第5話 魔王、力に目覚める
村の門広場に着くとドミニク達、自警団がこっちへ向かってる最中だった。
「エリザ! 何故外に出ておる! ん? お前はレオ……貴様の差し金か!」
何故我だ……本当にボケ始めているな。
「お爺ちゃん! 違うの、レオは……」
大きな足音を立て、サイクロプスが門広場に入って来た。
「とにかく、ここはわし等に任せて非難しろ! お前達、行くぞ!」
ドミニクは周囲の自警団員に檄を飛ばすが、予想以上の敵の迫力に団員は怖気づいている。
「ええい!」
ドミニクは一人、サイクロプスに立ち向かっていく。
サイクロプスはドミニクを叩き潰そうと、地面に向かって拳を繰り出す。
しかしドミニクは華麗に躱し、その腕に飛び乗って一気にサイクロプスの頭上へと攻め込む。
サイクロプスは腕を振り回してドミニクを落とそうとするが、それよりも先に顔面目掛けて飛ぶ。
「くらえ!」
ドミニクは自分の剣に炎を纏わせる。
そしてサイクロプスの一つ目に向かって斬撃を放つが、眼球の表面に傷が入った程度だった。
「ぐああああ」
だが炎の付いた斬撃は、かすっただけでもサイクロプスに悲鳴をあげさせるほどの威力。両手で自分の目を覆う。
「ちぃ。浅いか!」
ドミニクは悔しそうに空中から地面へ着地する。
ほう。炎を使った魔法剣か。老兵のくせになかなかやるな。
だが……ヤツ一人では分が悪いな。
かといって我は何も出来んがな。フハハハハ。
「レオ、大変よ!」
エリザが呼ぶので振り返ると、壊れた門から新たな魔物が入り込んでいた。
増援だと……先ほどの衝撃音で集まったのか。
「お前達! しっかりせい! 増援をなんとかしろ! コイツはわしが……」
ドミニクが怖気づいた団員に檄を飛ばすと、サイクロプスの右蹴りが直撃する。
ドミニクは球蹴りの様に吹っ飛ばされ、村の壁に激突する。
「お爺ちゃん!」
ドミニクは頭から血を流しながら、壁伝いにゆっくり立ち上がる。
「案ずるなエリザ。お前とこの村は死んでも守ってみせる。お前達、いつまで呆けている! 自警団の意地を見せろ!」
自警団員は我に返り「いくぞ!」と、門から出てきた増援にあたる。
そしてサイクロプスはゆっくりドミニクの方へ向かう。
あの爺、死んだな……あっ。
我が傍観していると、エリザがサイクロプスに向かって走っていた。
「たぁぁ!」
エリザはサイクロプスのかかとに斬撃を放つと、悲鳴を上げてひっくり返る。
「お爺ちゃん早く!」
サイクロプスが倒れてのたうち回っている間に、エリザはドミニクを支えて避難しようとする。
しかし暴れ回るサイクロプスの手が、エリザ達に襲い掛かる。
「あぶない!」
ドミニクは身を挺してエリザを守るが、2人共吹っ飛ばされ、小さな小屋に激突する。
そして激突した小屋が崩れて埋もれてしまう。
サイクロプスは立ち上がり、周囲を見渡す。
すると広場の中心に一人で立ってる我を見て微笑む。
まさか……今度は我を狙っているのか?
昔ならこんなヤツ瞬殺だが、今の我なら瞬殺される。
よし……逃げよう!
我は全速力で逃走を図る。
しかし、歩幅が違い過ぎて簡単に壁際に追い詰められる。
「待て! 冷静になれサイクロプスよ。我は魔王。お前達の王だ! わからないのか!」
サイクロプスは我を摘まむ様に持ち上げ、じっと見つめる。
そして口からヨダレを垂らしている。
「なんだそのヨダレは……バカな考えはやめろ! こんな小さな肉じゃお前の腹は満たされん! 早まるな!」
サイクロプスは口を大きく開けて食べようとする。
「やめろ!」
その声の直後、サイクロプスは体勢を崩して手を離す。
落下する我を、誰かが腕でキャッチした。
それはトーマだった。
「大丈夫か? 全く勝手に家から抜け出すなんて……悪い子だ」
「父さん……」
サイクロプスの足に、薪割用の斧が刺さっていた。
そして殺意をむき出しにして立ち上がる。
トーマは大の字になり、我の前に立つ。
何をやっているのだ……盾になろうとしているのか?
「俺の息子に手を出すな!」
気勢を張ってはいるが、足が震えていた。
「レオ、父さんが囮になる。今の内に逃げるんだ!」
「バカなマネはよせ! やめろ!」
サイクロプスはトーマに殺意を向けて拳を振り上げる。
そして、トーマ目掛けて振り下ろす。
「やめろ!」
トーマはこっちを見て微笑む。
その瞬間、我は悟った。
この7年間の間にトーマが特別な存在になっている事を。
死なせたくない……トーマを守る力がほしい。
生まれて初めて「人の為に力が欲しい」と思った。
その瞬間、目の前に光の盾が現れた。
それはトーマの頭上に現れ、サイクロプスの攻撃を防いでいた。
この光の盾は……。
するとサイクロプスの頭上に巨大な「光の剣」が現れ、そのまま落下する。
サイクロプスはそのまま剣に突き刺されて絶命。
光の盾は消え、光の剣もサイクロプスと共にゆっくりと消滅していく。
光の剣に光の盾……忘れもしない。
これはヤツの……カイラスの力だ。
我はその光景を見た後、急に意識が遠のいた。
***
目が覚めると、自分のベッドで眠っていた。
上体を起こすと、凄まじい疲労感に襲われた。
そして横を見ると、リズがベッドの横でうつ伏せになって眠っていた。
どうやら寝ている間、ずっと傍にいたらしい。
我はリズの肩をさすると目を覚まし、こっちをじっと見つめる。
「パチン」
リズが我の頬を引っ叩く。目には大粒の涙がこぼれていた。
「なんで勝手に外に出たの! どれだけ心配したと思ってるの!」
そういってリズは思い切り抱きしめてきた。
これが「心配される」というものか……。
引っ叩かれたはずなのに、嫌な気持ちが全くしない。
それからリズに何が起きたのかを聞いた。
話によると、我は丸二日眠ったままだったらしい。
急に現れた光の剣と盾……あれによって村は救われた。
今は皆で村の修繕作業にあたっているらしい。
そして、我の身体の中に感じた事のない「力の気配」を感じる。
手に力を込めると、光が周囲に集まってくる。
やはりあの力は……我が使ったのか。
だが、ヤツと同じ力を何故我が?
まぁいい……いずれわかる事だろう。
とりあえず、今の我には力がある!
つまり、ヤツを倒しやすくなった事は間違いない!
完全に使いこなし、ヤツとその一族も根絶やしにしてくれる!
「フハハハハ」
「何バカ笑いしてるのよ?」
振り向くと、いつの間にかリズの姿はなく、代わりにエリザが椅子に座っていた。
「いつの間に!」
「さっきからいたわよ。一応声もかけたんだけど?」
「そうなのか……。あっ傷は大丈夫か?」
「うん。三十針も塗ったけど、暫く安静にしてれば大丈夫って。それよりお爺ちゃんが重傷よ。吹っ飛ばされた時も守ってくれたから」
「そっか。それでじじ……ドミニクさんは大丈夫なの?」
「うん。ただ暫くは寝たきりね。左手と右足を骨折してるから。あとお爺ちゃんから伝言」
「伝言? まさか説教か!」
「違うわよ。ただ時間がある時に家に来てほしいって。アンタの力の事で話したいそうよ」
ほう、それはコチラとしても願ったりだ。
「あと……アンタには負けないから」
「え?」
エリザは立ち上がり、こっちに指差す。
「アンタに凄い力があろうと、世界一の剣士になるのは私だから! そして勇者一族を倒すのも私! あんまり調子に乗らない事ね」
「貴様……」
「でも……私や村を救ってくれてありがとう」
エリザは照れ臭そうに去って行った。




