禁忌の家族
翌日、警察は両親が惨殺された事件の経緯について、イシハルへの取り調べを開始した。
だが、イシハルはひたすら沈黙を守り、一言も発しようとしない。
女性警察官が心配そうに心理分析官へ視線を向けると、分析官は哀れむようにつぶやいた。
「可哀想に……壮絶な幼少期を過ごしてきたのでしょうね。目の前で両親が殺される光景を目撃して、精神的に深いショックを受けているのよ」
その後、イシハルは身体検査のために医務室へと連れて行かれた。
医師は優しく声をかける。
「ボク、シャツを脱ぎなさい」
イシハルはピクリとも動かず、反応を示さない。
仕方なく医師が近づき、彼のシャツを脱がせた――その瞬間、居合わせた警察官全員が息を呑み、目を見開いた。
幼い身体には、数え切れないほどの殴打痕や傷跡が刻まれ、凄惨を極めていたのだ。
壁に身を預け、煙草をくゆらせていた一人の刑事――アキラは、紫煙を吐き出しながら冷ややかに口を開いた。
「少年の家へ向かい、あの家族について詳細を聞き込みに行け。……俺も同行する。確かめたいことがあってな」
警察一行はイシハルの自宅周辺へと向かい、聞き込みを始めた。
しかし、近隣住民たちは口を揃えてその家族について話すことを拒んだ。
それどころか、一人の男が警戒露わに言い放つ。
「命が惜しいなら、あの家族のことは忘れるんだな」
刑事のアキラがゆっくりと男へ歩み寄り、問いかけた。
「何か知っているのか?」
男は狼狽しながら首を振る。
「し、知らない! 俺は何も知らん!」
その瞬間、男の全身を目に見えない微弱な電流が突き抜けた。
男の瞳から光が消え去り、顔面は恐怖で蒼白に染まる。
アキラは静かな、しかし逃れられない圧を孕んだ声で再び問い正した。
「あの家族について、何か知っているな?」
男は悲鳴を上げるように叫んだ。
「わ、分かった! 話す! 話すから助けてくれ!」
アキラは煙草を揉み消しながら、部下たちに言い渡した。
「署へ連行しろ。じっくり取調べだ」
――つづく――




