木馬
本日の2話目です。
「おう?なんだこの兄ちゃん、こんなフリフリエプロン着けて英雄気取りかぁ?」
「ぎゃははははっ!それになんだその訛り方は、どこの田舎から出て来たんだよ!」
「そんな事関係ないですやん?他のお客さんの迷惑にもなりはりますから、どうぞ出てってや」
強面の連中にも怯まず、毅然とした態度で対応する玄界。若干訛りがキツイが傍から見れば滅茶苦茶カッコイイはずだ。そんな態度で自分達の邪魔をするフリフリのエプロンを着けた男に、遂に酔っ払いが掴み掛る。
「男には用はねえんだよっ!田舎者の英雄様は引っ込んでろやっ!!」
バキィッ!ドーーーーーーンッ!!ガラガラガラガッシャーン!
酔っ払いの右ストレートは容赦無く玄界の右頬を捉え、その威力で玄界は大きく吹き飛ばされる。
何もせずに黙って見ていたセヴンは、少し悪い事をしたなと考えていたが、酔っ払いの腰の入ってない拳など、さほどの威力は無いだろうと、玄界が起き上がって来るのを待ってみる。
待ってみる。
待ってみる。
待って…みる。
待ってみても玄界は起き上がって来ず、そのまま別のテーブルの下で仰向けになって完全にのびている様だ……。
いやいやいやいや助けに来ておいて弱すぎるだろう。それともこの連中が強すぎるのか?そんな事を考えているセヴン達の方に向き直った酔っ払い連中は下卑た笑みを浮かべながらその口を開く。
「おい兄ちゃんああなりたくなかったら、大人しく姉ちゃん達をコッチによこせやぁ」
そう言ってアルコールの臭いをプンプンさせる顔を近づけて来る。いい加減我慢の玄界じゃなかった限界である。もう1人の酔っ払いが遂にバニアの腕を掴もうと手を出してきた時、すかさず魔法を詠唱する。
【サモンクリエイト】
すると何も無い空間から突如鉄の腕輪が出現し、掴もうとしていた手にかけられる。鉄の腕輪には鉄球が鎖で繋がれており、酔っ払いの手が重さに耐えきれず下へと下がる。
「てんめぇ何しやがった!?」
仲間が謎の攻撃を受け、激昂してセヴンに掴み掛ろうとする。しかしその手を軽く後ろに下がり避けて、再び魔法を唱える。
【サモンクリエイト】【サモンクリエイト】【サモンクリエイト】
酔っ払い連中の手足には同じく手枷、足枷が着けられ、その先にはもれなく鉄球がぶら下がっている。
「おいコラァ!外しやがれこの野郎っ!!」
酔っ払い連中は口ぐちに汚い言葉でまくし立てて来るが、止めとばかりに魔法を唱える。
【サモンクリエイト】【サモンクリエイト】
すると木製の馬を模った物が酔っ払い達の足元から現れ、そのままその木馬に跨る様にさせ持ち上げる。木馬の背にあたる部分は三角形をしており、丁度酔っ払い達の股間の部分に頂点が当たる様に出来ていた。
更に手足に着けられた鉄球付きの枷の重りが、本人達の自重と相まってグイグイと股に食い込ませる。
「ぎゃああああああっ!なんだこれわぁあああっ!」
「痛いっ!痛いっ!痛たたたっ!」
周囲で見物していた男性客達が皆一様に股間を押さえ、苦悶の表情をしている。
「はいはい、ちょっとゴメンよぉ」
そう言いながら木馬の首に付けられた紐を引っ張り、足に着けられた車輪を転がして、見物客をかき分けながら食堂を横切って行く。ゴロゴロッゴロゴロッっと。
「ああああぁっ!ちょっ!動かさないでっ!!」
「段差が段差がぁっ!!」
そんな悲鳴を聞きながらも、無慈悲に木馬を引いて行き宿屋の入口まで連れて来る。
そして扉を開き外を眺めてから、木馬の上の男達を見てニヤリッと笑うセヴン。
「あ、あぁぁ…ねぇやめて?いや、やめてください!!」
「コレはダメ!絶対無理っ!!」
そしてそのまま外へと蹴り出す。ガンゴンガンッと音を立てながら入口の段差を綺麗に降りて行き、何も無い外の地面へと着地する。
「うぎゃあああああっ!絶対逝った!大事な物が逝っちゃったよぉっ!」
「終わった……」
「明日も一昨日も来るんじゃねえぞ!」
そう言って扉を閉めて振り返ると、そこには観客達がパチパチパチと拍手していた。口々に称賛をの声を挙げているのを聞き、セヴンは顔を緩ませ、微かににやけながら赤く染める。
そしてキザな役者がカーテンコールでする様に、右手を広げ、左手を胸に当ててお辞儀をすると、より一層拍手が大きくなった。
集まっていた観客達は各々散って行き、セヴン達も元居た席へと戻る。そこには玄界の姿は無く、散らかっていたテーブルや椅子も元に戻されていた。そして何事も無かったかの様に食事を続けようとしていたら、黒ひげの店主がやって来た。
「性質の悪い客が絡んだみたいで悪かったな、食事代はウチの奢りだ、遠慮無く食ってくれ」
「迷惑を受けたのはそっちも同じだろ?それに従業員もやられちまったじゃないか」
「ああ、アイツは正義感だけは一人前の冒険者でな、ウチに泊ってたんだが財布をスられたらしく代金が払えなくなっちまったんで、今日から下働きさせていたんだ。お前達が気にする事はねえよ」
何かトコトンついて無い人である。[幸運]の称号を持つセヴンの運を少し分けてあげたくなるが、分けれる物でも無し、一応助けてもらった事だし哀れでならないので一つ提案をする。
「おっちゃん、そんなら食事の代金を奢ってくれるってんなら、その代金をさっきの兄ちゃんに払ってやってくれ。一応助けてもらったんだしな」
セヴンの言葉にバニアも大きく頷いている、ヘラルーは気にした様子も無くワインを1人飲んでいた。
「お前さんもとんだお節介焼きだな」
「褒め言葉と取っておくよ」
お互いニヤッと良い笑顔を見せて、店主は奥へと去って行った。そしてセヴン達は食事を終え部屋へと戻る事にする。
部屋に戻ってみると、湯浴み用の桶にお湯が張っており、湯気がまだホカホカと出ている。そしてその横にはタオルが置かれており、コレをお湯で湿らせて体を拭くのである。ファンタジー世界では一般的にお風呂問題があるが、この作品でも同じく未だあまり普及してないので、こうして一日の汚れを拭き取るのが一般的である。
「お湯も用意してくれてる事だし、先に2人が使っちゃっていいよ。俺はその間ちょっと外しておくからさ」
ヘラルーの裸体は嫌と言うほど…いや、嫌ではなく見てしまっているセヴンだが、同じくバニアの裸体を楽しむのも少し違うと考え、部屋の外で女性陣が終わるのを待つ事にする。バニアが出て行くセヴンの背中を見て少し寂しそうな顔をしたのを、セヴンは見ていない。
そして部屋の扉の外で待っているセヴンの耳には、お約束な女性陣のキャッキャウフフッな声が聞こえて来るのだが、何とかこみ上げて来る感情を押し殺し、ジッと終わるのを待った。
「終わったわよぉ」
ヘラルーの合図を聞き中に入るとヘラルーはいつも通りの際どい恰好のままなのだが、バニアは白く薄い肌着姿になっており、月の光に照らされて中身がうっすら透けて見える。そして顔はヘラルーにされた悪戯のおかげで赤みを帯びており、何だか吸い寄せられる様に見入ってしまう。
俯きながら両手を自分の両足に挟んでモジモジとしている姿に、イカンイカンと現実に戻り、背を向けてローブを脱ぎ自分も肌着になり、タオルを湯に浸けて硬く絞り、肌着の隙間から上半身を拭き始める。
だが、しばらく拭いているとまどろっこしく感じ、見られても減る物じゃ無しと肌着を脱ぎ捨て上半身を露にする。すると背中から「キャッ」と可愛い声が聞こえて来るが、気にせず体を拭く。
「旦那様、背中は私が拭いてあげるわよぉ」
そう言ってヘラルーがタオルを奪い、背中を拭いてくれた。
「お、おおう。ありがとうヘラルー」
背中を適度な力でゴシゴシと拭いてくれてなかなか気持ちが良い物だと感じるが、時折プニプニと背中に自慢の双丘を押し付けて来るのを感じ、(コレは今晩も大変だなぁ)と心に思うセヴンであったが、湯浴みも終わり、ベッドへと向かうとヘラルーとバニアは1つのベッドを使って横になった。そしてセヴンは空いた方のベットへと1人で寝る。
「「おやすみなさ~い」」
何か物足りない物を感じながらも納得して、セヴンも声に反応する。
「ああ、おやすみ」
こうして長い一日が終わったのであった。
色々と期待させた方がいたらすみません。
本日はちょっと頑張りました!
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