146. ベイル組・・・・組?の動き⑤
「うむ。それなら我も良く知っている。たまに見に行く事もあるからな。確か前は300年ぐらい前だったか?その時その辺にいた奴に血を一滴分けたな」
当たり前だけど、クロもあの湖周辺の桜の事は知っていた。サクラちゃんと行動共にしてたら、そりゃあ、知っているよな。そんで、たまにどうなっているか見に行ったりしていたらしい。そして俺の思った通り、こいつそこで血をあげてたよ。あのババアが言っていた『とんでもないもの』ってのは俺の予想通り『黒竜の血』で合ってたって訳だ。
「それでそこのカスに桜を守らせると、ハッ!」
俺の話を聞いたクロは水竜をチラリと見て鼻で笑いやがった。サクラちゃんの格好しているのに言葉使いや態度悪いなあ。
「サクラちゃん、サクラちゃん」
「そこのカスに私の桜を守ってもらおうって訳ね!!」
ああ、カスって所は変わらないんだ。あと、桜はお前のじゃねえよ。
「でも、そこのカスにこの大役が務まるのかしら!」
「務まる、務まる。大丈夫だ、俺を信じろ」
「ゴミカスの言う事なんて全く信用出来ないわ!」
・・・・・
こいつムカつくなあ。デカい声で胸張って堂々と言われると余計にだ。これなら普段のクロの話し方の方がまだマシだ。
「ま、まあ、まあ、お二方様。少し落ち着こう。み、水の!まずはこの若造の話をしよう」
何かヤバイ気配を感じ取ったのか赤竜のジジイが強引に会話に入ってきた。
「そ、そうだな。腐様に喧嘩売って見逃されただけでなく、桜の管理まで任されるという大役。当然それ相当の代価を払ってもらわないとだな」
水竜の姉ちゃんも慌てて会話に入って話を進めていく。代価って言われても別にずっとあそこで見張りしてくれるってのが十分代価になるんだけどな。
「い、いや、別に俺はあそこ見張ってくれているだけで・・・」
「これぐらい」
別にいらねえって遠慮しようとしたら、地竜の嬢ちゃんがいきなり水竜の尻尾を土魔法でぶった切りやがった。えー。ドン引きー。
「ええー」
「うん、まあこれぐらいだよな!」
ぶった切った尻尾を地竜の嬢ちゃんが手で持ちあげると、何故か緑竜の兄ちゃんが納得した様子で頷く。いや、何がこれぐらいか全然分かんねえ。竜だけで分かりあうのやめてくれねえ?
「い、如何でしょう?」
地竜の嬢ちゃんから尻尾を受け取った水竜の姉ちゃんが、恭しく俺に差し出して聞いてくる。
その足は水竜が叫ばないように口を思いっきり踏みつけているけど・・・。
取り合えずいきなり聞かれても訳分かんねえよ!
「な、何が?」
「おい、まだ足りんって、もっとバッサリいこう!」
「待て!待て!ジジイ!ストップだ!勝手に進めるな!えっと、待って。この尻尾俺にくれるの?」
「足りない?」
地竜の嬢ちゃんが可愛らしく上目遣いで聞いてくるが、お前、正体はクソでかくてゴツイ地竜だから、可愛くねえよ。
「いや、足りてる、足りてる。十分だ。い、いやあ、丁度水竜の尻尾欲しかったんだ。助かったぜ」
「良かったな。この程度で済んで!腐様の優しさに感謝しろ!」
そう言って若造の水竜を蹴り飛ばす姉ちゃん。一応同種だろ?優しくしてやれよ。
いやあ、自分、話についていけなくて、ちょっとドン引きですわー。
「と言う訳で、話がまとまりました。これからどうなさりますか?」
うん、分かっちゃいたけど、俺の為に今の一連の流れをやったんじゃねえな。全てはクロの機嫌を損ねない為にっぽい。
「話を聞いたら、久しぶりに桜を見たくなった。今から桜を見に行く」
「我らもお供致します」
クロの言葉に4人が膝をつき、代表してジジイがお供すると言う。何でこいつらはクロにここまで従うんだろうな。俺の方が強いのに扱いはクロの方がどう見ても上なんだよ。
まあ、そんな事で文句言うほど、俺は小さい人間じゃねえから、気にしねえけど。それに湖に行くってんなら、俺ももうここに用はねえし。一緒に行くか。って事で連れてきた水竜に注意だけしておく。
「おい!今からさっきの湖まで運んでやるから、暴れるなよ。暴れたら消し飛ばすからな!」
俺の言葉に若造と言われている水竜がコクコクと頷いたので、さっきみたい体の下にもぐり持ち上げる。よし、準備完了。
「じゃあ、行こうぜ」
・・・・・・
空に浮かんだ俺はみんなに声をかけるが、返事は返ってこなかった。見れば、既に点になるぐらい離れた所を飛ぶ連中の姿が・・・・。
おい!こらああ!俺を置いていくんじゃねえよ!!
■
「お前ら俺を置いていくんじゃねえよ!」
「・・・・・」
・・・・・
俺をチラリと見るだけで、何も言わず飛び続けるクロ。それに従うように4人とも誰も言葉を発しない。
「おい!無視すんじゃねえよ!」
「ヘンな飛び方する奴がいると思ったが、貴様だったか」
俺が怒鳴ると、ようやくクロが呆れたように答えてくれた。ヘンな飛び方って何だよ。蛇みたいな体した水竜の飛び方なんて知らねえよ。
「ああ、腐様。我らは普段こうやって飛ぶのだ」
何か不穏な空気を感じたのか、水竜の姉ちゃんが元の姿に戻って、水竜の飛ぶ姿を実際に見せてくれた。
見た瞬間、明らかに俺の持つ水竜の飛び方がおかしいのが分かったね。だって、水竜の姉ちゃん、空飛ぶ水溜まりに乗って、真っ直ぐ伸びて飛んでいるんだもん。それに比べて俺の運ぶ水竜は、首辺りを持って運んでいるから尻尾がダランと垂れ下がり、上下逆のL字みたいにだ。確かにクロの言う通りおかしいな。
「お前、それどうやってんの?」
「進む先に水を出して進んでいるのだ。風魔法で空も飛べるが、我ら水竜はこっちの方が早い」
なんとなく原理は分かった。次々に空中に水を生成してそこを泳いでいくって事だろ?水竜独自の飛び方だな。
「お前は出来ねえのか?」
運んでいる水竜に聞くと、首をブンブン横に振った。危ねえから暴れるな。
「この若造にはまだ無理だ。あと数百年は練習する必要がある。まあ、それが出来たら我が手下に加わるのを考えてやらんでもない」
「それならお前の所の奴はみんな飛べるのか?」
「無論だ。それが出来て初めて、我の手下に加われるかの試練が与えられる」
ええー。竜たちにも組合みたいな試験があんのかよ。ゴドリックが聞いたら大喜びしそうな情報だな。
「おい!他の連中の所もそんな試練みたいなのあるのか?」
■
他の奴らにも話を聞くと、どうやら入団試験みたいなものがあるそうだ。それでクロの所で居座っている竜共は、信じられねえけど竜の中でも相当な強さらしい。けど、そのトップがこの4人って聞くと・・・・どうなんだろう。大した事ねえ気がする。
そんな事を話聞きながら考えていると、クロの声が聞こえてきた。
「着いたぞ。うむ、前より広がっているではないか。サクラ様の指示をしっかり守っているな。感心感心」
クロの奴、機嫌直ったみたいで良かった。やっぱりこいつにはサクラちゃんだな。そうなるとババアの所のサクラちゃんの絵は黙っておいて、今度喧嘩した時にご機嫌取りに使おう。
「ほお、これが桜ですか。素晴らしいですね」
「普段上からしか見ねえが、下から見てもいいもんだな」
「きれい」
湖畔に降り立った3人は桜に感激し、それをクロが満足そうに眺めている。別にお前のじゃねえけどな!
そして一人水竜の姉ちゃんだけは、眉間にシワを寄せて若い水竜に近づいてきた。
「貴様はここを守ることができるか?無理なら今のうちに言っておけ、我の手下に守らせる」
心配性だなあって思ったけど、多分違うな。もしこいつが桜守れなかったら、クロが怒る。それを恐れているだけだ。
「大丈夫だから、心配すんな。もしダメならそん時は俺がクロを宥めてやるよ」
クロは今遠くでドヤ顔で桜について、ジジイ達に語っているから聞こえてないだろう。
「た、頼むぞ、腐様。我も念の為、この辺の水竜には、この若造からの助けが聞こえたら助けろとは言っておく」
「よーし、それならもう一つお前らやっておけ。今、その若い奴の討伐依頼が出ている。まずはそれを撤回させる」
「どうするのだ?」
「依頼自体はここの代官から出てるけど、大本はあそこに住んでいるババアだ。だから今から行って、もう人は襲わないと伝えて来い。但し、桜を切り倒そうとした場合は攻撃するってな。それでもお前を討伐して来ようとしたら、湖の底でしばらく大人しくしてろ。困ったら水竜の姉ちゃんを呼び出せ」
「分かった、腐様のいう通りにしよう。若造、お前も岸辺までついてこい」
よし、これで何とかなるだろう。次は酒だ!
「おい、ジジイ共、今から花見するぞ、酒買って来い!」
「酒?」
「おう、花見と言ったら酒だ!なあ、クロ」
「うむ、確かにサクラ様と桜の下でエールを飲んだな。懐かしい」
「けど、お金を持ってきてないですよ」
「ほら、これ持ってけ。俺が奢ってやる」
そう言ってジジイに財布を投げて渡す。オッサンたちから奪ったから結構入っている。こいつらが酒好きでも流石にこんだけあれば足りるだろう。
「そうなると手が足りませんね・・・土の!例の魔物二匹とってきて」
「分かった」
ジジイがよく分かんねえ事を頼むと、地竜は地面にでかい穴開けて、そこに飛び込んで行った。
「地竜の嬢ちゃん、どこ行ったんだ?」
「あれです・・・えっと・・人で言う所の・・・『鞄』!そう、鞄みたいな入れ物とりに行ったんです」
「ただいま」
ジジイに話聞いてたらすぐに地竜の嬢ちゃんが戻ってきた。さっきと違うのは手に白いうねうねしたものを二匹持っているって事だ。そいつは俺も最近見た魔物だ
「おいいいい!それミミズじゃねえか!何でそんなもん持ってきてんだ!」
そう、俺達が蜂蟻の巣穴で死闘を繰り広げ、滅茶苦茶皮が伸びるから一部のマニアから高値で取引されているあのミミズだ。
「こうする」
そう言うと地竜の嬢ちゃんは躊躇う事なくミミズに嚙みついた。そして次の瞬間、ズュ!!とか言う汚い音と共にミミズが皺くちゃに変化した。
・・・・・・
うぎゃああああ!こいつミミズの中身吸いやがった。きめえええええ!
俺がその光景にドン引きしているなんて気にもせず、地竜の嬢ちゃんは二匹目も同じように中身を吸って皺くちゃに変える。
「うん、美味」
「美味じゃねえよ!きめえよ!っていうかお前ら飯食わなくても生きていけんるだろ!」
「甘いものは別腹」
「甘いの!?そのミミズ!?いや、前にこいつの体液浴びた時めっちゃ臭かったんだけど?」
「この美味しさが分からないなんて、人は可哀想」
「何で俺達が可哀想なんだよ。むしろそれ食うのは罰ゲームみたいなもんだからな!」
「我らとは種族が違うから仕方ないですよ。それよりこれで買い物いけるから、土と風で買ってきてくれ」
「はいよ」
「分かった」
ジジイの指示に従って、土と風は空飛んで買い出しに行ってくれた。水は若造とババアの所だから残ったのは、俺とジジイとクロだ。そのクロは桜に寄り掛かるように座り、上を見上げている。その口は軽く笑っているから昔の事でも思い出しているんだろう。
そう思って話かけずに俺も桜を愉しんでいたんだが、クロが唐突に思い出したのか話しかけてきた。
「おい!貴様、『日本酒』という酒を聞いた事ないか?サクラ様が花見には日本酒だと言っていたのだ」
サクラちゃんは酒好きだったのかな?いや、でも確かに花見と言えばポン酒だよな。けどなあ、俺はまだポン酒見つけてないんだよ。もしかしたら存在すらしてねえのかも。
え?異世界ものだと、こっから米見つけて栽培して日本酒造る?そんな面倒くせえことやってられるか!
「いや、聞いた事ねえな・・・・お!そうだ!日本酒じゃねえけど似たようなもんは見つけたぞ!」
そう言えば、ウイスキーがあったじゃねえか!エールよりは日本酒に近いだろ。知らんけど。
「何?本当か?よし、買ってこい!」
「何でてめえに命令されねえといけねえんだよ。欲しけりゃてめえが行ってこい!」
「まあ、まあ、落ち着きましょう。私が行ってきますから、どこで買えるんですか?」
「こっちの方に飛んでいくと城があるでかい街がある。そこの商業ギルドで『ウイスキー』が売ってるはずだ」
「ウイスキーですね。分かりました。・・・あ・・・お金」
「あちゃあ、俺の有り金も全部渡しちまったからなあ・・・そうだ!その街にでかいレッドウルフ飼っている女がいる。その女に頼めば多分ウイスキー買ってくれるはずだ」
カルガーは何だかんだ優しいからな。多分頼めばイケる。そう言えば助けてもらった礼も併せてこの水竜の肉を渡してもらうか。うん、そうだな。よく考えれば見た事無いジジイがいきなりウイスキー買えって来たら、普通買わねえよな。でも水竜の肉の代わりならカルガーも納得してくれる。
そしてジジイは俺の名前覚えてねえから、カルガーには俺からだとバレる事はねえだろう。カルガーは礼は要らねえって言ったけど、俺は受けた借りは本人がどう思っていようがしっかり返す。組合員の鑑みたいな男だ。それにこれ渡せば絶対カルガーも度肝抜かれるはずだ。
貰った水竜の尻尾を更に小さく切って、ジジイに渡す。見ただけじゃ水竜の肉って分からねえから、多分カルガー以外だと信じてくれなさそうだ。店に売りに行っても買い取ってくれないだろう。
「えっと、ウイスキーって名前の酒ですね。大きいレッドウルフを飼っている女に頼む。聞いてくれたら肉を渡す。暴れない」
「そうだ、じゃあ。行ってこい!」
そう言って送りだした後はクロと二人きりだ。そう言えば、血の礼を言ってなかった。
「おいクロ、またお前の血で助かった。礼は言っておく」
「ふん、勝手に奪っておいて・・・まあ奪われた我が間抜けなだけだ、気にするな」
「おーい!」
礼を言い終えると、すぐに水竜の姉ちゃんが、湖を進む若造の背中に乗って、手を振りながらこっちにやってきた。
「ちゃんと話は出来たか?」
「多分大丈夫だ。依頼は取り下げると約束してくれたぞ」
「戻った」
「ただいま」
今度はエール買いに行ってた地竜と緑竜が戻ってきた。ミミズの皮の中に樽がすげえ入っている。どんだけ買ったんだ?
「腐様に貰った金で買えるだけ買った」
「おいおい、買いすぎだろ」
まさか全部使うなんて思わねえよ。
「そうは言ってもよ、俺達この入れ物使いだしてから、いつもこれぐらいは買って帰るぞ?」
最初は手に持てる二樽だけだったのに・・・毎回こんだけ飲むの?
「1日じゃねえぞ。何度も買いに行くのが面倒だから、まとめて買っているだけだ」
まあ、それならいいか。流石に俺も葉桜を愉しむ心は持ってねえからな。花が散ったら帰るつもりだ。それまでに飲み終わればいい。
「そんじゃあ、ジジイがまだだけど、もう始めるか!」
「わーい」
「よし!土の!魔法でジョッキだ」
「今日は飲むぜ」
「おーい、誰か火魔法でこの尻尾焼いてくれねえ?何も食ってなくて、いい加減腹減って死にそうだ」
「ええー腐様。それ食べるの?」
「ゲテモノ食い」
「ミミズ吸う奴に言われたくねえよ。それじゃあ、何の為に渡したんだよ!」
「ごめんなさい?の印」
「あなたに逆らいませんの証みたいなもの?」
「何で疑問形なんだよ!それじゃあ、これ持っていればあの水竜の若造は俺に逆らわねえのか?」
「あの尻尾が生えてくるまでは」
「また、生えんの?」
「あれぐらいなら多分10年って所かしら、でも安心して、あの若造は私がしっかり従えておくから、10年経っても大丈夫」
「あー!!何でもう始めているんですか!待ってて下さいよお!」
「ガハハハ、火の。悪いな。腐様が言いだしたから逆らえなかった。許せ」
「絶対そんな事ないだろ。喜んで飲み始めたのが目に見える」
「おお!それがウイスキーという奴か。臭いもエールと全然違う。味は・・・おお!酒と言っても全然違うな。我はこっちが好みだ」
「水の!一人で全部飲むなよ」
「これ二樽しかない。貴重」
■
「ククク、この騒がしさ。これが花見だったな」
騒ぐ竜とベイルの様子を少し後ろから眺めながら、呆れたようにクローディアが笑う。
『クローディア、花見は一人で楽しむのもいいけど、みんなでワイワイ騒ぎながらお酒を飲むのも楽しいでしょう?花見と言えば日本酒らしいけど、どこにも無いんだよなあ。そうだ!クローディア。今度は日本酒探しに出かけるわよ!』
今の自分の姿よりもう少し年を重ねたサクラとその仲間と、何度目かの花見をした時に言われた事を思い出し、思わず笑みが零れるクローディアであった。
その更に後ろ、湖から顔を出し、自分の尻尾を食べているベイルを何とも言えない顔で眺める水竜。この水竜が『桜の守護竜』と呼ばれるのはもう少し先になる。
毎回最低3回は見返してはいるんですが、誤字脱字酷すぎですね。ご指摘して頂き、本当にありがとうございます。
更新優先で返信出来ていませんが、感想も全て読み励みにさせてもらっています。
今後とも『4賢人』・・・・いや、この作品そんな賢そうな略し方似合わないな。
・・・・
今後とも『チンピラ』をよろしくお願いいたします。




