198.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
見事、淑女コンテストで優勝を飾ったレナ(レオ)。キュプリアの帯も無事に手に入れ、依頼を達成することができた。アリスは、最後にリリアーナと少しだけ言葉を交わすことができて……。
「あーっ! 疲れた!」
アエラスに無事に帰ってきたアリスたちは、キュプリアの帯を国に提出して部屋に帰ってきた。
特にずっと女性のふりをしていたレオは疲れ切っているらしく、大きく体を伸ばしてソファに飛び込んだ。ウィッグの痕が付いた髪を整えもしないで。
「あのキュプリアの帯が本物かどうかは、鑑定家に任せたし。ポイントもいっぱいもらえたし。俺、今回一番の立役者だろ!」
「そうだなー。えらいなー」
ほとんど棒読みでレオを褒めたパウラは、レオのようにソファに倒れこむのではなく、皓然とアダンに声をかけた。
「どうだった? 何か、情報はゲットできたか?」
「ぼくはあまり……」
メモを手に、皓然は相変わらず眼鏡をかけたまま顔をしかめた。時々、眠たそうに目をこすりながら。それに、大きなあくびも。
「ふあ……。すみません」
「珍しいな。お眠か?」
「……途中で頭痛薬飲んだので、その副作用かと。えっと、それより……。『第三次世界大戦中に、アエラスの魔術師が持ちだしたらしい』って声が一番多かったです。でも、それが誰なのかまでは不明みたいです。それから、キュプリアの帯がミュティに寄贈されたのは一年半前。アエラスから返却を強く求められ、『本物かどうかも分からないものを渡せない』とずっと渋っていたようです。しかし、あまりにもアエラスが返却を強く求めるので、手放すことを決意。それで、今回の淑女コンテストの優勝賞品として出したんだとか」
「なるほど。アダンは?」
「ぼくねー、凄いこと聞いちゃった」
そう言ってパウラにニヤリと笑ったアダンは、とんでもないことを口にした。
「ぼくの母さんなんだって」
「なにが?」
「キュプリアの帯を、大戦中にアエラスの宝物庫から持ちだしたの。イザベラ・トゥータンなんだって」
アダンのその言葉に、アリスたちは一斉に驚きの声をあげた。眠そうにしていたレオと皓然ですら、半分閉じられていた瞳が見開かれている。
「ど、どういうこと!?」
ローズの最もな問いに、アダンは「そのままの意味だよ」とのんびり答えた。
「ちなみに、これを教えてくれたのは第三次世界大戦でアエラス軍として戦っていた人。名前までは分からないなぁ。でも、間違いないんだって。母さんがキュプリアの帯を使って相手軍を骨抜きにしてたの、見たんだって。それで引っかかったのが、ぼくの父さんなんだって。キュプリアの帯ってすごくってね、何でも言うことを聞いちゃうんだって。父さん、目が見えないんだけどね、それって母さんが父さんの目玉を潰したからなんだって」
その言葉に、アリスは思わず「ヒッ」と喉を詰まらせた。変な脂汗が浮かんでくる……。
だが、レオに肩を抱かれてアリスはハッとした。そっとレオに視線を向けると、「落ち着け」と腕をさすられた。
レオは、事情を知っている。そのことに、これほど感謝したことはない。
アリスが落ち着いたのを見てから、パウラは部屋を歩き回り始めた。
「どうしてイザベラ先生はキュプリアの帯を盗んだんだ? あの戦争中、ヘレナ先生のチームはずっとフィリップ・ハーコートを探していたってことになってる。ということは、国も知らない何かがあった? ヘレナ先生たちには、フィリップ・ハーコート以外に何か目的があったってことか?」
「さあ、そこまではね」
大げさに肩をすくめたアダンは、アリスの手にメモ帳を置いた。乱雑なアダンの文字で、今教えてくれたことが書いてある。
「ごめん、アリス。代わりに報告書まとめといて。ちょっとシャワー浴びたくってさ」
「な、なんで私……」
その瞬間、アリスの隣でローズが小さなくしゃみをした。
「アダン、なんか変な匂いよ。香水? あと、おトイレ? 埃と煙草の匂いもする。色んな人の匂いが混ざってるみたいだけど……。なんというか、独特な匂い……。私には合わないみたい……」
「だから、シャワーを浴びてくるんだって。ほら、人込みにいたからさ」
みんなに笑って見せてから、アダンは着替えも持たずにシャワールームに消えていった。
「——皓然」
シャワールームを睨みながら、パウラはもう一人の情報収集班を呼んだ。
「アダン、どこにいたのか分かるか?」
「……すみません、別行動していたので」
「そうか」
腰に手を当て、パウラはアリスからアダンのメモ帳を受け取った。
「とりあえず、報告書はボクの方で何とかする。皓然もメモ貸せ。もう立っているのも限界だろ。フラフラだぞ」
パウラの言う通り、皓然はフラフラしながら立っていた。頭痛薬を飲んだというが、これほどまでに強い副作用の出る頭痛薬など、アリスは聞いたことがない。魔術界に来てからも何度か市販の物を買っているが、ここまで眠くなったことは無かった。
なぜ情報収集班の二人がこんな状態なのかは分からない。分からないけれど、アリスたちの知らないところで、二人に何かがあったことは確かだった。
皓然はパウラにメモと眼鏡を渡すと、もう限界だったのだろう。ソファに倒れこみ、すぐに寝息を立て始めた。
そんな彼のメモを見たパウラは、低い声で「ふーん?」ともらした。
皓然が書いたものにしては、文字が汚くて内容が雑だ。昨日までのメモと文字を見比べると、その差は一目瞭然。情報収集を始めたのを大会が始まってからだと仮定すると、彼は大分前から眠気と戦っていたことになる。
「——『頭痛薬』、ねぇ?」
静かな寝息を立てる皓然に向けられたパウラの瞳は、何かを探るかのようなものだった。
皓然は片頭痛持ちというわけではない。普段から頭痛薬を持ち歩いていることは、まず考えられない。
普段から持ち歩いているのは、牡丹が特別に調合した薬だけ。副作用で強い眠気が起こると説明を受けているし、処方箋にもそう書いてあった。
——考えられるとしたら、こっちか。
二人のメモをポケットにしまい込み、パウラは報告書を書くために自室に向かった。
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