144. ベイル組・・・・組?の動き③
「ベイル!貴様一体何をした!!」
「『秘薬』って言ったぞ!!」
「何でコーバスの田舎者が『秘薬』なんて・・・」
「そんな訳ねえだろ!何かの魔法か魔道具に決まってんだろ!」
おお、おお、さっきまでの勝ち誇った顔はどうした?俺の腕が生えたぐらいでビビりやがって。まあ教えねえけどな。
「今から死ぬ奴に言っても無駄だ!」
そう言ってつま先で地面をポンと叩いて、だいたいどのくらいだろう?野球ドーム?サッカーコート?記憶があいまいで正確には言えねえけど、結構な範囲を4階建てぐらいの高さの土壁で囲う。
通称『闘技場』
俺が故郷でデカい魔物やよく分かんねえ連中と戦う時に、何度も作らされたやつだ。そういえば貴族が鑑賞する為の物見櫓みたいなやつってまだ残ってんのかな?
こうやってこの魔法使うと故郷の荒んだ頃を思い出すから、本当は使いたくねえんだけど、オッサンたちに逃げられるよりマシだ。
うん?何かいつの間にかガチの暗殺者みたいな奴が出てきたな。オッサンたちを攻撃する訳じゃねえから、オッサンたちの仲間か。
「何故出てきた。お前たちは監視と万が一の為の伏兵だったはずだ」
「あのポーション」
オッサンの質問に暗殺者はそれだけ答えたのが聞こえた。それを聞いたオッサンは苦々しい顔したから、あんまり仲良くねえのかな?
まあ、いいや。
って事で、いつの間にか壁にロープ張って、昇って逃げようとしている奴が見えたので、土魔法・・・『土爆弾』を投げておく。
当たると、体中から土の槍が飛び出して、壁から落ちていった。よし!
「な、な、な」
「・・・・・・」
「逃げたら寿命が縮むぜ。残り少ない命だ。なるべく頑張って生き残れ」
驚く連中にアドバイスを贈ると、おっさんが拍手して近づいてきた。驚きから立ち直ったのか余裕そうだな。
「凄いな。これはベイルの魔法かい?お前が魔法使えると聞いてないが?」
そう言っておっさんは俺に背中を向けて秘書女に振り返るが、秘書女は首を横に振っている。知らねえのは仕方ねえ。しかし、おっさん、俺を前に隙だらけだぞ?
「黙ってたんだ。俺の奥の手の一つだ。俺の魔法を受けて生き残ってんのは一匹しかいねえから、知らねえのも無理ないさ」
「まさかベイルが凄腕の土魔法の使い手だったとは、本当におしい」
そう言いながら、いつの間にか間合いに入ってきていたオッサンが、斧を振ってくるが、俺は前に出てその腕を掴んで動きを止める。
「いきなり殺すつもりで攻撃してくるなよ。俺を謝らせて、痛めつけるんだろ?」
「もう、そんな事言っている場合ではなくなった!今のお前はさっきまでと全く逆だ!存在が不気味すぎる!このままここで仕留める!」
おお、酷い言われようだ。まあ、オッサンたちから見ればその通りか。
おっさんが更に腕に力を込めるが、俺の『身体強化』の前じゃビクともしねえよ。
「もう無理だって。おっさん達が俺を殺す事が出来たのは、俺が油断してたさっきのが最初で最後のチャンスだったのに、無駄に舐めプするからー」
そう言いながらオッサンの腕に力を込めて握り潰す。
「ぐあああああ!!」
「団長!」
「貴様!!」
オッサンの悲鳴と共に手に持つ大斧がガタンと音を立てて地面に落ちる。お、これ棍棒代わりに使わせてもらおう。
オッサンを助ける為に仲間が俺に襲い掛かってくるけど、真面目に相手するのが面倒なので、もう一回つま先で地面を叩く。
「下だ!跳べ!!」
おお!オッサン。よく分かったな。
感心したけど、オッサンの仲間はダメダメだ。今のに反応出来てねえ。半分近くが俺の出した土槍に下から串刺しにされて終わった。
「き、貴様!それだけの土魔法使いで何故実力を隠していた!!」
別に隠していてもいいじゃん。全力出さないとダメなんて言われた事ねえし。オッサン訳分かんねえ事で怒るなよ。それと一つだけ勘違いを訂正しておこう。
「おっさん、一つ勘違いしている」
「わ、私が?な、何をだ?」
「俺はな、土魔法は一番苦手なんだ。苦手だから他の属性より威力が弱くてな。けどその分、人相手だと一番使い勝手がいいから使っているだけだ。それなのに土魔法の使い手とか言われると照れちまうぜ」
「・・・・・は?」
いやあ、信じてねえみたいけど本当なんだ。実際、その身に俺の全属性魔法攻撃を受けたクロも言ってたもん。『俺の土魔法だけは防ぐ必要なかった』って。ついでに言えば、何か動きが無いと土魔法は上手く発動しねえんだ。他の属性なら予備動作無しで発動できるんだけどな。
「さーて、話の時間は終わりだ。俺を殺したきゃいつでもかかってこい。こなけりゃこっちから行くけどな」
そう言ってオッサンは邪魔だから放り投げておいて、さっきの土魔法で死にかけの奴にオッサンの斧を使って、トドメをさしていく。慕っているリーダーの武器でやられる気分はどうだ?
「魔法使いなら!!」
そんな事を言って、俺の隙を突こうと死角から仕掛けてくる奴もいるけど、殺気に反応した手が勝手に動いて次々と肉片に変えていく。たまに逃げ出そうとする奴には土爆弾を投げておく。
しばらく歩き回ると粗方掃除は終わった気がする。
「き、貴様・・・・」
怒りの籠った声に目を向けると、涙を流してこちらを睨みつける秘書女。腹から血が出ているから、俺の土槍躱しきれなかったか?
「よお、姉ちゃん、さっき何か面白い事言ったな?四肢を切り落とすとかって?お前実際どこか切り落とされた事あんの?軽く言ったんだろうけど、マジで痛えぞ。体験してみろ」
そう言うと俺は秘書女の手と体を足で踏んで斧を振りかぶる。
「や、止めろ!ま、待て!」
無視して斧を振り下ろすと、キレイに斧が地面に刺さった。
「ああああああ!!痛い!痛い!腕がああああ!」
「なあ?痛いだろ?一度体験したら二度とごめんだと思うだろ?分かったならその痛みを胸に刻みつけて死ね」
「ランバー!くそ!ベイルうううう!!死ねえええ!!」
おっさん手首潰れているのに元気だなあ。どこかで拾ったんだろう剣を持って斬りかかってくるが、オッサンから貰った斧でその腕ごと斬り飛ばす。
「ああああ!くそ!何で!こんな!」
両手が上手い事使えなくなり地面を這いずり回るオッサンを踏みつけて見下ろし、さっきのセリフを言い返してやる。
「その腕じゃもう腕相撲で勝負はつけられないな。俺の勝ちって事でいいな、おっさん?」
そう言うと、這いずるのをやめて黙り込むおっさん。けどすぐに俺の言葉の何がおもしろいのかオッサンが笑いだす。どっちかというと嫌味で言っているんだけどな。
「ククク、そうだな。私の負けだ。お前に勝てる気はせんよ。お前は一体何者なんだ?」
「ああ?そんなんオッサンも知っているだろ?俺は組合員のベイルだよ」
俺がそう答えると何が面白いのかオッサンがまた笑い出した。何か面白い事言った、俺?
「そうか、お前はそんなに強くても組合員なんだな。お前が羨ましいよ。団長がいた頃の王都には、お前みたいなのが、たくさんいた。俺はあの頃に戻したかったんだ・・・なのに」
「ああ、そう言うのはいらねえし、興味ねえ。俺は腹減って死にそうなんだ。最後に言いたい事あるなら早く言え。わざわざ待ってはやらねえからな」
そう言って俺は斧をわざとゆっくりと持ち上げる。まあ、これぐらいのサービスはしてやろう。
「ククク、お前は本当に・・・呆れるぐらいに組合員なんだな。言い残す事か・・・団長に『ごめんなさい』・・・いや、言われても困るだけか。言い残す事は何もないかな」
「そうか、じゃなあ、おっさん」
■
はあーあ。久しぶりに気分が悪い。流石にあれだけボコられたら、故郷の頃のブラックベイル君が少し出ちまった。こういう時は一発ガツンと気合入れてもらった方がいい。って事で嬢ちゃん貴族に近づいていく。
「ひぃ!!」
そんなにビビらなくてもあんたは殺すつもりはねえよ。ビビる姉ちゃんを気にせず眼の前まで行くと、しゃがんで嬢ちゃん貴族にお願いをする。
「なあ、姉ちゃん。ちょっと俺の頬っぺた叩いてくれねえ?」
・・・・・・・
「は?」
いや、分かる、分かるよ、その反応。イケメンが近づいてきて、いきなり頬っぺた叩けって言われたら普通そうなるよ。でも俺の荒んだ心を戻すには荒療治が必要なんだ。
「『三猿』って言っただろ!早くやれ!!」
『三猿』マジで関係ないけど、こういうのは勢いで押せばどうにかなる。
「は、はい!!!」
俺の勢いに押されて嬢ちゃん貴族が俺の頬をぺチンと叩く。『身体強化』解除してんのに全然痛くねえ。
「もっと強く!」
「は、はい!」
今度はパチンだ。でもまだ足りねえ。
「もっと強くだ!全然足りねえ!」
「は、はい!」
そう言うと大きく振りかぶって、俺の頬を思いっきり叩く嬢ちゃん貴族。辺りにバチン!とデカい音が響いた。
「おほお!良いビンタだ!おかけで心の荒みが少し治まったぜ!」
「手が痛いですわ。それよりも叩かれてその反応・・・あなた様はもしかして、そっちの趣味でも?」
叩いた手が痛いのか、嬢ちゃん貴族が手をさすりながら聞いてくる。
そっちってどっちの趣味だよ!俺はいたってノーマル趣味だ。
「そんな訳ねえだろ。取り合えず片付けするから大人しくしてろ」
それだけ言った後は俺と嬢ちゃん貴族と多分その関係者の死体を風で包み、上空に水を生み出してそれをただ落とす。早い話、闘技場の高さ半分ぐらいまで水を貯めただけだ。そんじゃあ次だ!
今度は貯まった水を闘技場の中でぐるぐる回転させる。これでまだ生き残っている奴も溺れて死ぬだろう。その後は闘技場の真ん中に穴開けて排水していく。今回は排水口を格子状にして死体が落ちて行かないようにするのがポイントだ。こうしておけば水の流れで勝手に死体が真ん中に集まってくるから、いちいち闘技場を探しまわらなくてもいいって訳だ。
この方法も故郷でよく使っていた。戦い終わったら後は、死体を片付けておけって命令されていたから時短の為に考えた。使う俺が悪いんだけど、今回はちょっと故郷時代の頃の魔法を使いすぎだな。当時を思い出して心が荒む。
■
「お!こいつは結構持ってんじゃねえか。うひゃひゃ」
思っていた以上に入っていた財布を見て思わず汚い笑いが出てきちまう。いやあ、やっぱりオッサンたち強いだけあって金結構持っているわー。マジでこれ100万ぐらい、いきそうだ。
そう思いながら、金を奪った死体を横に開けた穴に投げ捨てる。次に漁るのは首のないオッサンの死体だ。
「うわー。おっさん2000ジェリーとか嘘だろ?何でこんなに金持ってねえの?」
不思議に思いながらもオッサンを横の穴に投げ捨てる。今度は女秘書か。
「おいおい、こいつ白金貨とか嫌がらせかよ。一般人じゃ使えねえじゃねえか。あ、姉ちゃん、あんた貴族だから使えるだろ?これ貰っていいぞ」
そう言って女秘書から貰った白金貨は嬢ちゃん貴族に投げて死体は横の穴に投げ捨てる。
「ほ、本当にこの方はさっきのお方と同一人物??」
嬢ちゃん貴族が何か言っているが聞こえねえ。じゃんじゃん死体から金を抜いて、横の穴にポイポイ捨てていく。これが終われば穴埋めて証拠隠滅すれば完全犯罪の完成って訳よ!
「って、あん?何だコレ?」
そうして死体を漁っていると一人の死体からよく分かんねえ暗号みたいな紙が見つかった。体が中から穴だらけになっているから俺の土爆弾くらったやつだな。見てもよく分かんねえ、ゴミだな。
「私にも見せて下さらないかしら?」
「ほい」
ゴミと判断したから気にせず渡してまた死体漁りを始める。ただ、その後ろで嬢ちゃん貴族が、渡した紙を読んで怒りに震えていたってのは、俺は気づかなかった。
「よーし、終わり。結構稼げたな」
全ての死体を投げ捨てて穴を埋めた俺は、大きく伸びをする。
いやあ、今回は結構稼げたなあ。荒んだ心が癒されるぜ。さーて、金も稼いだ事だし、さっさとどっかの街行ってエール飲もうっと。
「あ、あの!!!」
移動しようとしたら、嬢ちゃん貴族が声をかけてきた。けどその声は何故か震えて、そして何か覚悟を決めたような厳しい顔になっていた。
「あん?何か用か?」
「あ、あ、あの・・・・い、いえ何でもありません」
ふう、身なりのいいおっさんの死体をチラチラ見ながら、言われたら、何が言いたいか丸わかりじゃねえか。多分あの死体が嬢ちゃん貴族の親父なんだろう。
「いくら『秘薬』でも死人は生き返らねえぞ」
本人から直接聞いたもん。サクラちゃんはそれで何度泣いたかってのもな。
「はい・・・・」
歯を食いしばって涙をポロポロ流す嬢ちゃん貴族。
・・・・・
「だああああ!甘えな!俺は!!くそ、ちゃんと見て。しっかり諦めろよ」
そう言って、『クロの血入りポーション』を取りだし、死んだ貴族に振りかけたり、口に入れて飲ませようとするが、既に心臓突き刺されて事切れているから、当然反応しない。
「ほら!これで分かっただろ!いくらこのポーションでも死んだ奴は生き返らねえ。諦めろ」
「ひっぐ・・・はい・・ヒック・・・お父様・・・お父様」
ああ、辛気臭えなあ。
「それでも諦めきれねえなら、泣いてねえで、こいつの仇を討つ方法を考えろ!お前らをこんな目に合わせた奴に復讐するんだよ!」
「・・・復讐?そ、それは良くない事では・・・」
貴族の癖に何言ってんだ?貴族なんて復讐してナンボだろ?あれ?もしかしてこの国じゃ違うの?でも既に言っちまったからな。勢いで誤魔化せー。
「良くない事じゃなくて必要な事なんだよ!向こうが先に武器抜いて襲ってきたんだ!やらねえとやられるぞ!」
「で、でも我が家の手の者もほとんどやられてしまって、相手を殺そうにも・・・・」
「何で力で押し返そうとしてんだ。そうじゃねえ!お前ら貴族は人を罠に嵌めるのが3度の飯より好きな生き物だろ!よく考えろ!」
おっと、嬢ちゃん貴族黙り込んじまった。そんで、今思ったけど俺、さっきから凄え失礼な態度だけど、大丈夫かな?今更不安になってきた。
「そうですわ!私はサファガリア家の娘!家名に懸けて父の仇は必ず討ってみせますわ!」
ああ、うん。頑張ってー。
「そう言えばお礼もまだでしたわ。危ない所を助けて頂き誠にありがとうございます。」
「・・・ああ、うん。どうも」
「???」
「ご指示通り、今までの事は『三猿』のティガレットを信じて下さいまし!誰にもあなた様の事は言いませんわ」
「・・・うん。よろしく」
「何か冷たくありませんか!!」
何が気に入らねえのか嬢ちゃん貴族が俺に詰め寄ってきた。
「うわああああ!寄ってくんじゃねえ!俺は貴族に触れると死ぬんだよ!」
「嘘です!さっき私の頭撫でてくれましたわ!」
・・・・・・
ごしごし。汚れたら手をキレイにしないとね。バッチイもんね。
「私、汚くありませんわ!!!」
「うわああああ!だから詰め寄ってくんな!」
「分かりました。命の恩人ですもの、これぐらい離れれば大丈夫ですの?」
うーん。まあ、それぐらい離れたら、俺の貴族アレルギーも発症しねえだろう。
「その距離なら、まあ。取り合えず礼はいらねえ。俺の事黙っているだけでいいぞ」
「そうはいきません!国宝の『秘薬』を私の我儘で無駄にしてしまったのです!なにかしらお礼を!」
「そうは言ってもなあ。原液はまだ一杯あるしなあ」
「は?」
この間クロから貰った血で作ったのは5本だけだから『クロの血』はかなり残っている。
「もし無くなってもまた貰えばいいしなあ」
「は?」
俺とクロは親友だからな。俺がくれって言ったら喜んでくれる。くれなかったらぶん殴ればくれるはずだ。
「うーん。『三猿』ですわ!私は『三猿』のティガレット」
嬢ちゃん貴族が頭抱えて何か言っているけど、放っておけばいいか。
「はい!私は何も聞えませんでしたわ!・・・・それで・・・ええっと、そうそうお礼の話ですわ!何かお望みはありませんの?」
「望みなんてねえって言いてえが・・・・一つ頼みがある」
そう言って、俺は嬢ちゃん貴族を見つめる。この姉ちゃんは俺を満足させる答えを持っているだろうか。
「申し訳ございません。極秘の段階ですが、私、これでも婚約者がいますの。出来れば、そう言った事は勘弁して頂きたいですわ」
求めてねえよ!貴族とヤルとか怖すぎて勃つもんも勃たねえよ!それだったらコーバス帰って『快楽亭』でオプション頼む。
「いらねえよ!そういうのじゃなくて、俺は心癒されるような場所を求めているんだ。何か知らねえか?」
「心癒されるですか?この時期でしたら・・・隣国ハルツールへ入って、すぐにある湖周辺にはピンク色のキレイな花が咲くそうですわ。その花を見ながらみんなお酒や料理を愉しむと聞いた事があります」
おいおい、それって花見か?桜なんてこっちにあるのかよ。いや、桜かどうかはこの際どうでもいい。花見やってるってんなら、俺の荒んだ心を癒すには十分すぎる。金も稼いだし、そこに行ってみるか。
「よし!それじゃあ、そこに行ってみるか。姉ちゃん、分かっていると思うが、くれぐれも俺の事は内緒だぜ」
「分かっています。『三猿』のティガレットを信じてください。私は野盗に襲われてずっと気絶していた事にしますわ」
もう、さっきから全然『三猿』じゃねえんだけどなあ。まあ、俺を庇ってくれたりしたから信じてやるか。
「俺を庇って逃がそうとしてくれたから信じてやるよ。まあ、俺の事話したら姉ちゃんの領地に魔法ぶち込むだけだ」
「言わないので魔法使うのはやめて下さい。それと一つ訂正を。あの時庇ったのは、ああすればあなた様が、もうちょっと頑張ってくれるかな?と思ったからですわ。少しでも時間を稼いで人が来る可能性に賭けたんですわ」
そりゃあ納得だ。あそこで俺を庇うなんて貴族らしからぬ行動だったもんな。まあ、ウラがあったにしても、あそこで自分を殺そうとする相手の前に出るとは、この姉ちゃん根性は中々だ。
「そりゃあ、見事に騙されたぜ。けど、俺を庇ったのは事実だからな。騙したのは許してやるよ。さーて、それじゃあ、俺はもう行くから、寝たふりしとけ。壁の向こうに何人かいるからな」
そう言ってゆっくりと空に浮かぶ。
「・・・当たり前のように飛ぶんですのね」
「そんじゃあ、しつこいようだけど、俺の事言うなよ」
そう言って、魔力を送るのをやめて土壁を崩し、辺りに土埃が舞う隙に俺はその場を離れた。
壁の向こうで待ってた連中がどんな奴らかは知らねえ。流石にそこまで面倒みてやる義理もねえしな。運が良ければ保護されるだろ。




