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竜障害 ~もう一つの競竜~  作者: 敷知遠江守
第三章 研鑚 天二級編

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第5話 暴れる暴漢たち

「また岡田会が暴れてるのか?」

「岡山だけじゃ飽き足らず、今度は鈴鹿かよ」

「世界選手権開催中に最悪だな」


 そんな声が周囲から聞こえてくる。だが遠い鈴鹿の出来事のせいか、悪態をついてもどこか他人事な印象を受ける。


 暴漢の出で立ちに威圧感がありすぎて、警備員が全く近寄れないでいる。温かくなってきたとはいえ、まだ少し肌寒いというに暴漢たちは袖なしの服。腕にはびっしりと刺青が入っている。よく見ると首の辺りにまで刺青が入っているのが見える。


 金属打棒で殴られてうずくまっている警備員を一人の暴漢が足蹴にした。その顔の横を金属打棒で突き、なにやら叫んでいる。

 残念ながら中継映像には声が入らない。その為、何を言っているのかはわからない。その中継映像を見ながら、長井が「またあいつらか」と呟いた。


「あいつら、岡山で暴れた奴らですよ。俺、あいつらの顔見覚えがありますもん。新顔もありますけど」

「じゃあ、あれ岡田会の奴らなのか。そういえば去年のあれから、誰か一人でも捕まったって話を聞かなかったもんな」

「警察はここまで何やってたんでしょうね。前回だってこうやって中継されてたんですから、記憶映像は残ってるはずですよね。それ解析したら全員特定できるでしょ。ああやって顔を晒してるんだから」


 長井の顔は中継映像に釘付けとなっている。そんな長井の横顔を見て、雑賀は鼻を鳴らした。


「警察は別に市民の味方ってわけじゃないからな」


 突然達観したような事を言い出した雑賀に、長井がぐいっと顔を向けた。


「市民の味方じゃないんなら、じゃあ、誰の味方なんですか?」

「それはお前、社会的地位の高い御方の味方だよ。あの人たちは一般市民の警備員じゃないんだぜ。あの人たちだって、出世のために成果主義でやってるんだもん。怪我なんてしたら出世にかかわっちまうからな」

「だからって、こうして公で暴れた奴らをお咎め無しだなんて。いくらなんでも酷すぎませんか」

「それを俺に言われてもな。ある意味、俺もあいつらの被害者の一人なんだし。あの時、泣いてる春香ちゃんに尋問するような口調で取り調べ始めた時には、本気でぶん殴ってやろうかと思ったよ」


 当然、それをしたら公務執行妨害で即逮捕となる。あの時、雑賀は警察という人たちの本質をしっかりと見させてもらった。あれから、雑賀は警察官という人たちをかなり蔑んだ目で見るようになっている。


 すると、場内に案内放送が流れた。


「不測の事態が発生したため、鈴鹿競竜場の競争の順番を変更し、先に時間となりました阿蘇競竜場の競争を行います。鈴鹿競竜場の競争に関しましては、まだ協議を行っておりますので、購入した勝竜投票券はお捨てにならないようお願いします」


 およそ聞いた事のない案内の内容に、休憩室が一気にどよめいた。その内容は、岡山の時のように単に開催中止というわけでは無い。世界選手権の開催をどうするかという事を検討しないといけないという事である。


 放送を聞いて思わず、長井がため息を付いた。


「去年の時点で、政治家に動いてもらって警察の尻を叩いていれば、世界選手権中にこんな失態を犯さないでも済んだのに。馬鹿だなあ、協会の連中は」

「協会は俺と諏訪厩舎に責任を擦り付けて、それで事件の鎮静を図ろうとしてたからな。政治家を動かすなんて微塵も考えていなかったと思うぜ。それに、天下り官僚なんかにそんな芸当ができるわけがないだろ」


 中継画面を凝視して雑賀は悪態をついている。そんな雑賀を見て、長井が目を瞬かせた。


「……雑賀さん、ずいぶんと協会の実情に詳しいんですね」

「去年のアレで色々な事を教えてもらったからな。だけど、あれから協会は竜主会の人たちが運営する事になったんだぜ。それなのにこれなんだもん」


 「はあ」とため息をつく雑賀。それを長井がしげしげと見つめている。


「これってやっぱり、呉越国の奴らの命令で暴れてるんですかね? 開催地を奪われた腹いせに」

「それ、ちょっと違うらしいぞ。岡田会の支援って呉越国じゃなく、大遼国らしいんだよ。まあ、元々どっちも元を正せば大金人民共和国崩壊時の反乱軍国家だから、繋がりがあるのかもだけど」

「へえ、なんだか難しい話ですね。というか、そんな他国の支援を受けてる反社組織が普通にこうやって破壊活動ができちゃうんですね。うちの国、ヤバくないですか?」


 ヤバいかどうかは鈴鹿競竜場の惨状を見れば一目瞭然だろう。


 ふと阿蘇の中継画面を見ると、荻の出走した競争が終わって、第七競走の枠入りが始まっていた。


「やべっ。荻さんの競争、見るの忘れてた」

「あっ……これ、絶対後で呑み屋で怒られるやつですね。鈴鹿が大変な事になってたって言い訳、通用しますかね?」

「するとは思うけど、手が付けられないくらい拗ねると思う……」


 「やっちまった」と呟いて渋い顔で中継映像を見ている長井と雑賀。荻は篠原にはそれなりに敬う態度をとるのだが、どういうわけかこの二人に対しては、叩くと音の鳴る玩具のような扱いをしてくる。長井は年下だから理解できる。だが雑賀は年上。その態度はどうにも理解ができない。


 中継はその後の、篠原の競争の二周目を映し出している。

 向正面を過ぎて現在二番手。

 最終角を回って最後の直線に入る。八頭団子の状態。篠原は前方内に位置取っている。

 直線に入り、周囲が一斉に追い始めた事で竜群が散開。ふっと篠原の左前方が空いた。それを見逃さず一気に加速を開始。その一頭分の隙間に強引に割って入り、さらに左右の竜を抜き去り、先頭に躍り出た。大外から駆け上がって来た竜との一騎打ちとなる。内で懸命に粘る篠原。ついに外の竜に追いつかれる。

 だが、そこが終着板であった。

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