無垢の破滅と、目覚める闇
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気絶した深い闇の中で、イシハルは実の母・ミリの夢を見ていた。
かつて父親の手によって殺害され、その権力によって事件を揉み消された悲運の母親だ。
母は優しく寄り添い、静かに語りかける。
「泣かないで、我が子よ……人の運命というものは、生まれた瞬間に決まっているのですよ」
イシハルはまっすぐ母を見つめ、力強く言い放った。
「そんな運命、俺が変えてみせる! お母さんの仇は、絶対に俺が討つ!」
母は愛おしそうに微笑んだ。
「ふふ……本当に私に似ているわね。なら、見せてちょうだい。あなたの『もう一つの姿』を」
その瞬間、冷たい床に横たわるイシハルの肉体が、禍々しい漆黒の光を放ち始めた。
――時を同じくして。
深い森の中。白髪に尖った耳、そして翡翠色の瞳を持つ少女が佇んでいた。
彼女は空を見上げ、ぽつりと呟く。
「……目覚めたのね」
巨大な霊峰の頂。そこに腰を下ろす、丸坊主で強靭な肉体を持つ男がいた。
男は天を仰ぎ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
さらに、絢爛豪華な城の玉座。
長い赤髪に血のような赤い瞳を持つ男が、重々しく口を開いた。
「始祖様が……ついに目覚められたか」
◇
イシハルはゆっくりと目を開けた。
その瞳は、妖しく紅く輝いていた。
彼は無言のまま立ち上がり、厨房へと向かうと、静かに一本の包丁を手に取った。
その頃、寝室では父親と継母が睦み合っていた。
「ねえあなた、あのガキはいつ処分するの?」
ジンは鼻で笑いながら答える。
「そうだな……魔法学院の下男として売り払って、一生奴隷として働かせるさ。まあ、あの母親と同じように処分してもいいがな」
二人は悪意に満ちた高笑いを響かせた。
その時――ギィと音を立てて、寝室の扉が開いた。
ジンが視線を向けると、そこには包丁を手にしたイシハルが立っていた。
その瞳は氷のように冷たく、ただ二人を射抜いていた。
つづく
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