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153.組合長の帰還

「そう言えば、今更だけど、何でお絵描き集団がコーバスの連中に絡みに来たんだ?」


 いつもの面子で酒をダラダラ飲んでいると、ふと思い出して聞いてみた。いつもの面子って言ってもトレオンはいねえけどな。モレリアが言うには王都でのギャンブルが調子いいらしく、もうしばらく遊んでから帰るんだとよ。

 代わりに何故かシリトラが一緒の席に着くことが多くなった。こいつ小言がうっせえから、飲んでもあんまり楽しくねえんだよな。それとなく『どっか行け』って言っても行かねえんだ。頑なに俺と飲みたがる・・・もしかして惚れられた?


「お前、それ凄い今更だな。普通、帰って来た日とかに聞くことだろ。もう何日経った?」

「『お絵描き集団』・・・まあ何を指しているかわかりますけど」

「ベイルって面白いあだ名つけるよね」


「仇とか居場所がどうとか言ってたんだろ?結局何だったんだ?」

「王都にあったクラン4つが消えた事、ベイルは知らないの?結構大騒ぎになっているよ」

「お絵描き集団が消えたぐらいで何でそんなに騒ぐんだ?」

「そりゃあ、クランの中心メンバーは5級ばっかりだぜ。そいつらが外で殺されたり、行方不明になってんだ。そりゃあ、大騒ぎになるのも分かるだろ?」


 うーん。よく分かんねえ。コーバスだとゲレロやシリトラがいなくなったり、殺されたりしたって事だろ。別に『あれ、最近見ねえなあ』、『あちゃあ、死んじまったっか』ぐらいの話じゃねえの?


「何で大騒ぎになるか分かんねえけど、騒ぎなっているってのは分かった。それで何でコーバスに来るんだ?」

「そのクランが私達を狙っていたからですよ。その後に殺されたり行方不明になったから、残ったメンバーは私達が原因だと考えたんでしょう」

「それでコーバスに来たはいいが、肝心の俺達がいねえ。ここからはアウグ達に聞いたが、何故かコーバス連中もその件に加担しているって思い込んでいたみたいだ。だから襲ってきたんだとよ」

「何でだよ!」

「そりゃあ、どのクランも実力者揃いで数も多いですから、私達だけで倒したなんて考えないでしょう」


 それにしちゃあ、コーバス連中も加担って、あまりに発想が飛躍しすぎじゃねえ?


「多分、仇討ちをクラン同士、クラン内で競いあってたから、正常な判断できなかったんでしょう。どこかが動けば、それに負けまいとよく考えずに動いた結果だと思います」

「クランも主要メンバーが消えて、内部で主導権争いしてたんだろ」


 要するに中でも外でも競争してたって事だな。それでコーバスに来て殺されてるんじゃ馬鹿としか言えねえ。


「ふーん。何となく分かった。それで、殺されたりいなくなった連中ってのは誰がやったんだ?お前らか?」

「そんな訳ねえだろ」

「あれから会ってませんし、知りませんよ」

「フフフ」


 まあ、死んだ奴の事なんてどうでもいいか。


「それこそベイルの方には来なかったのか?」

「いや、来てねえな」


 クランってオッサン達もだよな。オッサン達とは偶然出会っただけ・・・どっちかというとレアポケモンだと思って俺から会いに行ったから、来たわけじゃねえ。そう言えばオッサン達何色だったかなあ・・・『肌』色?


「「・・・・・」」


 ふと、見れば、ゲレロとシリトラが俺をジッと見ていた。


「何だ?お前らその目は?」


 俺は嘘は言ってねえぞ。


「いや、別に」

「何でもありません」


 何なんだ?シリトラは俺に惚れているっぽいから分かるが、ゲレロもとか言うなよ。流石にそいつは無理だ。クタイッシュ君に行ってくれ。


「それで、どのクランも殆ど機能しなくなった所に、エル達が台頭して勢力を大きくしているんだって」

「あー。俺、今回の件の犯人分かったわー。俺の頭脳にかかれば謎なんてあっという間に解決よ」


 オッサン達以外は女神達が倒したんだろ。だいたい、こういう時は結果的に一番得した奴が犯人なんだよ。特に卑怯馬鹿は裏で暗躍してたに違いない。


「エル達が犯人じゃないよ。そういう話もあったけど、流石にクラン4つは実力的に厳しいだろうだって」

「馬鹿か、あそこにはタロウがいるじゃねえか、タロウとなら一つ一つに奇襲かければ可能だろ。それに加えて卑怯馬鹿が、何か卑怯な手を使ったに違いねえ」

「うーん。ベイルの言う通り可能かもしれないけど、エル達だよ?そんな事すると思う?」

「思う、思う、あいつら女神以外極悪非道で馬鹿の集まりだからな」

「ベイルは、僕達と人の見方が全く違ってそうだね」


 そんな訳ねえ。モレリアはあいつらに騙されているだけだ。ナンバー3は頭パッパラパーで何も考えてねえ馬鹿だろ。クイトは女神を堕とした極悪人だ。卑怯馬鹿は卑怯馬鹿。カルガーは俺とゲレロを盾でどつき回るのが好きな犬馬鹿だろ。もう一人チョロチョロしてる奴は知らねえ。女神はそんなヤベエ集団に囚われた可哀想なお方だ。いずれ俺が助けてやらねえとな。


「そんな訳ねえだろ。見てろよ。あいつらいずれ王都で調子に乗り出して、好き放題やり始めるぞ。権力持った奴ってのは誰でも同じ事するんだ」


 そんで調子乗り過ぎて、更に上の権力持ちから叩き潰されるまでがセットだ。




「そんな訳ねえだろ。一緒にすんな」


 俺がそう言うと、聞き覚えのある声と共に頭に物凄い衝撃が来た。


「痛えええええ!クソが!誰だ!?」

「俺だよ!」


 痛みに耐えて立ち上がり、後ろから俺を殴った奴に振り返る。振り返った先には二つのお目目がパッチリ開いた開眼オーガ。額に青筋浮かべて、ブチギレ直前って顔している。


・・・・・・


「あー。組合長でしたか。どうもお久しぶりっす。久しぶりなんで、色々お話したいけど、丁度依頼に行く所だったんですよ。いやあ、残念だなあ」


 誰がキレさせたのか知らねえけど、巻き添えでぶん殴られる前に俺は、華麗に立ち去るを選択。


 けど、俺の襟首をガシッと掴んでオーガは逃がしてくれない。


 アレー。ナンデエエエ。


「その依頼はキャンセルだ。てめえは説教だ。こっち来い!」

「エエエエ!ナンデエエエ!俺何もしてないっすよ」

「お前、王都で騒ぎ起こしすぎなんだよ!大人しくしてられねえのか!こっちはそれで総組合長から呼び出しだ!」


 ええ?また俺何かやっちゃいました?・・・・いや、やってねえぞ、王都で大道芸の勉強しただけだ。もしかしてその時にヤジったのがダメだったのか?


「わかりました、今度からヤジったりせず、静かに見てますよ」


 言った瞬間、二度目のゲンコツが頭に叩き落された。


「お前は何の話してんだ!」


 おおおおお、痛ええええ。ヤジの事じゃないのかよ。


「ぎゃははは!!ベイル早速怒られてやがる!」

「いい気味だ!ぶははは」


 俺が殴られるのがそんなに嬉しいのか、ヒビットやペコーが腹抱えて汚く笑うのが聞こえた。


 くそー。あいつら何て性格が悪いんだ。


「てめえらもだ!組合でヘンな儀式してんじゃねえ!」


 そう言って片手で俺を引きずりながら、もう片方の手で、ヒビット達ベテラン連中を次々ぶっ飛ばしていく組合長。いいぞ!もっとやれ!



「それじゃあ、話の前にリリーを呼んでもらいましょうか」


 いつもの定位置に座った俺は、早速要求を出す。デバフのリリーがいないと誰も組合長止めてくれないからね。


「リリー関係ねえだろ」

「じゃあ、何も話しませーん」

「くッ・・・こいつ・・・・殴りてえ・・・」


 しばらく組合長は拳を握り締めて恐ろしかったが、諦めたのかリリーを呼んでくれた。


「何で私が??」

「知らん。そこの馬鹿に聞け」

「俺はリリーを職員で一番信用しているからな!」


 こう言われたら職員冥利に尽きるだろ。


「・・・・・はあー、分かりましたから早く話して下さい」


 あれ?スルー?リアクション無いの?



「凄いですね。この短期間でどうしてそんなに騒ぎ起こせるんですか?実際王都いたのは5日ぐらいですか?」


 組合長は既に王都での話を聞いていたみたいで、その確認で俺から話を聞きたかったみたいだ。初耳のリリーは目を白黒させて驚いている。取り合えず説教じゃなさそうだ。イエーイ!


「取り合えずベイルが何考えて動いていたかは分かった。それでもクランに喧嘩売るとか馬鹿だろ!」

「クランじゃないっすよ。ただの組合員の喧嘩!それなのに妙に仲間意識出して絡んできて、王都の連中気持ち悪くないっすか?」

「・・・ああー。確かにそれはベイルの言う通りだ。組合での喧嘩にクランが出てくるのは・・・少なくとも俺がいた頃は無かった。個人の喧嘩で終わっていたな」

「でしょ、でしょ。全くいつから王都はあんなになっちゃたんでしょうね。王都も変わったなあ」

「てめえは王都はこの間が初めてだろ!ったく話を戻すが、組合の喧嘩でお前ら全員クランから狙われていたはずだ。お前は『黒』が標的にしていたそうだが、来なかったか?」

「いや、来てないっすねえ」


 だって俺から会いに行った・・・いや、偶然出会っちまったって所か?・・・どっちでもいいか。って言うかオッサン達『肌』色じゃなかった『黒』じゃねえか。誰だよ『肌』色とか言った奴。


「タロウに協力して臭いを辿ってもらったんだが、ティガレット様が襲われていた所で『黒』の臭いが消えていた。恐らくサファガリア家を襲ったのは『黒』の連中だ。だが、そこから先が辿れなかった。タロウに詳しいお前ならどう考える?」

「そりゃあ、そこで臭い途切れたって事でしょう。空飛んで逃げたか、地面に埋まっているとかじゃないっすか。樽とかに隠れて馬車で運ばれても、タロウなら雨で臭いが消えるまでは辿れますからね」

「『黒』の連中は知っているから、空飛ぶってのは無いな。そうなるとベイルの言う通り、地面かと思って、俺もタロウが反応した場所を掘り返してみたんだが、何も出なかった」


 まあ、そう簡単に掘り返せる所に埋めてねえし。井戸掘り当てるレベルで掘らないと死体は出てこないですよ。とは言えねえけど。


 そんな訳で話は終わりで俺は解放してもらった。あんまり怒られなかった!イエーイ!




「リリー。今のベイルとの話どう思った?」

「特に嘘を吐いている様子は見えませんでした」


 そうか、リリーも俺と同じ意見か。そうなると、『黒』はどこ行ったんだ?


「もしかしてベイルさんを怪しんでいます?」


 ああ、リリーにはまだ言ってなかったな。


「ベイルは『ドルーフおじさん』の関係者の可能性がある」

「・・・・・・」

「まだ周りには言うなよ。それとなくベイルを見ているだけでいい」


 やっぱり驚くよなあ。普段のあいつと付き合いが長い分、特にだ。


「ベイルさんがもし『黒』を殺していたら組合長はどうされるんですか?」

「別にどうもしねえよ。ただ、話を聞かせてもらうだけだ。外での殺し合いだから、組合が口出す事でもねえ」

「でも、『黒』のメンバーには組合長の元クランのメンバーもいますよね?」

「それがどうした。クラン解散して職員になった時点で、組合員と職員でしっかり線引きはして、あいつらとの関係は終わっている。それにどっちかというと『黒』の連中にはがっかりしてんだ」

「がっかりですか・・・」

「そうだ、暗殺依頼受けるとか組合員として終わっている」

「そ、それは・・・そう考えるには早いのでは?」

「『黒』はボートレットにすり寄っていた。それに何度か会っている事も知っている。そしてタロウ使って調べた結果からも、あいつらがサファガリア家を襲った事は間違いない」

「・・・・・」


 何でバトラーはこんな馬鹿な依頼を受けたんだろうな。ランバーも何で止めなかったのか。まあ、何となく理由は分かるが、今更言った所でだ。これで王都のクランは全部壊滅・・・・じゃなかった。そうだった、ベイルのせいですっかり忘れてたぜ。


 これは組合に周知しといた方がいいだろう。何せこの街出身者から初の5級が誕生したんだ。


 俺がいつもの発表の場所に立つと、見慣れた連中がバカ騒ぎを止めてこっちに注目する。


「おい、何か発表があるみたいだぞ」

「何かあったか?」

「お!まーた俺が4級か!受けねえって言ってんのに、しょうがねえな」

「ベイルは何で毎回そんな自信満々なんだ?」

「どう考えてもベイルじゃねえよ」

「ベイルの降格発表じゃねえの?」

「4級か、2級どっちだと思う?賭けるぞ!」

「「「「「「2級!」」」」」」

「おい!2級しかいねえ、これじゃ賭けにならねえぞ」

「てめえらふざけんな!何で俺が2級に降格なんだよ!俺何も悪い事してねえじゃねえか!」

「お前は存在が極悪だからな」

「いるだけで人を不快にする」

「生まれてきた事に謝れ!」

「・・・・よーし!てめえら俺に喧嘩売ってんだな」


 はあー。まーたバカ騒ぎ始めやがった。


「てめえら!少し黙ってろ!黙らねえ奴はぶん殴るぞ!」


 ・・・・・


 よーし、黙ったな。けどこいつらが大人しくしているのも一瞬だ。さっさと発表するか。


「お前ら、この街出身のアーリット達が5級に昇格した!喜べ!」


 ・・・・・・


 ・・・・・・


「終わりっすか?」

「他には?」


 こ、こいつら、マジでどうでもいいって顔してやがる。信じられねえ。5級なんて今じゃこの国でアーリット達だけだぞ。その出身の街の組合長とかベテラン組合員は新人アーリット達を指導したとかで、どの街からも一目置かれるってのに・・・・ああ、ダメだ。こいつら何も分かってねえ。


 ペコーとか鼻ほじってやがる。ベイルとヒビットはジェリー並べ始めて、アウグ達はゲレロと今日行く娼館の話始めたし。他の連中も、興味無さそうな顔してる。嘘だろ。俺の時は故郷の組合のみんなが盛大に祝ってくれたって聞いたのに・・・チャタルも俺と同じって言ってたぞ。こいつらおかしいんじゃねえ?・・・って事はこれ言っても意味ねえだろうけど、一応教えておくか。



「5級になったアーリット達はクランを立ち上げた。そのクランの奴らとなるべくなら敵対すんなよ。アーリット達とやり合う事になるからな」

「おい、組合長こう言っているけどどうするよ?喧嘩なら勝てると思うが、イチモツ勝負とかになったら、俺ら誰もナンバースリーに勝てねえぞ」

「馬鹿野郎!諦めんじゃねえ!俺達はまだこれから成長していくんだよ!」

「いや、無理だろ」

「流石にもう成長しねえよ」

「馬鹿共が!!俺は毎日蜂蟻の針でムスコを刺して日々成長させてんだ!お前らも諦めんな!」

「お前それ、腫れてるだけじゃねえか!」

「ションベンに粘りが出たのってそれが原因じゃねえか?」


・・・・うーん。コーバスには何でこんな馬鹿しかいねえんだろうな。俺の教え方が悪いのかなあ。

 

「てめえら黙ってろ!それでアーリット達のクランの名前だが『黒竜のあるじ』だ。一応覚えておけ!」

 

「へえー。大きくでたな」

「名前負けしすぎだろ」

「これで速攻解散とかなったら笑うぜ」


 まあ、こういう反応だな、流石に伝説の黒竜をクラン名に入れるのはどうなんだ?って俺も思った。けどこの街は『黒竜の血』が手に入ったから、多分その関係でアーリット達が名前付けたんだろう。これで言っておく事は終わった。さーて溜まった仕事処理していくかー。


 そう思い部屋に戻ろうとした所で、ベイルがジェリーしている机を放り投げて大声で叫んだ。


「あかーーーーん!!!その名前ダメーーーーーーーー!!!」

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― 新着の感想 ―
サクラちゃん至上主義な黒竜が知ったら大惨事
>シリトラは俺に惚れているっぽいから分かるが モレリア無惨・・・!! >『黒竜の主』 ・・・ サクラちゃんじゃねーか! 死してなおこの世界のアレな文化に多大な影響を与えているサクラちゃんじゃねーか!…
怪しく思ってた事件の追及は馬鹿でスルーするのに、関係ない事と思ったクラン名で過剰反応するベイル…また誤解?が加速しそう
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