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傾国王の王笏  作者: 根占桐守
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第19話 怪物皇子と皇帝の勝負


 ◇◇◇


 ルトレギナたちは、帝都にある皇帝の居城、大宮殿へと密かに訪れていた。

 ラヴェンデルに連れられて、今現在ルトレギナたちが歩いているのは、大宮殿の外れにある高い塔の中の、長い長い螺旋階段。

 塔内は黒く焼け焦げているが、未だに人が住めるくらいには修復してある。そう、その牢獄のような塔はまさに――かつてルトレギナが永く幽閉されていた、あの塔だった。

 ラヴェンデルは、カムヴィ帝ならばおそらく、かつてのルトレギナへの恐れによって誰も近づかぬこの塔にこそ、レイジーナを隠すだろうと推測したのだ。

 ラヴェンデルの後に続いて階段をひたすらに上り続けるルトレギナは、ふと胸を突いた疑念を口に出す。


「なにゆえ、父上は……カムヴィ帝は、叔父上を捕らえたのだろうか」

「そうだね。詳しくはあたしにもわからない。ただ一つだけ、確実に言えることはあるよ」


 ルトレギナの疑念に答えるラヴェンデルが、僅かに眉を顰めて声を低くする。


「皇帝陛下が〈天泣の杖〉まで使って、レイジーナ君を捕らえたのは……きっと、誰よりもレイジーナ君に執着しているから」

「……執着?」


 ルトレギナが目を細めて訊き返すと、ラヴェンデルが確信を持ったように頷いた。


「そう。皇帝陛下があたしを重用するのも、レイジーナ君と親しいあたしを監視するため。それほどまでに、皇帝陛下は並々ならない想いをレイジーナ君に抱いている。だからそれは、間違いないと思う。詳しくは、陛下御自身に聞いてみた方が良い」


 そういう会話を交わしている内に、三人は塔の最上階へと辿り着いた。

 ラヴェンデルが、かつてイグナジアが蹴破った鋼鉄の扉の前に立つ。そのまま、扉に備え付けられた鐘を鳴らして、「〈祝歌(いわいうた)の杖(つえ)〉、ベネディクトです。陛下」と呼びかける。

 すると扉の向こうから「よい。入れ」と促されて、三人は部屋の中へと入った。

 三人が部屋に入った途端、どこに隠れていたのか、部屋の外で数人の近習がぞろりと蠢き、鋼鉄の扉を閉める。おそらくカムヴィ帝の懐刀のようなものだろう。

 ルトレギナは扉から、部屋の中へと視線を移す。

 部屋の中央には、大きな天蓋付きの寝台が設けられており、そこに蒼白い顔をして、死んだように眠るレイジーナの姿があった。

 そのすぐ傍には、カムヴィ帝がレイジーナに寄り添うように、寝台へと腰かけている。寝台の奥にある大窓のカーテンに隠れるように、ひっそりと〈天泣の杖〉アマルスも佇んでいた。

 ルトレギナとイグナジアは二人揃って、ひとまずレイジーナの無事を確かめられたことに安堵の息を吐く。


「……このような場での謁見をお許しいただき、誠にありがとうございます。陛下」


 ラヴェンデルがそう頭(こうべ)を垂れて、恭しくその場に跪く。

 しかし、ルトレギナとイグナジアは跪かない。たとえ相手が、ヤルンヴィド帝国の神とも祀られる最高権威、皇帝であろうとも。

 それにカムヴィ帝が、目を向けることなく淡々と口を開く。


「頭が高いな」


 間髪を容れず応えたのは、いつもの微笑みを浮かべたイグナジア。


「おや、失敬。私がお仕えするのはレイジーナ殿下、ただお一人。故に私が額(ぬか)づくことも、レイジーナ殿下にのみでございます」

「左様か。肝が据わっておるな。流石はかつて、余を弑(しい)そうとした幼(・)王(・)よ」


 カムヴィ帝とイグナジアの間に、冷たい沈黙が流れた後。カムヴィ帝がちらりとルトレギナを一瞥した。


「そなたが頭(こうべ)を垂れぬ理由はわかるぞ。そなたは――皇帝と成りたいのであろう。怪物の御子よ」

「いいえ、父上。僕は皇帝とはなりません。そんなことより、お話があって参りました。父上は叔父上をどうなさるおつもりなのですか」


 カムヴィ帝へと、ルトレギナは臆さず物を申す。それに少しばかり驚いたのか、カムヴィ帝が小さく目を見開いたが、すぐにその目を伏せて鼻から細い息を漏らした。


「……ジーナは余の世界でたった一人の弟。貴き血を分けた無二の兄弟。〈七王笏〉を退こうとも、これは余の〈王笏〉。余が皇帝として在り続けるためには、ジーナが必要不可欠なのだ。故にジーナはこの塔に未来永劫置き、余の〈王笏〉……余の宰相としてヤルンヴィド帝国のため務めてもらう」


 つまりは、レイジーナを死ぬまでこの牢獄の塔に監禁するというのだ。カムヴィ帝の王笏として。

 カムヴィ帝は伏せていた目を上げると、ルトレギナと同じ金色(こんじき)の目でルトレギナを見つめ、初めてルトレギナへと微笑んで見せた。


「そなたには礼を言うぞ。完全無欠であり、誰にも隙を見せず孤高であったジーナ。弱点など生まれてこの方、一つも見せてこなかったこの子が、唯一その身を挺してまで守ろうとしたのがそなただ。その弱点に付け入り、ようやくこの掌中にジーナを収めることができた」

「……なにゆえ……なにゆえそこまでして、叔父上を縛るのです」


 僅かに眉を顰めたルトレギナに、カムヴィ帝が短く、淡々と答える。


「愛しているからだ」

「!」


 その、あまりにも純粋すぎる言葉に、ルトレギナだけではなく、イグナジアも大きく目を瞠る。

 あまりにも、予想だにしていない答えだった。

 カムヴィ帝は至極穏やかに、滔々(とうとう)と語る。


「他人の胎(はら)から産まれた仔など、余の血をまことに引いているのか定かではない。他人は信用できぬ。だが、同じ胎から産まれた弟ならば……ジーナならば、信用できる。唯一同じ血を引く者として。まことに愛することができる。誰よりも何よりも、ジーナを愛している」


 カムヴィ帝の言葉を、目を瞠って聴いていたルトレギナだったが、すぐにルトレギナはどこか可笑しそうに「ふ」と笑みの吐息を漏らす。


「そうか……父上。父上は、僕と同じだ」


 しかし、次の瞬間のルトレギナは、カムヴィ帝を射殺さんとする眼光と、凄絶な笑みを浮かべて、断じるように宣言した。


「僕も、レイジーナ叔父上を愛している」


 それは紛れもない真実であり、父カムヴィ帝によって気付かされた、ルトレギナの魂の深奥に隠されていた数(・)多(・)あ(・)る(・)激(・)情(・)の(・)一(・)つ(・)に過ぎなかった。


「ゆえに、父上の言うことは断じて聞くことはできない」


 ルトレギナが鋭く目を細める。

 その時、「どおおお――ん!」という轟音が地震と共に発生した。

 塔全体が大きく揺れ、その場にいた全員が耐えきれずにふらつく。

 ふと、ルトレギナは本能的にすぐそばに「何かが居る」と直感して、大窓の外に目を向けた。

 すると、遥か遠くに見える海から、巨大な雲がもくもくと立ち昇っているのが見える――おそらく、ヤルンヴィド帝国南部の近海で、何かが大爆発を起こしたのだ。

 大窓の傍に居た〈天泣の杖〉アマルスが索敵魔術を用いて、その目に魔法陣を顕現させつつ窓の外をしばらく見つめた後、舌打ちをして呟く。


「〈黄昏竜(ラグナロク)〉か」

「な……何だと!?」


 カムヴィ帝が驚愕の声を張り上げる。無理もない。

 先日まで、ヤルンヴィド帝国からしばし離れた内陸北部の隣国付近にいたはずの〈黄昏竜(ラグナロク)〉が、帝都に程なく近い南部の近海に現れたのだ。

 想定外のことにカムヴィ帝が即座に立ち上がり、扉の外に控えているのだろう近習に緊迫した声で命じる。


「帝国軍十二師団の全魔術師、〈七王笏〉総員を帝都へ集結させよ!」


 ルトレギナはこの帝国史上類を見ない緊急事態を、内心で「好機だ」と独り言ちる。


「父上。レイジーナ叔父上についてだが」

「今は帝国存亡の危機ぞ。その話はまた後日……」

「否、駄目だ。父上、僕はあなたを逃がさない――勝負をしよう。父上」


 毅然と言い放つルトレギナに目を眇めたカムヴィ帝が「アマルス」と、目顔でアマルスに命じる。

 するとアマルスが瞬時に長杖を構えて、魔術で攻撃しようとしてくるが、ルトレギナは視線だけをアマルスに寄越して短く問うた。


「邪魔をするのか?」

「邪魔なのはお前らね〜」

「そうか。ではまずはお前の相手からしよう……アマルス。僕と取引してみないか」

「取引?」


 訝しげに眉を上げるアマルスに、ルトレギナは頷いて見せる。


「父上以上の報酬をお前に支払う。ゆえに、しばらくは僕たちの味方につけ」

「え~? 箱入り皇子サマに、俺を満足させる極上の菓子をご用意できるわけ? そんなの、できるわけねぇじゃん」


 嘲笑うアマルスに、ルトレギナは目を細めた。


「報酬は既に用意している。イグナジア」

「はい。それでは、メルス卿。どうぞこちらをご賞味ください――〈アンバタースコーン〉です」


 ルトレギナに促されてイグナジアが差し出したのは、スコーン。

 そのスコーンには、かつてルトレギナとイグナジアが共に作った「アンコ」と乳酪(バター)が挟まっている。名付けて「アンバタースコーン」。

 それは大宮殿に来る前にルトレギナが考案した、対〈天泣の杖〉特攻の策略だった。

 イグナジアから菓子を受け取ったアマルスは「アンバタースコーン……?」と首を傾げながらも、好奇心に負けたのか、すぐさま〈アンバタースコーン〉にかぶりつく。

 そうして、次第にその隈に縁どられた眼差しは、きらきらと輝き始めた。


「な、に……これ……赤黒い何かのさっぱりとした甘みと、乳酪のコクのある甘さ、まろやかな塩気が絶妙に合っている……その色とりどりの甘さを、サクサクほろほろのスコーンが包み込んで……!? こんなにも癖になる味が、この世に存在したというのか……!?」


 何やらぶつぶつと零して、その身体をぶるぶると震わせていたアマルスは、〈アンバタースコーン〉を瞬く間に食べきると、恐る恐るといったように、菓子を差し出してきたイグナジアに「……おかわりは?」と小さく尋ねる。それにイグナジアは満面の笑みを浮かべて「取引次第、ですね」と爽やかに答えた。

 そうして、アマルスはすうっと大きく息を吸い込んだ後、カムヴィ帝のそばから身を翻して、まるで「降参」とでも言うかのように両手を上げながらルトレギナに歩み寄って来た。


「……取引成立。俺、ルトレギナ殿下につくわ」


 その言葉に、今まで唖然としていたカムヴィ帝がようやく我に返り、その金色(こんじき)の目に怒りを滲ませて吊り上げた。


「アマルス、そなた……〈七王笏〉の王たる余を、裏切るつもりか? 〈七王笏〉としての、ヤルンヴィド皇帝への忠誠は如何にした」

「あ~。ごめんね? 陛下」


 菓子一つで、すぐさま手のひら返しをしたアマルスが、カムヴィ帝を振り向き、悪びれも無くにたりと不気味な笑みを浮かべる。


「俺さ~。皇子共の皇位継承争いとか、誰につくとか、皇帝への忠誠とか、そういうの、死ぬほどどうでもいいわけ。とびっきり美味い極上菓子が食えればそれでいいんだわ。陛下」


 アマルスは面の皮厚く、ルトレギナの首へと片腕を回し、これ見よがしにカムヴィ帝へと肩を組んで見せる。

 それを目の当たりにしたカムヴィ帝が呆れ果てたように頭を抱えながら、「狂犬め」と呟く。

 ルトレギナはアマルスの腕を振り払って、再びカムヴィ帝へと問いかけた。


「これで僕の勝負を受けてくれるか? 父上」

「……怪物とはいえ、そなたも王の器か……よかろう」


 カムヴィ帝は忌々しげに鼻を鳴らして、ルトレギナへと向き直る。ルトレギナはカムヴィ帝へと頷き返して、口を開いた。


「僕が一人で〈黄昏竜(ラグナロク)〉を討伐し、〈七王笏〉となってみせる。〈七王笏〉となった僕は、ヤルンヴィド帝国にこの身を尽くそう。これが僕の勝利条件。そして僕が勝ったあかつきには、レイジーナ叔父上を、この牢獄のような塔から解放してほしい」


 カムヴィ帝はルトレギナの言う「〈黄昏竜(ラグナロク)〉単独討伐」に目を丸くしたようだった。しかし、すぐに目を眇めて、ルトレギナへと顎を振って見せる。


「……そなたが負けたら、どうなる。〈七王笏〉が総力を以て〈黄昏竜(ラグナロク)〉を倒し、更に皇帝の権威を高め、ジーナも我が掌中に収めるままでよいというのか」

「否。僕が負けたら、帝国が滅びるだけだろう」


 すぐさまカムヴィ帝の言葉を否定して見せたルトレギナに、カムヴィ帝が顔を歪めて吐き捨てた。


「……戯言を。余に一切の利点の無い勝負ではないか」

「ああ。それでもあなたは、勝負を受けるしかない。そうだろう?」


 皇帝の権力がどこまでも及ぶ大宮殿ではなく。人が寄り付かぬこの塔にカムヴィ帝の味方は誰一人としていないに等しい。しかも、ルトレギナの陣営には〈七王笏〉が二人もついている。

 ルトレギナの提案する「勝負」とは、脅しているようなものだった。

 それにカムヴィ帝は険しい顔をして目を伏せ、長く沈黙していたが、しばらくしてゆっくりと溜め息を吐き出すと、ルトレギナを睨み上げる。


「世が世であれば、そなたは史上最悪の暗君、暴君に成り果てたであろうな」

「それが僕だ」


 ルトレギナは、己に対して憎悪にも似た視線を向けてくるカムヴィ帝に、柔らかに微笑んで見せる。

 父に「怪物」として視られようとも、もうルトレギナにとってはどうでもよいことだった。


「案ずることは無い、父上。僕が必ず、〈黄昏竜(ラグナロク)〉を討伐して見せよう」

「うん。ルトレギナが〈黄昏竜(ラグナロク)〉を単独討伐したあかつきには、あたしが〈祝歌の杖〉の名の下(もと)にルトレギナを〈七王笏〉へと推薦しよう」

「はーい。〈天泣の杖〉も右に同じく~。ついでにアンバタースコーンもよろしくねぇ」


〈七王笏〉二人からの心強い言葉に、ルトレギナは二人を振り返って「ありがとう」と頷いた。


「……何もかも、勝手にてめぇらだけで決めやがって……流石は父子(おやこ)だなァ? ルト、兄上」


 不意に、寝台の方から掠れた低い声が零れてきた。

 ルトレギナは思いがけず目を瞠って、弾かれたように振り向く。するとそこには、寝台の上で薄っすらと目を開いたレイジーナが、目だけでこちらを見つめていた。


「叔父上!」

「レイさん!」


 咄嗟にルトレギナとイグナジアが「叔父上、身体に大事はないか?」「レイさん、ご気分は如何です? 欲しいものがございましたら、何でも仰ってください。すぐさまご用意いたします」と、口々に心配を零しつつ、揃ってレイジーナへと駆け寄る。

 レイジーナは、「フ――……」と慎重に息を吐きながら、言葉を続けた。


「天下の〈七王笏〉を篭絡し、皇帝陛下をも脅迫するとは……末恐ろしい奴らめ。俺には到底考えもつかねぇ悪巧みだ」


 レイジーナは、これでもかとレイジーナを案ずる二人の額を指で弾きつつ起き上がると、神妙な顔をしてレルトレギナを見上げた。

 その瞬間、「どおん!」と轟音が鳴り響いて、またもや地震が起こった。

 いよいよ、〈黄昏竜(ラグナロク)〉が本格的に動き始めたのだろう。寝台の傍に跪いていたルトレギナはすぐさま立ち上がり、レイジーナやイグナジアたちを見回した。


「もはや、時間がないようだ。僕はすぐに〈黄昏竜(ラグナロク)〉討伐へと出立する。叔父上はまだ安静にしていてくれ」

「何を言っている。俺も行くに決まってるだろうが」


 レイジーナがそう言うと、目顔でイグナジアを見た。

 イグナジアは一瞬だけ、何やら言いたげな顔をしたが、すぐに呆れたように息を吐いて、レイジーナに肩を貸して、レイジーナを立ち上がらせる。そんな二人を制そうと、ルトレギナは心配の声を上げた。


「無茶だ、叔父上! その身体では……」

「まだまだ半人前が調子に乗るんじゃねぇ。てめぇの全力の魔術には必ず、反(・)動(・)がある。その反動から誰が帝都を守れる?」


 レイジーナの正論に、ルトレギナは押し黙る。一方のレイジーナはいつも通りにやりと不敵に、されど妖艶に笑みを浮かべた。


「てめぇの叔父上しかいないだろうが。なァ?」


 レイジーナがルトレギナの肩を軽く叩いて、「俺の心配より、てめぇの心配をしろ」とでも言いたげに、淡々と頷いて見せる。


「手伝ってやる。だからてめぇは何も気にせず、本気でやれ。いいな?」

「……わかった」


 ルトレギナはとうとう折れて、苦笑を漏らすと、レイジーナに頷き返した。何だかんだとはいえ、レイジーナが傍に居てくれることほど心強いことはない。

 そこに、アマルスがレイジーナの首に纏わりつくように腕を回してきて、二人の間に割って入ってくる。


「俺も付いてってあげる~。レイジーナの横っ腹を刺したお礼にね?」

「当然だ。ルトとイグナジアが作ってやった極上菓子の分もきりきり働け、アマルス」


 半眼で呆れたようにアマルスを見やるレイジーナに、アマルスが大袈裟に肩を竦めて見せた。

 次にレイジーナは、ラヴェンデルに目を向けた。


「ラヴェンデル。帝都と陛下のことは、てめぇに任せる」

「そう……またあたしは置いて行かれるんだ」


 ラヴェンデルは困ったように眉を下げて、溜め息を吐く。それにレイジーナが、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべて、少年のようなあどけない仕草で小首を傾げて見せた。


「ラヴェンデルがここに居ると思えるから、俺らは帰ってこられる。わかるだろ」

「ばか……わかってるよ。帝都はあたしが守ろう。皆、必ず無事に帰ってきなさい。いいね?」


 ラヴェンデルは、含みのある笑みを零してレイジーナに頷き返した後、ルトレギナたちを諭すように、されど冷静に激励を送ってくれる。それに、ルトレギナたちは揃って力強く頷いて見せた。

 こうして四人は、〈黄昏竜(ラグナロク)〉が出現した近海へと馬を走らせた。

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