132.モレリアの作戦
『僕に良い考えがある』って言うからモレリアを信じたんだよ、俺は!
で、信じた結果が上半身裸で頭にズタ袋被った変態だ。ご丁寧にズタ袋の上から首輪嵌められ、そこから伸びた鎖が手枷に繋がって、手枷からも鎖が伸びて、それをモレリアが手に持っている。
「おい、これって明らかにおかしくねえか?いくら奇抜な恰好に慣れているって言っても、王都の皆様でも驚くだろ?」
「甘いねベイル。ここは王都だよ。人が集まる所に大道芸人あり!生半可な恰好じゃ王都の人の目に留まらないよ」
「いや。俺、大道芸人じゃねえし。目立ちたくねえんだって」
「だから甘いよ、ベイル。この格好じゃ王都の人に見向きもされない。僕は以前ベイルの一張羅に似た服を着て、更に頭の上に一張羅の人形のっけた人を見た事あるんだ」
うっそだろ!そんなん目立ちまくりじゃねえか!それに比べたら俺のこの恰好なんて、全然普通だ!
「それと、これは聞いた話だけど、腰に紐だけ巻いた全裸の大道芸人もいたんだって。流石に捕まったらしいけど、最後までその紐を服だと言い張っていたらしいよ」
おいいいいいいい!!!それってトラスの関係者だろ!
「そ、そんな・・・ヤベエ連中が王都にはウヨウヨいるのか・・・」
「いえ、ウヨウヨはいませんよ」
「そうだねえ。奇抜な恰好の人は結構見かけたよ」
うん?どっち?シリトラとモレリアどっちが正しいの?
「だから今の恰好ならベイルの魅力を抑えられるし、特に目立ちたくないってベイルの要望に応える素晴らしい格好だよ!」
「・・・・・そうかあ?」
「そうだよ!」
モレリアの奴、すごい自信満々なんだけど。本当に大丈夫かなあ。
■
「ひぃい」
「あ、あ、あ、お、お先にどうぞ」
「いいんすか?ありシャッス!」
・・・・・・
いやあ、やっぱりこの恰好おかしくないか?列に並んだら、俺に気づいた人たちが悲鳴をあげて順番を譲ってくれるんだぞ。ちゃんとお礼は言ってるけどさあ。どうも奇抜な恰好に慣れた感じじゃねえぞ?
「おい!おい!おい!何だあいつは!・・・ピーー!!!!!!」
どんどん順番譲ってもらってかなり入口に近づいてきたら、急に門番が・・・多分緊急用の笛を鳴らしたので、周囲が途端に騒がしくなった。そして門の方から兵士が3人駆け寄ってくるのが見える。
「どうした!!!」
「隊長!あいつです!ど、どうしましょう?」
「うお!何だ、あいつ!おい!人を集めて来い!」
うーん。兵士達、どう見ても俺達の方指差してねえか?一応後ろを確認するが、怪しそうな奴は見えない。あれ?ゲレロとトレオン何であんな後ろに並んでいるの?
隊長と呼ばれた奴と周りの兵士がどんどんこちらに近づいてくる。
「おい!お前!動くな!」
そうして近づいてくると、俺らの目の前で叫びだしたので、少し後ろにさがり場所を譲ってあげる。多分、俺の後ろの糸目の商人に用事だな。こいつ見た感じ悪だくみしてそうな顔してんもん。
「いや、そうじゃねえ!」
「お前に言ってんだ!」
「お前以上に怪しい奴はいねえだろ!」
俺?おいおい、モレリアさんよお。どういう事だ?目立たないんじゃねえのか?
「僕の連れがどうかしたかい?」
『こういう時は僕任せて』って言葉通りモレリアが前に出て対応してくれる。
「どうかしたも何もこいつは何なんだ!」
「どう見てもヤベエ奴だろ」
「ヤバくないよ。ベイルは大道芸人なんだ」
いや、大道芸人じゃねえよ!
ツッコミたいが、事前の打ち合わせで、俺は基本決められた事しか言っちゃダメと言われているから口を挟めない。コーバスの感じで行くと、コーバスなら冗談で済むが、王都じゃ冗談じゃ済まない事もあるって言われたからな。
「どう見ても大道芸する恰好じゃねえよ!」
「こいつ絶対暴れだすだろ!」
お!モレリアからの合図だ。合図があったので、事前に決められたセリフを言う。
「私は暴れまセン、とてもフレンドリー」
王都の兵士は気が短いから、普段の俺の言い方だと怒るかもしれないって言われたので、少し柔らかい感じを出してみた。
・・・・・・・
「その恰好でその言葉を信じられるか!」
「じゃあ、その鎖は何なんだよ!解き放ったら暴れる奴の恰好だぞ!」
「フレンドリーな奴がしている恰好じゃねえよ!」
おいおい、どんどん旗色悪くなってねえか?
「え、ええっと。彼は少し恥ずかしがり屋なんだ。だから顔をね、ちょっとね」
「今の恰好の方が恥ずかしいだろ」
「そもそも何で顔を隠しているんだ?手配犯かもしれないぞ」
その言葉を合図に兵士が腰の剣を抜いたので、列に並んでいた連中が悲鳴をあげて逃げ出していく。
大騒ぎになっているじゃねえか!
「ち、違うよ!手配犯じゃないよ!僕らは組合員だって!ほら見て僕の員証!ね?ほら、ベイルの員証もちゃんと確認して!」
大慌てのモレリアが自分の員証を胸の中から取り出し、俺の被っているズタ袋に隠れていた員証をも出して見せるが。
「お前らさっき大道芸人って言ってたよな?何で話がコロコロ変わるんだ」
「怪しさしかないお前らは連行する。暴れたら問答無用で斬り殺すからな!暴れるなよ!」
状況は最悪じゃねえか!これ牢屋にぶち込まれるの確定したぞ!どうなってんだよ!モレリア!
・・・・・
いや、モレリアに文句言う前にやる事があったな。
「あのー。連行される前に、連れに少し話してきてもいいですか?」
兵士の機嫌を損ねないように出来るだけ、丁寧な言葉で話しかける。既にモレリアの作戦は破綻したんだ。話しかけてもいいだろう。
「お前、普通に話・・・いや、それよりも仲間はどこだ?」
「向こうに立っているデカいハゲと、小さいエルフ、その隣の髪ぼさぼさのチンピラっすね」
シリトラの奴もいつの間にか、ちゃっかり俺達と距離取ってやがるし・・・。俺が教えると即座に兵士が走ってゲレロ達に向かい、取り囲む。当たり前だけど、あいつらも暴れるつもりは無いので、大人しくこちらに連行されてくるが、こっちに来た途端メッチャ文句言ってくる。
「信じられません!何で私達を巻き込むんですか!!」
「俺らは関係ねえだろ!!」
「おい、ベイル!お前マジでふざけんなよ!」
いやあ、キレてるなあ。けどお前らだけ逃がしはしねえよ。ぶち込まれる時は全員一緒だぜ。
■
「大人しくしていろよ!明日組合の確認がとれたら、ちゃんと出してやる!俺たちの手を煩わせたら、ぶち込まれる期間が延びるからな!」
あれから軽く取り調べを受けた後、俺らは牢屋にぶち込まれた。一応組合長からの手紙を見せたから、明日には出してもらえそうだ。
・・・・・・
「信じられません。私は今まで牢屋に入れられた事なんて無かったのに!それがこんなくだらない事で入れられるなんて!」
ぶち込まれてからシリトラが1人ですっげえキレてる。俺らはまあ、牢屋なんて第二の故郷みたいなもんだから落ち着いたもんよ。・・・いや、流石に牢屋を故郷とは呼びたくねえな。
「ごめんよお。シリトラ。僕の作戦が甘かったよ」
本当だよ!信じた俺が馬鹿だったよ!
「本当です!何であれでうまくいくと思ったんですか!あなた作戦立てるの昔から下手でしたけど、昔より悪くなってませんか?」
「それは全然練習してないからねえ。けど、今回シリトラが口を挟まなかったから、大丈夫なんだと思ってたよ」
「そ、それは・・・あなたが楽しそうだったし、命の危険もなさそうだったので」
「何だよ、それならシリトラも同罪じゃねえか」
「そうだな、そんなにキレんなよ」
「ゲレロもトレオンも何も言わなかったじゃないですか!」
「そりゃあ、俺らは作戦聞いた時に駄目だと思ったぜ」
「けどモレリアに言っても聞かねえだろうなって思ったから、他人の振りしてたんだ」
「「それなのに、ベイルの馬鹿が!!」」
「俺のせいにするな。俺らは今回一緒に行動する仲間なんだ。仲間ならどこに行くのも一緒だろ?」
「だからって牢屋はねえよ!」
「仲間でもここまで一緒しねえよ!」
■
「よし。お前ら組合の確認がとれたから出ていいぞ・・・ってお前ら何したの?」
翌朝、組合の確認がとれたらしく兵士の人が迎えに来てくれた。
「うん?何かしたか?」
「またお前だろ!」
「俺じゃねえよ!モレリアだろ?」
「僕じゃないよ」
「私でもないですよ」
迎えに来た兵士が驚いた理由を全員で擦り付け合っているが、意味が分からねえ。
「い、いや、その後ろの連中・・・」
驚いた様子で俺達の後ろを指差す兵士。その先には犯罪者どもが壁に立って整列している。
「ああ、こいつら?昨日ちょっと躾といたんだ」
「あなた達、兵士さんの手を煩わせては駄目ですよ」
「「「「「はい!!!!」」」」」
昨日一番暴れたシリトラの言葉に元気に返事する犯罪者達。こいつらがシリトラの見た目を馬鹿にしたから仕方ねえんだけど、久しぶりに暴れるシリトラ見たぜ。相変わらずキモイ動きしてた。
「嘘だろ。こいつら言う事聞かなくて手を焼いてたんだぞ・・・」
言うて、タダの犯罪者だろ?ここにいる俺達はベテラン組合員だ。叩きのめすのなんて余裕余裕。
「じゃあな、あんまり悪さすんなよ」
「「「「「はい!お疲れっした!!!」」」」」
牢屋から最後に出たゲレロが中に残った犯罪者に声をかけると、腰を90度に曲げて頭を下げて見送ってくれた。ちょっとやり過ぎたか?
「お前ら凄いな。あの連中をたった一晩で・・・そうか!あんたらコーバスの人だったな!そうかそうか!あのクタイッシュを躾したコーバスの人か。納得したぜ。出来ればその躾け方ってのを教えてくれねえか?」
クタイッシュってそんな有名な問題児だったの?そんで躾け方って言っても、気に入らなきゃ、みんなぶん殴ってただけなんだけどな。最初は一発で気絶していたクタイッシュも最後の方は何発か耐えるぐらい、しぶとくなってたっけ。それでも結局最後はボロ雑巾にされて、金とられて外に捨てられてたけどな。
「あー。コーバスのやり方は兵士さんがやるには、ちょっと相応しくないと思いますよ」
「そうだね。気に入らなきゃ蹴り飛ばすか、殴るかだからねえ」
折角シリトラが誤魔化そうとしたのにモレリアが答え言いやがった。俺らまで乱暴者だと思われるじゃねえか!クタイッシュを躾けたのは主にアウグ達だってのによ!
「そ、それだけ?」
「そう、それだけ。って言ってもクタイッシュは一日に何回も殴られてたけどね」
そうなんだよ。あいつ全然学習しねえから躾けるの大変だったってアウグがぼやいてた。
「流石にそれは出来ないな。けど、教えてくれてありがとうよ。迎えが来ているからそっちに引き渡すけど、問題起こして俺らの手を煩わせないでくれよ」
そうして兵舎の待合室みたいな所に連れていかれた俺達を待っていたのは、すんげえ色っぽい美人な赤髪の姉ちゃんだった。しかもスカート穿いてやがる!どっかで見た事あるぞ。
「すみません。まさかヴィーラさんが迎えにきてくれるなんて」
そうだ!この人組合長の嫁だ!うちのナンバーワンを受け止められるすげえ人だ!
「良いのよ、シリトラちゃん。ジークやルスト達からも話があったからね。それにしてもルスト達から来る来るって言われてるのに全然来ないんだもん。心配したわよ」
「文句は後ろの4人にお願いします。毎日毎日ダラダラと過ごして、予定が大幅に遅れたんですよ!」
「ハハハハハ、コーバスの人は相変わらずだねえ。ええっと。モレリアに、ゲレロ、トレオン、そして・・・・・・誰?」
おおーい!一緒にミミズ依頼行ったのに忘れたのかよ!
ってそう言えば俺まだズタ袋かぶってたわ。




