第106話 素敵な朝
10時間の睡眠の後、エリカは心地よい眠りから目覚めた。
「んー、よく寝た」
カーテンの隙間からは爽やかな朝の光が漏れている。 午前7時頃だろうか?
「気分爽快。 なんて素敵な朝なの」
上半身だけをベッドから起こして目覚めの余韻に浸っていると、寝室のドアが開いてシバー少尉が顔を覗かせる。
「おはよーございますエリカさん、朝食ができました! 起きてください」
シバー少尉は昨夜あの後、何事もなかったかのようにエリカの家に帰って来ていた。 エリカはそのことを取り沙汰することもなく、少尉の後に付いて台所へ行く。 腹が減っていたからだ。 台所から漂い出てくるベーコンの香ばしい匂いに、エリカの腹がクウッと可愛らしい音を立てた。
◇❖◇
朝食のメニューはベーコン・エッグとトーストとサラダと牛乳とオレンジ・ジュースとコーヒー。 エリカは無言で食べて飲んで、すぐに全てを平らげた。
「あー美味しかった」
満腹になったエリカは満足げに宣言した。 シバー少尉の料理の腕前は普通なので、ベーコン・エッグのように美味しい料理であれば普通に美味しい。
コーヒーをすすりながらエリカは昨日の一件について考えを整理し始める。 休息と栄養を取って、ようやく頭が回り始めた。
(昨日あの後どうなったのかしら? いずれにせよ、私の《支配》を二度と企まないよう軍にしっかりと釘を刺しておかなくちゃ)
もうすでに釘は十分に刺さっているのをエリカは知らない。
(それから... マロン君のことよね。 大佐をやっつけたからマロン君は復職できるはず。 あとでハンター協会に行ってみよう)
ふと思いついてエリカはシバー少尉に尋ねる。
チン?(昨晩あの後、ガブリュー大佐とメカジキ少尉はどうなったの?)
シバー少尉は咀嚼していたトーストを急いで飲み込み口を開いた。
「2人とも入院しましたけど。 エリカさん知りませんでした?」
ちん。(知らない。 大佐をやっつけてすぐに帰っちゃったもの)
「大佐をやっつけてすぐ... ってことはエリカさん! 私たちの土下座を見てくれてなかったんですか?」
シバー少尉が「私たち」と言ったのは誤りである。 正しくは「あの人たち」だ。 少尉は土下座に参加していない。
チン?(土下座なんて見てないわよ?)
「そうだったんですね...... ホント残念です。 それはそれは見事な土下座だったんですよ? それに、その後の拍手の海。 あれも感動的でした。 とても素敵な夜だったのに、惜しいことをしましたね」
昨晩の感動を思い出し、シバー少尉はほうっと溜息をつく。
「エリカさんのベルの音がちっとも聞こえてこないから、早いうちに帰ったんだとは思ってましたけど。 まさか土下座すら見てもらえてなかったとは... また皆さんに集まってもらわないと」
皆を集めて、また土下座を披露しようというのだ。 エリカは慌ててベルを鳴らす。
チン!(いや、いい! 集めなくていい。 もう気持ちは伝わったから)
そして間を置かずに再びベルチン。
チン(ちょっと出かけて来るね)
「どちらへ?」
チン(軍庁舎とか)
エリカは素っ気なく言って台所を出た。




