133.王都の組合①
ズタ袋を取ると、ヴィーラも俺を思い出してくれた。
「ああ!ベイルかー!あなた何て恰好しているのよ」
いや、それはモレリアに言ってくれ。俺は好きでこんな恰好してんじゃねえんだ。で、当の本人はシリトラと街を眺めて懐かしがっている。
「昨日何かヤバイ連中が来たって噂になってたけど、あんた達だとは思わなかったわ。何で街に入る前に牢屋に入っているの?」
「それは全部モレリアが悪いんだって。俺達は巻き込まれただけだ」
「嘘つけ!巻き込んだのはてめえだろ!」
「お前が巻き込まなきゃ俺達がぶち込まれることは無かっただろ!」
ったく、細かい事をいつまでもぐちぐちとうるせえな。
「フフフ、まあ、でも無事釈放されたからいいじゃない、取り合えず私も報告とかあるから組合に来てもらいながら話聞かせてもらうけど、大丈夫?」
「問題ねえよ。そもそもアーリット達に呼ばれてきたからな」
「うーん。みんなには悪いけど、アーリット達も忙しいからね。もしかしたら組合にいないかも・・・」
おい、おい、呼び出しておいて待ちぼうけか?もう帰るぞ。
「依頼を受けてないから、王都にはいると思うわよ。ただ、どこにいるかは分からないけど・・・今日はまだ見てないなあ」
「なら組合で待っていれば来るでしょう」
組合員は暇なら組合に顔出すからな。アーリット達はコーバスにいた時には、毎日来ていたみたいだから、多分待っていれば顔を出すだろう。
「それじゃあ、こっちよ」
そう言ってヴィーラの後をついていくんだが、街の規模がコーバスと全然違え。まず、メインストリートがマジで広い。コーバスの何倍だ?そして通りの活気だよ。コーバスもメインストリートは活気で溢れていたが、王都は一本裏路地に入っても活気にあふれている。裏路地って言ってもコーバスのメインストリートと同じぐらいな道幅だ。こっちも人が大量にいる。
「す、すげえな。人多すぎだろ。何でこんな活気に溢れているんだ?」
「そりゃあ、王都だからよ。ここにはこの国の全てが集まるからね」
「ベイル!恥ずかしいからキョロキョロすんな!田舎もん丸出しだぞ」
「仕方ねえだろ!田舎もんなんだから!」
領都でもトレオンに同じ事注意された気がすんな。
俺は故郷じゃ首都に暮らしていたから田舎もんじゃねえ。と言いたいが、故郷じゃ平民街はそりゃあスラムみたいなレベルだった。当然活気なんてあるはずもねえ、メインストリートも閑散としてた。逆に貴族街は豪華絢爛だったけどな。
今思えば俺の故郷は、なんであんなんで国として成り立ってたんだろ?
「それじゃあ、田舎者にもっと驚いてもらおうかしら、ほら、あれが王都の組合よ!」
そう言ってヴィーラの指差す方には見慣れた建物が建っていた。造りはコーバスの組合と変わんねえ、けど、デカさが半端ねえ。奥行きは分かんねえけど、建物の横幅はコーバスの3倍はありそうだ。しかもコーバスは1階建てなのに王都は3階建てだ。もう明らかに規模が違え。
「で、でけえ」
「凄いな。こんだけデカいって・・・王都に組合員は何人いるんだ」
モレリアとシリトラは元々王都にいたから、見慣れているんだろう。トレオンも王都に行った事があるとか言ってたから、別に普通だ。驚いているのは俺とゲレロだけ。通りに立ち止まってポカンと口を開けている俺らを見て、通行人がクスクス笑っている。
「ああ?てめえら何笑ってやがる!ぶっ飛ばすぞ!」
「よーし。そこの笑っているお前!ちょっとこっち来い!ぶん投げてやる!」
流石に失礼すぎだろ。こっちから一般人に手を出しちゃいけねえが、流石にムカついたので威嚇だけはしておく。コーバスじゃ一般人は組合員を危ない連中だと思っているから、こんな馬鹿にした態度はとらねえんだけど、王都は躾がなってねえな。
「おいおい、田舎もん!誰彼構わず噛みついてんじゃねえよ。恥ずかしいからやめろ」
俺らが威嚇すると、都会かぶれのトレオンが注意してきやがった。こいつは王都に行ったことがあるってだけで都会人気取りかよ。
「ああ?トレオンも田舎もんだろ!何、都会人ぶってんだ!」
ゲレロがトレオンに絡んでいく中、俺はあることに気づいた。
「あれ?モレリア達はどこ・・・・あいつら何であんな離れてんだ?手を振っても無視されるんだけど?」
気付いたらモレリア達が道の端に移動して見物人に紛れてやがる。手を振って呼んでるの見えているはずなのに無視するんだけど・・・。
「まあ、これが王都に来た組合員の最初の洗礼みたいなものよ。別に珍しくないから中に入りましょ」
モレリアやトレオンみたいな都会かぶれは無視してヴィーラの指示に従い、でけえ組合の中に踏み入れる。
「おお!凄いでけえじゃねえか!受付もコーバスの3倍以上はあるな」
「その割にはあんまり活気がねえな。テーブルの数もコーバス以上だけどスカスカじゃねえか」
組合に入ってまず驚いたのは、やっぱりそのデカさだ。外観からも分かっていたが、広さも受付もコーバスの3倍はある。時間的には混み始めてもいい時間だと思うが、その割には受付が大量にあるからか全然混んでねえ。そして組合の飲食スペースだ。こいつもコーバスの3倍以上はあって、テーブルの数もそれ相当だ。けど、そのテーブルに座っている連中はそれ程多くない。
「組合の1Fは見ての通り、食堂と受付。2Fは資料室や会議室、職員の事務室ね。3Fは組合長や幹部の人たちの事務所と貴族用の応接室があるけど、基本組合員は1Fで用事は事足りるわ」
「3Fに貴族用応接室って貴族がここまで来るのか?聞いてねえぞ!」
やっべえ、それならさっさと帰ろう。アーリット達?知らねえなあ。
「そんな訳ないじゃない。来るのは貴族の家の使用人。当然平民よ。大抵の貴族はパーティやクランと契約しているから、滅多に来ないけどね」
「そうそう、用事があれば呼び出せばいいからな」
ああ、そうか。そう言えばコーバスでもそうだった。ゲレロ達も契約はしてねえが、指名依頼とかでしょっちゅう呼び出されていたな。
「うーん。アーリット達はいないわねえ。もう少し待っていれば多分来ると思うわ。それじゃあ、私は仕事に戻るから、王都を楽しんでね」
そう言ってヴィーラは2Fに上っていった。残った俺達は組合を見渡してみるが、アーリット達はもとより、『華開く』達も姿が見えねえ。
「ルスト達もいねえんだけど、あいつら何で待ってねえんだ?」
「そりゃあ、ヴィーラさんも言っていたけど、あの子達よりかなり到着が遅れたからでしょう」
「ったく、それなら誰かに伝言でも残しておけよ。気が利かない連中だ。お!姉ちゃんエール一つ」
「ベイル、お前ひとりだけ頼んでんじゃねえ。俺らの分も頼めよ。気が利かねえなあ」
「うるせえ。飲みたきゃ自分で頼め」
むしろ4級のゲレロが奢るべき所だろ。
「もう!すぐ飲み始める!普通はアーリット達と再会してからでしょう。何で待てないんですか」
「別に会いたくて来たわけじゃねえんだ。呼ばれたから来ただけだ。再会を祝うつもりもねえしな。そう言うならシリトラだけ飲まずに待ってればいいんじゃねえ?」
既にシリトラ以外はみんなエールを頼み終わっている。一番最初に頼んだ俺は既に届いて、ジョッキに口をつけている。
「プハー!いやあ、王都の酒はうめえな」
「・・・・すみません。私にもエールを一つ」
俺のエールの飲みっぷりにシリトラの奴、簡単に心が折れやがった。こいつ子供みたいな見た目している癖に意外と酒好きだからな。
「ま、まじで?本当に売ってんの?いくら?・・・・2000!?たけえええ」
おう?何だ?トレオンが給仕の姉ちゃんナンパしてんぞ?何をそんなに驚いてんだ?
「どうした?」
「あの姉ちゃんの見た目で2000は破格だろ」
「いや、そっちの話じゃねえよ。ゲレロはそっちから頭離せ」
「じゃあ、何の話だったんだい?」
「この間、アーリット達が送ってきた酒精の強い酒あっただろ?あれが普通に売ってんだよ。ただし一杯2000ジェリー。もう一度飲んでみてえが、流石に高えだろ。しかもあれだけ酒精の強い酒飲んだ後、エールには戻れねえからどうしようか悩む所だ」
おお!マジか!ウイスキー売ってんのか!高いけど、俺は頼むぜ!
「姉ちゃん!ウイスキー頼む!俺はそこで悩んでいる小物と違ってガバガバ飲んでやるからな!ハハハハハ!」
「おい!ベイル!誰が小物だって?姉ちゃん俺にもくれ!」
「じゃあ、僕も飲もうかな」
「俺は瓶で貰うぜ!いくらだ?・・・2万!?・・・くー。高え。高いけど、飲むから持ってこい」
「・・・・じゃあ、私も一杯貰おうかしら」
何だ、結局全員飲むんじゃねえか。・・・うん?何だ今入ってきた奴らが俺達の方を見てる・・・いや、他所者の俺らは最初っから注目されているんだけどよ。今入ってきた連中は少し様子が違う。
組合にいる奴にこっち見ながら何かヒソヒソ話をしている。目つきや様子からどうせ碌な事じゃねえな。ほら、思った通りこっちにきた。みんな気付いているけど知らんぷりだ。まあ、向こうから手を出せば黙ってねえけどな。
「おい!てめえらどこの色だ?」
思った通り、さっきの連中が元々いた連中と一緒に絡んできやがった。色って何だ?
「色?」
「何言ってんだ?」
俺とゲレロが不思議そうに聞くと連中は大声で笑い出し、馴れ馴れしく俺らの肩に手を回してきやがった。
「ハハハハハ、何だよ。田舎者かよ。てめらよく覚えておけ。王都じゃ田舎者は慣れるまで隅で大人しく飲むのが賢いやり方だぜ」
「そうそう、田舎者がこんな高い酒飲んでんじゃねえよ」
そう言ってゲレロの瓶を奪って、頭に酒を浴びせる。
「おいおい、こっちの姉ちゃんは顔も胸もいいじゃねえか」
「姉ちゃん、言う事聞けば『黒』に入れてやるぜ」
そんな事言いながら、1人がモレリアの胸を軽く揉みしだく。
あーあ、俺知らねえぞ。
と、俺が思うと同時にゲレロが酒を奪った奴を笑いながら、持ち上げる。
「ガハハハッ、こんだけ美味い酒をごちそうしてくれてありがとよ!こいつはお礼だ!」
そう言って遠くに・・・いや壁に投げつけやがった。ゲレロめっちゃキレてんな。
そんで、モレリアの方、胸に触っている手を軽く掴むと静かに笑う。
「フフフ、しばらく不在だったからもう忘れられたかな」
「ああ?お前何言って・・・・ブヘッ!!!」
モレリアは笑いながら、ゆっくりと下げていた頭を思い切り跳ね上げて、胸を揉んだ奴の顔面にぶち当てる。鼻を押さえて一歩下がった所に、モレリアが立ち上がり、後ろを見ずに男の股間に正確に蹴りを放つ。
「!!!!」
声にならない声をあげて頭を下げた男の顔に、振り返ったモレリアが追撃で膝蹴りを入れると、男は沈黙した。
モレリアの奴、容赦ねえー。けど、男の自業自得だな。
「てめえ!何しやがる!俺達が誰か分かってんのか!」
「俺達『黒』に喧嘩売るってのか!」
あーあ、仲間がやられたから、周りの連中が怒り出したぞ。俺はこの喧嘩を肴にウイスキーでも堪能しようっと。
「馬鹿!そいつら『黒』だぞ!シリトラ!モレリア止めろ!ベイル、お前はゲレロだ!」
ああ?トレオンの奴何焦ってんだ?何で止めなきゃいけねえんだよ。喧嘩なんて好きにやらせておけばいいだろ。
何故か慌てているトレオンを無視して、喧嘩に巻き込まれないように場所を移動しようとしたら、ジョッキが投げつけられた。しかもエール入りだよ。
「おい、てめえ、何逃げようとしてんだ?仲間が頑張っているぞ、てめえもさっさとやり合って来いよ」
「楽しい余興じゃねえか、俺らを楽しませろ。ハハハ」
その声と共に再びジョッキが投げつけられ、俺のウイスキーを持つ手に当たり、グラスが割れた。
「おい!ベイル!待て!キレんな!酒なら俺が・・・いってえええ!クソが!てめえ!誰に喧嘩売ったか分かってんのか!!!!」
「てめえ!俺達『緑』だぞ!分かって・・・グハッ!!」
「おい!この馬鹿俺達に喧嘩売ってきやがった!潰せ!」
「てめえらが先に手を出したんだろ!死ね死ね!」
俺を止めようとしたトレオンだったが、途中で俺と同じくジョッキを投げつけられたので、キレて喧嘩始めやがった。まあ、俺も今から目の前のこいつらに分からせてやるんだけどな。
手近な机を拾って、ジョッキ投げつけてきた連中に投げながら、距離を詰める。
「うお?てめえ!俺達『赤』に喧嘩売る・・・ぐえ」
「グハッ!!」
「ぐああ!!」
距離を詰めた勢いのまま投げつけた机に体当たりして、ジョッキ投げつけた奴を弾き飛ばす。何人かこいつの仲間が巻き込まれたけど、さっさと除けねえこいつらが悪い。
「てめえ!俺達は『赤』だぞ!」
「何したか分かってんのか?」
騒ぐ連中に注意しながら周りを確認すれば、珍しい事にシリトラも喧嘩に参戦してやがる。
「こいつら俺達『黄』まで手を出してきやがった」
「田舎者が!・・・って、このチビ早い!」
「どこ行きやがった?・・・・ぐええええ」
「下だ!足元をチョロチョロと!」
「チッ!こいつら連携がヤバイ!エルフ二人の連携に気を・・・ガハ!!」
壁や天井を蹴って縦横無尽に動き回るシリトラ。相変わらずキモイ動きしてんな。しかもその辺の机を投げつけてそこにモレリアが蹴りで追撃したり、モレリアに蹴られて蹲った奴の頭を、天井蹴った勢いでそのまま踏み潰したりと、2人の連携も相変わらずキモイな。
「余所見とは余裕じゃねえか!」
周りを確認していると、目の前の男が大声で叫んでくる。そんな事言う前に殴りかかって来いよ。と思いながらもそいつをぶん殴って、横に回り込んできた女に放り投げると、油断していたのかあっさり、巻き込まれて倒れたので、蹴り飛ばして意識を奪う。
「おいおい、王都のお坊ちゃん、嬢ちゃんは喧嘩の仕方も知らねえのか?」
「ガハハハッ、こいつら全然喧嘩慣れしてねえ。数が多いだけの雑魚ばっかりだ」
「おらあ!クソが!遅えんだよ!ボケが!」
「まだ、終わんないの?」
「モレリア、まだ半分ぐらいです」
喧嘩して分かったけど、王都の連中全然喧嘩慣れしてねえ。トレオンだけがまだ1人ブチギレているけど、俺らはもう消化試合みたいな感じになってきた。だってこいつら正面からしか襲ってこねえんだもん。たまに横に回り込んでくる奴がいるが、そいつも正面の敵倒してから殴りかかってくるので、対処は余裕だ。
コーバスなら八方から襲い掛かってくるから、これぐらいは不意打ちにすらならねえ。しかもコーバスじゃ味方?に攻撃当たっても気にせず敵を倒す事だけに集中しているから、面倒なんだ。
それとさっきから気になる事が一つ。
「こいつらさっきから『黒』とか『赤』とか何言ってんだ?お絵描きでもしてえのか?」
「好きな色を言ってんだろ!俺は『肌』色が大好きだぜ!ガハハハッ!」
てめえは娼館大好きだから、そうだろうよ。
「俺は『金』色に決まってる!」
「その割にはトレオンの財布には金貨どころか銀貨入っている事も少ねえじゃねえか!」
「うるせえ!『金』は、そう簡単に靡いてくれねえんだよ」
「僕は『白』だね。『白』はいいよ。何色にも染まらない、全てを白に塗りつぶしてくれるからね」
・・・・・・
「く、『黒』じゃない?」
「そ、そうよね。今のって普通『黒』の事よね?」
壁際に避難している連中がモレリアの言葉に疑問を浮かべている。悪いな。モレリアの言う『白』は男が股間から出す『白』の事なんだ。
「モレリア!お上品な王都の皆様には、お前の言う下品な『白』は伝わってねえぞ!」
「別にいいよ。それよりもベイルは何色が好きなんだい?」
「俺か?俺は当然『虹』色だ!7つも色があるんだぜ!これ以上の色は無えよ!」
・・・・・・・
「うわー。ガキかよ」
「あいつやっぱり頭は子供から成長してねえんじゃねえの?」
「うーん。少し心配だなあ」
あれ?何か俺スベったみたいな雰囲気になってない?別にウケ狙いで言った訳じゃねえぞ!
「何、馬鹿な事言ってるんですか。ほら、もうすぐ終わりますよ」
呆れた様子のシリトラが敵を蹴り飛ばしながら注意してくるので、見ればかなりの人数が床に転がっている。なんか流れ作業的に敵をぶん殴っていたら、いつの間にか終わりが近づいてきていたようだ。
「強えええ。あの連中何者だ?」
「あれだけの人数相手に勝つとか信じられねえ」
「しかも色関係なく倒している。こりゃあ、大騒ぎになるぞ」
壁際に避難している連中が驚いている中、最後の一人をぶん殴って気絶させた後は、お楽しみの追剥タイムだ。
「誰が倒したとかどうやって決める?」
全員で財布を漁っているとトレオンがそんな事を聞いてきた。言われて見れば、俺もどいつを殴ったか覚えてねえ。こいつは困った。
「ここで揉めるのも馬鹿らしいですし、山分けでいいでしょう」
「僕はそれでいいよ」
「まあ、ベイルから文句が出ねえからそれが一番だな」
「おい、ゲレロ。何で俺だけ何だよ!」
「お前が一番ごねるからだよ!」
おいおい、何でみんな揃って頷いてんだ?
■
「ハハハハハ、いやあ、大量大量、こいつら結構持ってやがったな。流石王都」
「しばらくは高いウイスキーでも気にせず飲めますね」
「これなら、たまに王都に来て、こいつらから金巻き上げて稼ぐのもありだな」
「嫌な稼ぎ方だなあ」
「それにしてもアーリット達遅いな。俺は馬に行きたいから早く来ねえかな」
財布漁ると中々の稼ぎになった俺達は、再び上機嫌でウイスキーを飲み始める。周りの床には組合員が多数寝ているけど、コーバスじゃたまにあるから誰も気にしてねえ。
そして、壁際に避難していた奴らは、この状況でも酒を飲んでいる俺達にドン引きしているのか、隅っこの方でずっと突っ立っている。
「取り合えず、今のお酒を飲み終わったら宿を取りにいきませんか?」
「そうだな。シリトラ達王都にいたんだろ?オススメの宿教えてくれよ」
「一応何軒かありますけど、もう潰れているかもしれませんよ」
「そん時は自分で探す。こんだけデカい街なら宿なんてすぐにとれるだろ。無ければスラムにでも泊まるさ」
孤児の俺にとっちゃ、スラムなんて実家みたいなもんだ。それに依頼中は森で野宿する事もあるから、魔物が出ねえ分まだマシだ。絡んでくる馬鹿どもは分からせてやればいいだけだしな。
そんな事を話していると、組合にゾロゾロと人が入ってきた。そいつらは、入ってくると同時に組合の惨状に気づき大声で叫ぶ。
「おい!こりゃあ!どういう事だ!何で俺の仲間達が倒れてんだよ!ヒューズ!てめえの所の仕業か!」
「違う。ネルギノ、よく見ろ!あそこに私の仲間達も倒れている」
「ああ?どういう事だ?『黒』も『黄』も倒れているじゃねえか・・・あいつらか?」
組合に入ってきたクワロ並みに身長の高い赤髪の大男が俺達を睨みつけながら、こっちにドシドシ近づいてくる。
「おい!これやったのはてめえらか?何色だ?」
「肌色だ」
「俺は金」
「僕は白だよ」
「俺は虹色だ」
「わ、私はピンクです」
「ハハハハハ、シリトラ。お前ピンク好きなの?似合わねええ」
「うるさいですね。別にいいでしょう。ベイルは吹き飛ばされたいんですか!」
「好きな色を聞いてるんじゃねえよ!いや、今ので分かった。てめえら余所者だな?どこから来た?」
好きな色聞いたんじゃねえのかよ。しかも今ので何で余所者だって分かったんだ?隠す事でもねえから、教えるけどよ。
「コーバスだ」
「「コーバス?」」
今度は組合の惨状に驚いていた金髪の女と、黒髪のカッチリした恰好のおっさんが反応した。
「げ!シリトラにモレリア!あんた達なんでここにいるのよ?」
「お!レインディだ。久しぶり」
「久しぶりなのに随分な挨拶ですね。レインディ」
うん?2人ともこの姉ちゃんの知り合い?顔は中々の美人だからゲレロが反応したが、すぐに胸を見て興味失くしたのが分かった。この姉ちゃんはどっちかというとトレオンの好みのタイプだな。・・・ってトレオン全然興味持ってねえ。何か周囲を観察してる感じだけど、どうかしたか?
「久しぶりだな。ベイル」
トレオンを気にしていたら、黒髪のおっさんが俺に話しかけてきた。
・・・・・・・
その瞬間、全員が押し黙り、俺に視線が集まるのが分かった。シリトラとモレリアは金髪姉ちゃん知り合いなんだろ、こっち気にしてねえで感動の再会を楽しんでおけよ。っていうかそもそもこのおっさん誰だよ。
って事で、俺はゆっくりと口を開く。
「おっさん、誰だ?」




