追いかけまわされたおかげで、ゴールから離れてしまったから。


 試験終了まで、あと一時間。


 このままコピーと当たらなければ、アリスたちもゴールにはたどり着くことができるだろう。


 しかし、そのゴールへの道を阻んでいるのは——。


 肘をついたルイスは、顎を手のひらに乗せて瞳を細めた。


 ただでさえ意地の悪い試験なのに、これほどまでに難易度が上がった。おまけに、各国の三年生はほぼ強制参加のこの試験。そろそろ学生たちが不憫に思えてきた。


「——ルイス先生」


 隣から、腕を組んでモニターを見ていたトーマスの楽しそうな声が聞こえてきた。


「来ましたよ。一番乗りのチーム」


「……お前と俺は同い年だろ。なんでそんな他人行儀なんだよ」


「仕事上、今のあなたは私の上司ですからね」


 その言葉に肩をすくめてから、ルイスもモニターを見つめた。


 一番乗りは、ネロとフォティアの魔術師コンビ。喧嘩をしながらゴール前の部屋に入ってきた。


 そして、一瞬で戦闘不能にされた。


「受験番号三番、四十四番、不合格」


 試験監督者の抑揚のない声に合わせ、モニターの中から魔術師たちの姿が消えた。


 ゴール前を守っているコピーは、無表情のままライフルを再び装填して再び動かなくなった。


 最強の攻撃魔術が扱える。


 確かに、暴走して自滅してしまう家系特性を持つ魔術師より、財宝を守るのに向いているだろう。


 最強の攻撃魔術を持つ魔術師のコピーは、青い瞳をゆっくりと閉じた。

お読みいただきありがとうございました!

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