表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜障害 ~もう一つの競竜~  作者: 敷知遠江守
第三章 研鑚 天二級編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/142

第2話 仕様変更

 世界選手権の瑞穂グランプリが行われる五月。国際竜障害連盟から、大きな発表があった。それは世界選手権の仕様変更であった。


 これまで世界選手権は二か月を一節とし、ブリタニス、ゴール、瑞穂、デカン、パルサ、ペヨーテの順で施行されてきた。初回からここまで変更無しで来ているのは、ブリタニス、パルサ、ペヨーテで、他はイベロスからゴールへ、ムテトワからデカンへ、呉越から瑞穂へと開催が変わっている。


 国際竜障害連盟のモハメド・ビン・ジェザイルリ会長の話によると、入れ替えを行わないと新鮮味が失せてしまうという懸念があるかららしい。だが何の落ち度もなく変更されると、既存の開催国との間に禍根が残ってしまう。そこで今回、大胆に仕様そのものを大きく変更するという事になったのだとか。


 まず二節四か月間。ここまではあまり変更は無い。前半で予選を行い、予選上位が準決勝に残り、準決勝の上位二人が決勝に残る。ただし、開催地は大きく変更となっている。一節がポンティフィシオ法国とマラジョ連邦共和国。二節がパンノニア王国とアナング連邦共和国。

 ポンティフィシオは中央大陸西部の国で地中海に突き出た半島国家。パンノニアは中央大陸西部の国だが、東方の内陸国。マラジョは瓢箪大陸南部の密林地帯の国。アナングは鬼面大陸を治める国。


 一節、二節での結果を元に四分の三はここで脱落。つまり、五月以降の開催の予選をこの四開催で行おうというのである。残るのは成績上位三十二名と、次いで成績上位だった十六名。


 五月からがいよいよ本戦。残った四分の一のうち成績上位の三十二人で準決勝を行い、その上位二人、計八人で決勝を戦ってもらう。

 また準決勝の裏では入れ替え選抜戦が三戦行われ、上位二名、計六名が準決勝の最下位だった者と入れ替えとなる。


 本戦初回は中央大陸西部の国ライン共和国連邦。六月が瑞穂皇国、七月がブリタニス共和国、八月がデカン共和国、九月がイベロス王国、十月がパルサ首長国、十一月がゴール帝国、最後がペヨーテ連邦。


 開催国が増えるという事で、どのようになるのか、各国の協会が固唾を飲んで発表を見守っていた。開催復活を告げられたイベロスは大歓喜。市民もお祭り騒ぎとなってしまっている。新規で開催が決定した、マラジョ、アナング、ライン、ポンティフィシオ、パンノニアも名前が挙がった瞬間に協会は大歓喜であった。

 一方で、開催復活を期待していた呉越、ムテトワの二か国では、会長以下がじっと画面を睨みつけていた。また、他にも候補に挙がっていた国はあり、一様に落胆した姿が映し出された。



 この発表の翌日、呉越国の協会の周策近理事長が会見を開いた。


「瑞穂が汚い政治工作によって、我々から開催権を奪った事は明白である。そして今回も我々の開催復帰を阻害した。これは許されざる事である。我々はどのような手段を用いてでも瑞穂での開催を阻止する!」 


 そう言って周理事長は記者の前で声を荒げた。ところが海外の記者からすぐに「向こう三十年の追放処分を下されたのだから、当たり前なのでは?」という質問が飛んだ。


「我々は身の潔白を証明し、連盟にその旨の報告を行っている。だが、瑞穂の汚い影響工作のせいで、我々の調査結果に難癖をつけられて処分は撤回されていない。だが徐々に理解してもらえていた。今回、処分撤回と開催復活に期待していたのだ。それを瑞穂の溝鼠どもめ、またも阻害をしやがって!」


 周理事長は額に太い筋を立て、両拳を握りしてめて言った。すると記者から「瑞穂が阻害したという証拠でもあるのか?」という質問が飛んだ。


「奴らは工作が巧みだ、だがこの手の話は、連盟の上層部に金をばら撒いたと相場は決まっている。ようは収賄だ。国際竜障害連盟が我々に収賄の嫌疑をかけてきた事からも明白だろう。現執行部は直ちに全員辞職すべきだ。恥を知れ!」


 ようは、何も掴んではいないが、そうに決まっているという事であった。それに海外の報道は呆れ果て、それ以上取材する気を失ってしまった。まともに相手をするだけ時間の無駄と言って。またこいつらの病気が出たという毒づく声も聞こえた。


 記者は冷笑を浴びせただけだったが国際竜障害連盟はそうでは無かった。周理事長が『徐々に理解された』と発言した事で、ジェザイルリ会長は呉越が収賄工作を仕掛けてきたと感じ、徹底した調査を監査に依頼した。


 ◇◇◇


 久しぶりに諏訪厩舎は阿蘇にやってきた。適度な田舎、旨い食事と酒、そして温泉。すっかり気に入ってしまい本拠地のような感覚になってしまっている。

 どうやらそれは諏訪厩舎だけの事では無かったようで、大熊厩舎も鮎川厩舎も来て早々に温泉に浸かりに来た。しかも、他の厩舎の厩務員も多数来ていて、温泉は芋洗い状態となってしまっている。

 それもそのはず、春季の最終節であるこの節は準特が阿蘇でしか行われないのだ。以前は鈴鹿で『東海賞』という準特重賞が行われていた。だが、それが『天皇杯』という国際特一競争に変更となり、このような事になってしまっている。

 当然、温泉に入った後は酒。もちろん他の厩舎も同様のため、周辺の酒場はどこも大繁盛であった。



 翌日からいよいよ『西海賞』に向けての準備と調教が行われた。それが終わると、雑賀はそそくさと帰ってしまった。その顔はどこかにやけ顔。弾むような足取りで一旦寮に戻り、阿蘇駅へ繰り出して居酒屋『つんのて』へと足を運んだ。


 すでに彩夏には今月から阿蘇に来ていると報告済み。ゆっくりと呑んでいると、「お待たせしました」と言って彩夏がやってきた。店内をキョロキョロとし、雑賀を見つけ小さく手を振る。その後、前掛けを付けて厨房に入って行く。


 麦酒と串焼き何本かを大将に注文。すると大将は「あいよ」と言って微笑んだ。冷蔵庫から彩夏が麦酒を持って厨房から出てくる。


「はい、麦酒どうぞ。ねえ、雑賀さん。また二か月ここにいれるんでしょ。もし良かったら、二か月の間にどこか遊びに行きませんか?」

よろしければ、下の☆で応援いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ