第105話 帰宅
エリカの魔法ベルの音はベルタワーの中まで届き、セコイヤ大尉は広場の異変を察知した。 状況を探ろうと部下を広場へ派遣したが、部下の戻りを待つうちに、大勢が拍手をする音が聞こえて来る。
何事だ? 拍手の音に嫌な予感を覚えていると、部下が戻ってきて報告する。
「ガブリュー大佐とメカジキ少尉が気絶して、マベルス中尉たちが土下座しています」
「なんだって!?」
セコイヤ大尉は驚いたが、すぐに状況を察した。 サワラジリが来たのだ。 土下座の相手もサワラジリに違いない。 彼の同僚はさっき会議室で相談していたことを実行中というわけだ。
セコイヤ大尉の決断は速かった。
「よし撤退だ。 急いで土下座に参加せねば命が危ない」
こうしてセコイヤ大尉のチームはベルタワーから撤退し、小部屋にはアリスだけが残された。
「エリカさんが復活したんかな? あんなベルの音聞いたことないけど」
アリスは気絶しているガブリュー大佐の姿を見てやろうとベルタワーを降りていった。
◇❖◇❖◇
大佐の部下一同による土下座はエリカに届いていなかった。 ガブリュー大佐に怒りの咆哮を食らわせて間もなく、彼女はそそくさと中央広場を立ち去っていたのだ。
エリカがあの場に留まる理由はなかった。《支配》から完全開放されたし、ガブリュー大佐の心をヘシ折れた手応えもあった。 それに、数回に及ぶ自殺&復活による疲労もひどい。 思い返せば、クーララ王国のエージェントを皆殺しにしたのも今日の午前中のこと。 疲れているのも納得、なんとも血生臭い1日だった。
エリカは商店街で夕食を買って家に帰り、シャワーを浴びて夕食を摂ると歯磨きをしてすぐに布団に入った。 軍に再び襲われて《支配》される可能性を思えば大胆な行動だが、エリカは全体的な状況から言ってその可能性は低いと判断していたし、事実その判断は正しかった。
◇❖◇❖◇
ガブリュー大佐は意識を取り戻した後も正気ではない様子で、うつろな目で中空を眺め何やらブツブツとつぶやくばかり。 見かねた部下たちに肩を貸され、拍手に追い立てられるように軍庁舎へ引き上げていった。




