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影の記  作者: 水鳥川 陸
第三章 再会
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第十二話

そして翌朝。

食堂に行くと、不機嫌そうな未華子が既に席についていた。


「おはようございます、未華子さん」

「お父様に、朝すぐ聞きに行きました」

「・・・はい?」

「今はまだ、絵を描くための、そのまた前の段階だそうですね。温かく見守りなさいとお父様からは言われました。・・・でも、そんなの生温いわ」


そういうと、きっと晃を見据えた。


「晃。あなたはきっと素晴らしい画家になれるはずよ。だから早く画家になって、必ずその絵を私に見せると約束して」


直隆は事実はさすがに告げなかったようだ。

まあ、当然だろう。

信じる信じないの話という以前に、未華子ならば自分も一緒に刹那を探しに行くと言い出しかねない。


そうして父から聞かされた説明に対して彼女が出した結論は、厳しい口調とは裏腹に、呆れるくらい全力の晃への応援ではないか。

素直じゃない娘だな、と笑う了祐の声が聞こえた。

それが未華子さんなんだよ、と心の中で返す。

聞こえるのかどうかは分からないけど。


「・・・約束します。時間はかかると思いますけど」


その後すぐ姿を現した直隆も含め、皆で朝食をとる。

小虎は今日も焼き魚に夢中だ。

やはりこのままここにはいられない。

小虎が贅沢猫になってしまう。



「お世話になりました」


頭を下げた晃に、直隆は目を細めた。

ここを拠点に活動してはどうかと勧めてくれたが、了祐とも相談の上、赤井の所に戻ることにした。


「何か分かったかもしれません。場合によってはすぐに東京を出ることになるかもしれないですし」

「未華子が寂しがるだろうな」


その未華子は、今日は学校に出かけて行った。

自分が帰るまでに屋敷を去ったら許さない、と言っていたので、寂しがるというよりは激怒するに違いない。


「だが、事情は分かるから引き留めることもできないね。あの子には私から上手く言っておくよ。・・・とりあえず、私は自分にできることをしようと思う」


そう言って、小さな包みを晃に手渡す。


「・・・?」


促されて中を見ると、驚くほどの貨幣が入っていた。


「!!・・・いやいや、こんなの受け取れません」

「私は共に行くことはできないが、君たちが少しでも楽に旅ができるような手助けならばできる。それに・・・それはあげるわけじゃない。いつか晃が有名な画家になったら、きちんと返してもらうよ。時間はいくらかかってもいいからね」


そう言うと、いたずらをする子供のような顔で笑った。

先ほどの食堂の会話も聞かれていたらしい。

この親子にはやはり敵わない。

諦めて有難く拝領した。



清々しい空の下、二条屋敷を後にする。


「元に戻れたらさ、今度はちゃんと二人で二条様に会いに来よう」

『そうだな・・・あの娘には不審がられそうだけど』

「了祐が強いって分かったら喜ぶよ。一日中稽古相手にご指名。そして晴れて俺はお役御免、と」

『・・・それは勘弁してくれ』


あははと笑って前に進む。

まだ何も解決はしていないけれど。

晃も了祐も、少しだけ気が楽になっていた。


「あとは赤井のおっさんが、いい情報掴んでくれてるといいけどな」

『そうだな。足は大丈夫か?』

「大丈夫だよ。必要なら本当にすぐにでも東京を出られるから」

『・・・頼りにしてるよ』

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