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第三話「安藤このみの記録」


第三話「安藤このみの記録」


            ◆


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第四管区・第二前線基地 廃棄記録 第二号


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 管理番号  :#0002

 記録種別  :定期戦闘報告

 対象    :第四管区所属 魔法少女

 記録日   :██年██月██日

 作成者   :管理官 黒木 誠


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 対象氏名  :安藤 このみ(あんどう このみ)

 生年月日  :██年██月██日(満17歳)

 所属期間  :██年██月██日より

 変換形態名 :《夜鳴ヨナキ


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■初期ステータス


 魔力残存量 :91.2%

 身体損耗率 :3.4%

 精神安定度 :A(良好)


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■今月の戦闘実績


 出撃回数  :6回

 撃破数   :魔族18体 (うち上位種 0体)

 負傷記録  :軽度複数回(いずれも自然回復済み)

 特記事項  :なし


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■総評


 中堅として安定した戦闘実績を持つ。

 突出した適性はないが、連携能力が高く、

 前線での補助役として信頼性が高い。


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個人日記 安藤このみ 17歳 第四管区第一期生


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 ██月██日


 ひかりが死んだ。


 それ以外に書くことがない。

 でも書かないと、どうにかなりそうだから、書く。


 ひかりが死んだ。

 私のかわりに。

 私が動けなかったから。

 私の前に出て、腕を失って、

 それでも最後まで戦って、

 勝って、

 死んだ。


 名前を呼んだ。

 何回呼んだかわからない。

 ひかりは、最後に少しだけ笑った気がする。

 気がするだけで、よくわからない。

 泣いてたから、よく見えなかった。


 帰ろうね、って私が言ったのに。


 私だけ帰ってきた。


            ◆


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第四管区・第二前線基地 廃棄記録 第二号


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■██月 特記報告(月次)


 当月の作戦において、#0001(水瀬ひかり)が任務中に死亡。

 対象個体 #0002(安藤このみ)は当該作戦の生存者。


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 精神安定度 :A → C(有意な低下 要観察)

 行動異常  :睡眠障害(軽度)、食欲低下(一時的)

 離脱リスク :中


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■管理官コメント


 #0001の死亡に起因する一時的な精神的動揺と判断。

 カウンセリングを実施、経過を見る。

 戦闘能力への実質的な影響は現時点で認められない。

 次月以降の任務継続に支障なし。


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            ◆


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個人日記 安藤このみ 17歳


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 ██月██日


 カウンセリングの人に、

 「あなたのせいじゃない」と言われた。


 そうですね、と答えた。


 そう言うしかないから、そう言った。


 ベッドに戻ってから、ひかりの荷物がないことに気づいた。

 もうなかった。片付けられていた。

 いつの間に。誰が。


 ひかりのカレーの食べ方が好きだった。

 本当においしそうで、毎回笑ってしまってた。


 食堂に行けない。

 行けば食べてしまうから。

 食べてしまったら、許してしまいそうだから。


 何を、かはわからないけど。


            ◆


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第四管区・第二前線基地 廃棄記録 第二号


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■翌月報告


 対象 #0002 評価


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 魔力残存量 :89.7%

 身体損耗率 :4.1%

 精神安定度 :C → B(回復傾向)


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■翌月方針


 戦闘任務への復帰を許可。

 引き続き精神状態のモニタリングを継続。

 離脱リスク :低(再評価)


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■備考


 家族への連絡事項 :なし


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個人日記 安藤このみ 17歳


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 ██月██日


 任務に復帰した。


 怖かった。でも行った。

 行かなかったら、ひかりが死んだ意味がなくなる気がして。


 そんなことはないってわかってる。

 意味とか、そういうことじゃないって、わかってる。


 でも動く理由が、それしかなかった。


 今日、魔族を五体落とした。

 ひかりがいたら、「すごいじゃん」って言ってくれたと思う。


 言ってくれないけど。


 ひかりのお父さん、どうなったんだろう。

 封筒、渡せたのかな。


 聞ける人が、いない。


            ◆


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第四管区・第二前線基地 廃棄記録 第二号


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■██月 特記報告(月次)


 対象 #0002 戦闘復帰後 初月評価


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 魔力残存量 :86.3%

 身体損耗率 :6.8%

 精神安定度 :B(安定)


 出撃回数  :8回

 撃破数   :魔族31体(うち上位種 1体)

 特記事項  :復帰後、戦闘効率が顕著に向上


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■管理官コメント


 精神的回復と並行して、戦闘適性の向上が見られる。

 損耗率の上昇については継続監視が必要だが、

 現段階では許容範囲内。


 次月より難度の段階的引き上げを検討する。


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            ◆


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個人日記 安藤このみ 17歳


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 ██月██日


 今日、黒木さんに呼ばれた。


 「戦闘効率が上がっている」と言われた。

 「このまま続けてほしい」と言われた。


 はい、と答えた。


 黒木さんは、何か言いかけて、やめた。

 少しだけ、眼が泳いだ。


 私は何も聞かなかった。


 聞いたら、何かが終わる気がしたから。


 夜、ひかりのことを考えた。

 ひかりは、最後まで私の名前を知っていたと思う。

 呼んでくれてたから。


 でも報告書には、番号しか書いてないんだろうな。

 なんとなく、そう思う。


 私の番号は、#0002。


 それが、私の名前になっていく。

 少しずつ、少しずつ。


 気づかないふりをしながら、戦い続けている。


            ◆


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後記 担当管理官 黒木 誠 (手書き追記)


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 安藤は 強くなっている


 それが 怖い


                   (削除予定)

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