表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第4話 魔王、人助けをする。

 我は鐘の音を無視して寝込んでいると、誰かが身体を左右に揺らす。

 ゆっくり目を開けると、トーマが血相をかかえていた。


「レオ、起きろ! 魔物が村を襲ってきたんだ!」


「……魔物が? あっそ」


「あっそ……じゃないだろ! 起きろレオ!」


 魔族の王だった我にとって「だから何?」って感じだ。

 また寝ようとすると今度は布団を取られ、仕方なく起きた。


 この村は度々魔物からの襲撃はある。


 その為に木の壁で村を囲い、自警団が毎日警備している訳だが……警報を鳴らすほど大規模なものは初めてだ。


 リズは家の中を厳重に戸締りし、トーマは窓に板を貼って釘で固定していた。

 まるで嵐でも来るかの様だ。


「レオ、危ないから絶対に外に出るんじゃないぞ」


 我は素直に頷く。


 外に出る気なんて毛頭ない。

 今の我では、その辺の下級な魔物にすら勝てない弱者だからな。

 だが……外の様子は気になる。


 板の付けてない小窓から外の様子を見た。

 所々で松明の火が見え、争い合う声が聴こえるが、暗くてハッキリ見えない。

 おそらく自警団員と魔物が戦っているのだろう。


 すると家の前を歩く「小さな人影」が見えた。

 刃の付いた剣と松明を左右に持ち、周囲を警戒している。


 エリザだ……。

 

 あの脳筋女、まさか魔物討伐に?

 いくら強いと言っても子供。

 あの爺が参加を許すわけがない。

 アイツ……勝手に外へ出たのか?


 エリザはそのまま歩き続け、我の視野の見えぬ方へと進んで行く。 


 ふん。まぁいい。

 そのまま魔物に食われて死んでしまえばいい……。


 心でそう言い放ち、鼻で笑った。

 そして小窓から離れようとしたが、何故かエリザの事が気がかりで仕方なかった。

 

 どういう事だ……この我が、エリザを気にかけているとでもいうのか?

 あの暴力女が死ねば、毎日稽古をしなくて済む。

 私生活を邪魔する者がいなくなるはずなのに……。

 

 自分に言い聞かせても、心の迷いは消えることはなかった。

 むしろドンドン重く圧し掛かっている事に気づく。


 これが人間の持つ「罪悪感」というやつか……。

 ええい! うざったい! 世話のやける女だ!


 上着を持って小窓に体を乗り出し、強引に外へ出た。

 


 外に出ると、斬られた狼の様な魔物の死骸を発見した。


 ここまで入り込んでいるとは……エリザがやったのだろうか?


 周囲を警戒しながら歩き、村の入口の方へ向かった。



 村の入口に行くと、門広場でドミニクと自警団員達が、グリズリー(雪熊)の群れと戦っていた。


 どうやら雪熊の群れが門を壊したらしい。

 辺りには雪熊や狼などの魔物の死骸や、傷を負って後退している自警団員もいた。

 村の中に入ってきた魔物は、この中を掻い潜って来たらしい。


 それにしても、何故こんな大量の魔物が?


「きゃあ!」


 門広場の後ろ奥の方から、エリザの声が微かに聞こえた。


 声の方へ向かうとエリザが2匹の狼に囲まれていた。

 既に剣で斬られた狼の死骸が転がっている。

 エリザが倒したようだ。

 だがエリザ自身、左腕から血を流して追い込まれていた。

 

 やれやれ。面倒事は避けたいのだが……。


 周囲を見渡し、民家にあった薪割台に刺さった斧を見つける。

 我はその斧を引っこ抜くと「ズシン」という重さが両手に広がる。


 子供が持つには重すぎるな。

 なら、遠心力を利用して投げてみるか……当たるかはわからんが、隙は作れる。


 斧を両手で持ち、身体全体を回転させて勢いよく斧を投げる。


「あっ」


 投げた斧は上に飛んでしまったが、タイミングよくエリザに飛びかかった狼の頭に刺さる。


「フハハハハ。飛び上がるのも計算づくよ!」


 突然の攻撃にエリザが驚く。


「レオ! なんであんたがここに」


 残った一方の狼が、こっちに殺意を向ける。


「あっ……やばい」


 狼はこっちに向かって走り出そうとするが、狼の背後からエリザが剣を斬りつけて倒す。

 そして怒った表情でこっちに近づいてくる。


「あんた何やってんの? ここは危険なのよ?」


「エリザだって勝手に出て来たんだろ?」


「だってお爺ちゃんが……」


「別に外に出る気なんてなかったさ。お前を窓から見かけて……なんか、ほっとけなかった」


「……え?」


「とりあえず非難するぞ。ここは自警団の奴らに任せるんだ。怪我もしてるだろ?」


「えっ? ちょちょっと……」


 エリザの右腕を掴み、その場を離れた。

 


 ***



 2人で建物の影に隠れた。


「傷を見せてみろ」


 エリザは我の言葉に従い上着を脱ぎ、怪我した傷口を見る。

 そこには切り裂かれた様な傷があり、血が流れていた。


「思ったより深いな。これは縫わないとダメかも」

 

 ここで恩を売っておくか……。

 他人の手当なんてした事はないが、知識はある。


 我はポケットからハンカチを出し、エリザの腕に巻く。

 エリザは痛そうな顔をする。


「我慢しろ。魔物は鼻が利く。血を止めないと襲ってくるよ。……よし、これで大丈夫」


「……ありがとう」とエリザは照れ臭そうに言う。


 何を照れている。これは全部貸しだ。

 将来、たっぷり利子をつけて返してもらうぞ。


 エリザは上着を羽織り直す。


「あっ」


 我は上着のポケットにキャラメルが2つ残っていたのを思い出す。

 コイツが訓練場に無理矢理連れて行くから、存在を忘れていた。

 一つ食べ、至福を噛みしめていると視線を感じる。


「ねぇ、私の分は?」


「ない」


「嘘よ。出しなさいよ」

 

 こいつ……傷の手当までしてやったのに、なんと図々しい!

 しかも、なんであと一つある事を知っている!

 ここでやらなかったら、殴るかもしれない……くそっ!


 エリザに余ってたキャラメルを渡す。


「やっぱり持ってわね」


 コイツ……カマかけたのか!


 エリザは嬉しそうにキャラメルを食べた。


「おいしいね!」


 貸し上乗せだからな!


「ねぇ」


「何?」


「……さっきは助けてくれてありがとう」


 ほう、コイツにも愛嬌というものがあるらしいな。

 稽古の時もそういう感じで優しく接してくれればいいのだが……。


 周囲の魔物の声が静かになっていく。


「……どうやら自警団達が魔物を倒したみたいだ。今のうちに家に戻ろう。外に出ていた事がバレたら怒られる。その怪我のいい訳は……自分で考えろよ!」


「わかってるわよ。じゃあ行きましょう」


 家に帰ろうと歩き出すと、急に目の前で「ドーン」大きな音が鳴り、その衝撃で我とエリザは尻もちをつく。


 近くにあった村の壁が一部、吹き飛んでいた。


「何今の? 村の壁が……」と驚くエリザ。


 雪煙が舞い上がり、視界が悪くなる。

 そして雪煙の中から、次第に大きな黒い影が現れる。

 その大きさは村の壁よりも遥かに高かった。


 なんだこの黒い影は……雪熊の二倍……いや、三倍はある。


 雪煙は徐々に晴れ、中から赤い大きな眼の様なものが見える。

 そして雪煙が晴れ、中から緑の肌をしたサイクロプスが現れる。

 身体中に斬り傷があり、此方に殺意を向けている。


「エ……エリザだ!」


 我の後頭部をエリザがどつく。


「バカ! よくこんな状況で冗談言えるわね! 逃げるのよ!」


 我はエリザに腕を掴まれ、後方へ非難する。

 その先にはドミニク達、自警団がいるからだ。

 我はエリザの怪力に引かれながら考察した。


 何故この地域にサイクロプスがいる?


 我は魔物や魔族の生息地域は、全て網羅している。

 サイクロプスの生息地域は、大陸東部のはず。

 そしてあれほど大きなサイズは見た事がない。

 それにあの傷跡、剣で斬られたものか?


 後ろを振り返ると、両手首に鉄枷、管の様なものも刺さっていて、まるで実験場から逃げ出した様な感じだった。

 

 サイクロプスは我等を追う様に移動し始める。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ