らしくない
しばらく、らしくありませんでしたが通常運転に戻ります。
セヴン達一同は洞窟と言うよりもトンネルと言った方が相応しいの霊峰の洞窟を抜け、今出口へと差し掛かっていた。
洞窟の最終地点、赤みを帯びた光が差し込んで来ている事を考えると、外はもう夕暮れ時なのであろう。
アビスの街を朝に出立して、約1日をかけてヒューマン領まで来た事になる。本来であればもう少しかかるのだが、寄り道したとしてもセヴン達にとってはこれぐらいの物である。
「ふぅ~やっと出口だな。コイツ等をさっさと突き出さないと邪魔で仕方ない」
洞窟を抜けるとすぐ目の前には、石作の壁と木と鉄でできた門が洞窟の入り口、半径200メートルほどを囲むようにそびえ立っていた。門の前には槍を手にした門番が2人立っており、その横には小さな小屋が建っている。兵士の詰所か何かだろう。洞窟から門の前まで歩き、門番に声をかける。
「すみません、洞窟内で盗賊の一団を捕えました。中の冒険者ギルドへと連行したいので通行を許可して下さい」
セヴン自身はこの国境関所まで実際来た事は無いのだが、ナッツの情報によると、この壁を抜けると関所の中には貿易商人などが興した小さな街が出来ており、そこには冒険者ギルドの出張所も存在しているとの事であった。
「通行書があるのならば提出を、冒険者ならばそこの石版に手を置いてくれ」
門の傍らには、腰のあたりまである石柱の上に冒険者ギルドにもあった石版が設置されており、その上にセヴン達は順番に手を置いていく。
「2人は冒険者だな、ランクも3と2で通行可能だ。そしてそっちの紺色のマントは使い魔か、主人はワイルド・セヴン、君で間違いないね?」
「はい、間違いありません」
「それでその縛られているのが盗賊団として、後ろの女性達は?」
盗賊達に怯えて、バニアに寄り添うようにして未だ震えている女性達を指して尋ねて来る。
「この盗賊団に攫われて売られそうになっていた女性達です。冒険者ギルドにて保護を頼むつもりです」
一応女性達も石版に手を置き、ステータスに不穏な表示が無いか確認される。
「事情が事情の為、一応は通行許可を出すが、直ぐに冒険者ギルドへと連れて行くのだぞ。万が一があれば全てキサマの責任とする」
そう脅しをかけられ、門の上にいる兵士に声をかけると、兵士はレバーを下げ、ジャラジャラジャラジャラと鎖を巻き上げて大きな門を開ける。
「冒険者ギルドは街の中心にある石碑の近くだ、迷うなよ」
「ありがとうございます」
セヴンは門番に会釈をし、盗賊団の縄をしっかりと持ち、関所の街へと入って行く。
関所の街[パウエル]、国々を股にかける貿易商人達が、通商する為に興したダークエルフの国とヒューマン領の関所に出来た小さな街である。人口の割合としてほぼヒューマン種が占めており、他種族はちらほらと見受けられるほどである。街の中央には大きな石碑が置かれており、その石碑にはこの街を興した商会の代表達の名前が連なり、各商会の威厳を表していた。
そして門番に案内された通りに、石碑の近くに建てられた建物の看板に[冒険者ギルド]の文字を確認し、セヴン達一行は中へと入る。
後ろ手に縛られたガラの悪い男達を引き連れて歩くダークエルフの少年に、ざわざわと視線が集まるが、特に気にする事も無く、受付カウンターまで歩を進める。
「あの~すみません。霊峰の洞窟で盗賊を退治したので連行しました」
より一層周りがざわつき、口ぐちに何かを言っているが、はっきりとした内容は聞き取れない。
「は、はい、では石版にて身分の確認と引き渡しの手続きをお願いします」
まだまだなり立てなのだろうか?若いヒューマンの少女の職員が緊張した面持ちで応対してくれる。
しばらく色々とした手続を済ませ、冒険者崩れの盗賊を捕えた事で、冒険者ギルドから報奨金がセヴン達に支払われる。そして捕えられていた女性達も無事にギルドが保護して国に返してくれる事となった。
「お姉さん達、その恰好では何だからコレで服を買ってくれ。そして余った分は路銀の足しにでもしてくれ」
そう言って報奨金の一部を女性達に手渡し、冒険者ギルドを出ようとした時、後ろから声が聞こえる。
「「ありがとうございました!」」
振り返るとそこには、大きく頭を下げた女性達が見送っていた。バニアは笑顔で小さく手を振り、セヴンは背を見せながら軽く手を上げるだけで外へと出て行った。
「ぷっぷおぉぉっ!俺目立ってた?俺目立ってたっ!?」
「はい!とてもかっこ良かったです!」
「旦那様素敵だったわよぉ」
柄にも無い漢らしさを出して、ダークエルフらしいクールな態度で冒険者ギルドを出て来たセヴンは、ギルドからかなり離れた所で抑えきれない自分の感情を爆発させていた。
「でもここまで来る間ずっと鼻がスピスピなってぇ、だらしない顔をしてたのは減点かしらぁ?」
「いや~似合わない事やるもんじゃねぇな、でもコレでこの街での俺達の噂は大きく広がるだろうなっ!」
「今でもセヴン君は十分目立ってますよ!」
「ムヒョヒョヒョヒョッやっぱそうだよなぁ」
「旦那様、危ない者を見る様な視線が突き刺さってるわよぉ」
気が付けば、何やら顔を真っ赤にさせながら可笑しな笑い方をしているセヴンを、通行人達が冷ややかな視線を送っていた。
「ゴ、ゴホンッ!それじゃぁ気を取り直して、先にこの街の神殿に行ってから今晩の宿を探そうか」
ヒューマン領は自分の国を出て移住して来た他種族が多く生活している。なのでヒューマン領の重要拠点などに建てられている神殿は、他種族でも礼拝が出来る様に、各種多様な神が祭られている場合が多い。
特にアズガルドの人口比率的には、ヒューマンが一番多く、次に鍛冶や商売を広く生業にするドワーフ族、そしてエルフ族とダークエルフ族、後はオーガ族や有羽族に獣人族と言った感じだ。
ヒューマン領にはエルフ族の崇拝する狩猟の女神アルテミスも祭られている場合がほとんどだ。もちろん気まぐれで旅に同行している闇の女神ヘラも良く祭られている。
そうこう説明している内にセヴン達は神殿へと辿り着く。
「バニー、ここの神殿にはアルテミス様も祭られていると思う。一度この神殿で礼拝を済ませて、万が一の事が起きた場合ココで復活出来る様にしておいた方がいいと思うぞ?」
「そうですね、万が一の事が起こってセヴン君と離ればなれになる危険は避けたいですね」
中に入ると神殿内部は八角形の形をしており、中央に大きな石のテーブルが置かれていて、それを囲む様に小さな祭壇がそれぞれの壁に設置されている。そしてそれぞれの祭壇の前には各種族の司祭が立っている。何故か神聖な場所なはずなのだが神様のイモ洗い状態である。
「あそこにエルフ族の司祭様が居るから、あそこがアルテミス様の祭られている場所だろう」
「はい、行って来ます」
バニアは1人でエルフの司祭が居る祭壇へと静かに歩き向かう。セヴン達はその姿を神殿の入口から見守っていた。
「女神アルテミス様の子よ、汝の名前は?」
「あ、あっ、アクエリアス・バニアと申しましゅ!礼拝に参りましゅた!」
緊張のあまりいつもの様に言葉を噛んだバニアに優しく微笑んで言葉を続ける司祭。
「ではアクエリアス・バニアよ、跪き頭を垂れなさい」
「ふぁいっ!」
膝を地面につけ、頭を下げて目を閉じるバニアに司祭が手をかざし、その手から何か温かい物を感じる。
「女神アルテミス様、貴女の子アクエリアス・バニアに祝福を」
何も無い天井から光が差し、祝福の光がバニアの体を包む……。
《わ~い、やっと話しかける事が出来たのです~》
(?????)
何かの声が頭の中に聞こえ、混乱するバニア。読者には既にこのパターンはお分かりなのであろう。
《僕はアルテミスなのです、よろしくねバニアちゃん》
その声の主は狩猟の女神アルテミスであった…。
やっぱりココはお約束ですね…この後どう料理するかはお楽しみです。
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本当に待っているんだからねっ!




