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人間としての覚醒

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白銀の世界が一瞬にして、禍々しい漆黒の紅蓮へと染まり上がった。


現実世界――イシハルを縛り上げていた紅蓮の枷に、突如として無数の亀裂が走り始めた。


解放された圧倒的な魔圧が劇場の空間を突き抜き、地響きとなって国中を揺るがす。


その瞬間、老人は目を見開き、血を吐き出すような叫び声を上げた。


「アーカードぉぉぉぉぉっ!! この裏切り者が!! よくも一族を裏切り、その偉大なる遺産を人間の虫ケラなどに手渡したな!!」


老人が立ち上がると、その老いた肉体が激しく軋み、裂け始めた。


骨が組み替わり、筋肉が膨れ上がる。瞬く間に彼は、圧倒的な威圧感を纏う巨躯の武神へと変貌を遂げた。


その名は――初代ポルト。


「アーカード……貴様が作り出したこの恥辱、俺が今ここで終わらせてやる!」


ポルトが踏み出す中、イシハルを包む紅蓮の枷が爆散した。


煙の中から姿を現したのは――これまでの6歳の幼子ではない。


漆黒の髪をなびかせる、17歳ほどの精悍な青年の姿であった。


光なき瞳のまま佇むイシハル。


二人の視線が交錯した瞬間――二筋の紅蓮の閃光が弾け、両者は超絶的な速度で消失した。


爆音。


衝撃波だけで城の頑丈な外壁が粉々に砕け散る。


崩壊する劇場の中で、エマは動揺に震えていた。


(イシハルが生きていることを喜ぶべきなの……? それとも、始祖様が二度と戻らないことを悲しむべき……!?)


空中で交錯する二つの影。


イシハルは意識を失ったまま、本能だけでポルトの苛烈な拳を相殺し続ける。


だが、隙を突いたポルトの重撃がイシハルの胸を撃ち抜き、彼は地面へと叩きつけられた。


着地したポルトが、冷酷な眼差しで見下ろす。


「この茶番も、ここまでだ」


――その瞬間。


首都に住まうすべての者の魂が、冷たく脈打った。


人々の脳裏に直接流れ込んでくるのは、かつての惨劇の記憶。


仲間も敵も区別せず、すべてを殺戮し尽くす『冷酷無比なる殺戮者アーカード』の恐ろしい姿――。


エマの全身がガタガタと震え始める。


レイガーは頭を抱え、絶望に満ちた声を漏らした。


「これが貴様の望みだったのか、アーカード……! 子供の肉体が貴様の巨大な力に耐えられるはずがない……! 俺たちは皆、貴様のせいで地獄へと落ちるのだ!」


倒れていたイシハルが、ゆらりと立ち上がった。


その体から溢れ出た漆黒の魔力が巨大な繭となって彼を包み込んでいく。


その忌まわしい気配を察知した王国中の魔獣たちが、悲鳴を上げながら一斉に逃亡を始めた――。


(つづく)



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※アーカードの過去の全貌はまだ明かされていません。彼の過去については、今後の話で少しずつ明かされていきますので、ぜひお楽しみに!

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