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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ


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第8話『機能解放と廃ビル探索』

 何もない階層で訓練すること一週間、普段通りとはいかないまでも、軽く走って軽く跳ねるといったことを気軽にできる程度には、この難儀な体との付き合いも慣れてきたよ。


 この一週間で、GoAでは多くのことがあったらしい。まず、制限されていた各種の機能が解放された。これはこの世界に生きる住民と同じ生活を体験させることを意図したもので、合計ログイン日数が三日目になるタイミングで自動解放された。


 簡単な鑑定機能、パーティ機能やターゲット機能、ヘルプに掲示板、収納数がら有限ではあるがとても便利なインベントリ、その他多種多様な便利機能が解放された。


 鑑定機能は分かりやすくて、調べたい物に意識を向けることでその情報を知ることができる便利機能だ。ただ、詳細を知るためには別途スキルとしての鑑定が必要らしく、当然私は未所持なので、現状だと簡単な情報が分かるのみだ。


 パーティ機能は他の旅人や住民と徒党を組むことで、この危険な世界で安全に旅をすることが可能になる機能だ。GoAではプレイヤー同士だけでなく、NPCともパーティを組めるようだ。


 私が今までプレイしてきたゲームでは滅多になかったことなのだが、どうやらNPCのみで構成されたパーティも存在するらしい。


 また、一時的に複数のパーティが合同で何かをなすことを目的として構成される、レギオンと呼ばれる特殊な集団も存在するようで、これがなかなか面白い。


 この世界ではまだ直接確認されていないが、多くの住民達によってレイドボスのような存在が示唆されているので、そういった怪物と戦うことを想定して作られたシステムのようだ。


 レギオンとは別に、複数の旅人や住民が共通の思想の元行動を共にするギルドと呼ばれる共同体もあるようだ。開始直後の現在の環境では、強大なギルドは専らNPCが集まった独自のものしかないのみらしいが、既に一部のプレイヤー達でギルドを結成する動きが活発化している。


 私も多くの同士を集め、いつの日か絶望と混沌を振りまく集団を作るつもりなので、この機能は大いに役立ちそうだ。


 ターゲット機能は複数の対象から望む相手を選択してロックできる便利機能で、この世界に蠢くモンスターはもちろん、上記に挙げたパーティやギルドなどの特殊な集団に属していない他者に対しても使えるという、一風変わった仕様のようだ。


 未発見だが、多くのゲームではコロシアムなどで開催されるパーティやギルドで対戦する要素があるので、この地のどこかに存在しているのではと一部のプレイヤーが積極的に探索しているらしい。


 また、この世界では当然フレンドリーファイアが有効なので、そういったことも意図して作られたのかもしれない。まあ、なんであれ私にとっては大変ありがたい機能だ。


 ヘルプはこのゲームの仕様を教えてくれる便利AI機能のことで、このゲームのシステムや一部機能についてのことなら詳しく解説してくれる。


 少しお試しで質問してみたところ、ステータスなどはかなり細かく教えてくれたので、後ほどまとめておこう。


 掲示板は昨今のゲームと同じようなもので、私のような僻地にスポーンしたプレイヤーにとっては重要な情報源になっている。解放されたシステムの中では、最も利用しているかもしれない。


 書き込みなどをしなくても情報をスクリーニングすること自体はいくらでも可能なので、まだ一人も他人と出会っていないが、この世界についてはそれなりに詳しくなっていると思う。


 インベントリは超便利な収納機能だ。私の場合はメールに塩漬けしてある物を除いて、私が入っていたあの朽ちかけた箱が一つ入っているのみだ。


 訓練が一段落ついた後、一応回収してみようと思い物は試しにと挑戦したところ、なんと無事回収できた。不思議な力を持っていたので、私のスキルを使用することで再利用できるかもしれない。


 そんなこんなで、今日はいよいよ下の階に挑戦する日だ。挑戦といっても、別に難しいことをしようとしているわけではない。普段遊んでいるVRMMOと同じように、ストレスなく移動できるかどうか、というお話である。


 この狭い空間では満足するまで訓練できたが、障害物が溢れているであろう下の階で探索できるのか、という確認である。


「よし、行くか」


 私は覚悟を決めると、しっかりとした足取りで階段へと向かった。これは退屈極まる訓練の成果だ……。自身の成長は楽しかったが、一週間も繰り返せば少しは飽きもする。


 しばらくコンクリート剥き出しの無骨な階段を降っていると、何やら広い空間に出た。


 うん。当然階の広さはあの何もない所と同じであるが、内装が異なるだけでこうも印象が変化するとは。


 軽く見て回ると、高層ビルからの風景の展望を目的としていたであろう配置の家具や小物、複数人で集まって食事をするのに最適そうな長机、それから空間の奥まった部分に一際大きなデスクがあった。


 そのデスクの周辺には何かしらで得たであろう記念品と思しきトロフィーや賞状が綺麗に飾られていて、当時の情景を思い起こさせる。


 複数の功績を残した名のある企業だったのだろうか。このビル丸々この企業のものだったのか、あるいはそうではないのか定かではなかったが、デスクの上に置かれた写真を見るに、どうやらこの企業の持ちビルである様子だ。


 同じ装飾をあしらった帽子を被る社員らしき人物が、大人数で綺麗に整列している。背後にあるビルの形状を見るに、恐らくこのビルで間違いない。


 彼らの背後には特徴的な柱があるのだが、その柱の裏側が今ここからも見える。壁面に沿って天高く聳えるトレードマークなのだろう。スポーン直後の屋上でも確認できたが、屋上の更に上に、一本の柱がポツンと屹立していた。


 かつては人間の営みが活発で、とても賑やかであった自慢の高層ビルも、今やただの朽ちかけた廃ビルか。突如溢れ出した瘴気やアビステイカーから逃れるために、取るもの取って逃げ出したのかもしれない。


 至る所に当時の活気を思わせる物があって、なんとも言えない気分になるな。


 何か回収できるものはないかなと簡単に探索してみたところ、かなりの荷物を回収できるであろう大きめの背嚢と、ビルの骨組みとして使われていたであろう鈍色の金属棒を手に入れた。棒のサイズも振り回すのにちょうどよく、人に全力で叩きつければ頭蓋骨を簡単に砕けそうである。


 しかし、悲しいかなこの身は数多のデバフを授かりし貧弱な体なのだ……。きっと想定よりも大幅に出力が低下しているから、戦闘の際はかなり気を付けないといけないな。


 その後も体の調子と相談しつつ、順繰りに複数の階を探索していると、少し気になる階層を発見した。


 小さめではあるが、埃を被った精密な機械がかなりの数放置されているのだ。少し調べてみると、どうやらこのビルを持っていた企業は、食品加工の企業を相手にB to Bで加工用の精密機械を販売していた企業のようで、その機械の再現模型が至る所に置かれているのだ。


 既にこれらを動かすのに必要なエネルギーは尽きているらしく、どこを弄ろうにも動く気配すらない。中には私の修復に使用できる部品もあるだろう。この階は隅々まで探索した方が良さそうだ。


 ファブリケーターや吸収同化アシミレーターに使える何かしらを回収できるかもしれない。


 身体制御難易度上昇(超特大)との付き合いで、既に体がボロボロなのだ。ここで代替できそうなパーツが見つかれば、言うことなしの最高の成果なのだが、果たして。


 しばらく探索した結果、かなりの量のパーツを手にすることができた。規格に合うパーツはかなり少ないが、工夫次第で流用できそうな形の物が多い。


 中にはこれはどうなんだと言わんばかりの謎パーツもあったが、それでも何かの拍子で役に立つことがあるかもしれない。


 取り急ぎ処置が必要そうな膝と足首、それから左腕に応急処置を施した。残念ながら欠けた右目の代替となるようなパーツは見当たらない。


 吸収同化を使用して幾つかのパーツを吸い込み、膝と足首を意識して治るよう念じると、その違和感がマルっと解消されたのが分かった。


 一週間ずっと付き合ってきた不調から解放され、生まれ変わりスッキリとした気分だ。生れ落ちた直後だというのに。


 右腕は……。残念ながらあまり変わっていない。無惨に破壊された断面から見える内部の複雑な機構の内、特に酷く損傷していた箇所の一部が修復されたようだが、この程度の機械のパーツでは十全に修復することは難しいようだ。


 もっと優れたパーツを使用している機械がないかの探索が必須だろう。


 欠けた目の修復も、高度なセンサーのようなものがあれば利用できるかもしれないが、残念ながら機神様が作り上げたこの機体のセンサー代わりになるような代物はここにはないようだ。


 視野が常に左半分しかないので、首をブンブン振り回して探索しなければならないことのストレスがとてつもない……。


「それにしても、かなりの収穫だ。この調子で探索を続けていけば、幾つかの試練は克服できるのではないだろうか?」


 使えそうなものはそのまま吸収同化し、無理そうならファブリケーターで面白いパーツに作り直すのもありだ。スキルのおかげでかなりやりやすくなっているな。機神様に感謝が尽きない。


 よーし、これで暫くは安泰だろう。主要な部分の他、個別に違和感のあった箇所もある程度の応急処置を施した。


 その他の部分もなるべく他のパーツにストレスがかからないよう、それぞれ異なる形状をしているジャンクを上手く組み合わせることで必要な処置を施した。


 異なる形状のジャンクを組み合わせるのは、我ながらかなりの工夫を凝らしたと思う。今後のためにも、良い経験をしたと思う。


 その他、幾つか気になる階層を隈なく探索した結果が以下の通りである。まだここより下に複数階残っているが、とりあえずはこれだけあれば十分だろう。残りは適当に散策して気になるものがあれば回収やって感じで良いだろう。


 ▼廃ビル探索の戦利品▼

 ♦朽ちた箱(不思議な力を感じる)

 ♦大きめの背嚢×1

 ♦手に馴染む鉄パイプ×1

 ♦修復用パーツ×約15(使用済み)

 ♦スペアパーツ×約30(一部使用済み)

 ♦用途が分からないパーツ×約20(一部使用済み)

 ♦投擲するのに手頃な瓦礫×10

 ♦大きめの瓦礫×2

 ♦価値が分からない貨幣×結構な数

 ♦謎の石(不思議な力を感じる)×1


 朽ちた箱と謎の石を鑑定した結果、以下の情報が分かった。


 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


【G】機神の揺り籠

 ┗とある神がその寵児を保全するために作り上げた高度な維持装置。その装置には特定の種族を癒し、守る力が込められている。しかし、長い年月を経て、その力は褪せてしまったようだ。


 特別な作業を行うことで、元々の機能を修復できるかもしれない。


 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


【R】雷の魔石(中)

 ┗雷属性の魔力が込められた中程の大きさの石。使い方次第では武器にも素材にもなり得る力を持つが、扱いには繊細な技術が不可欠だろう。


 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


 なるほど、といった感じである。箱はやはり特別な力を持つようで、私の工夫次第では大いに役立つアイテムに変貌するだろう。


 魔石は、恐らく精密機器のエネルギー源もして利用されていたのだろう。その他にも大小様々な石があったが、そのどれもがくすんだ色をして砕け散っていた。


 これは唯一残っていた石だ。もしかしたら貴重な物のかもしれない。


 直ちに必要そうなものを除き、多くのものをインベントリにしまった。敵と遭遇した時のために複数の瓦礫をしまった大きめな背嚢を背負い、鉄パイプを装備しておく。


 このビル内には他の気配を感じないが、外は分からないからね。もしかしたらアビステイカーがいるかもしれないし、別の怪物が潜んでいるかもしれない。


 少し休んだら、慎重に下の階を探索して、外を確認してみるとしよう。

 少しやっつけ気味なので、後ほどしっかりと推敲しようと思います。


 ルイス君は、どうやら違和感のあった箇所を修復する手立てを確立できたようですね。恩寵の試練によって自動修復機能が停止しているので、回復手段を得たことは大きいはずです。


 その他、気になるアイテムを幾つか回収しています。これらが今後どうなってくるのかは、彼が何を望むか次第で何にでも変化するでしょう。


 次回はようやくビルの探索を終え、外に出るお話になると思います。皆さん大変お待たせいたしました。

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