第67話『恩寵の克服』
あと数話投稿するかもです!
最初は床石の溝をなぞる程度の細い光だったそれが、すぐに祭壇の縁へと広がり、白い石材と銀色の金属線の間を流れる水のように走っていく。刻まれていたサクス文字の一つ一つが順番に目を覚まし、薄緑の光を帯びてフワリと浮かび上がった。
この表現が正しいかは分からないが、正直とても格好良い。まさに「魔法」と表現できる絵だ。
それに合わせて、神殿に流れていた空気が変わる。
当のサクスザント様は、そんな変化を起こした本人とは思えないほど気楽な顔で私を見ていた。
「では、まずは見える形にしてやろう」
彼女が指先を軽く振る。
大祭壇の光が一筋、床から立ち上がった。細い線は空中で何度も折れ、面になり、やがて私の目の前に白銀のウィンドウを展開する。
いつもの黒や灰色を基調にしたシステム表示とは明らかに違っていて、それはどこか水晶の板に似ていた。板の端には極細の歯車模様が刻まれ、その歯車の隙間を蔦のような線が絡みながら走っている。
「ゴージャスだ……」
まさしく機神サクスザント様仕様。表現に困るが、ひたすらに格好良い。
「今一度見てみよ」
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▼恩寵▼
■欠け砕けた機械兵器
┣♦片目欠損(右目)/視野半減
┣♦炉心崩壊/エネルギー常時枯渇
┣♦パーツ不足/全身のパーツ枯渇
┣♦兵装不足/兵装の枯渇
┗♦姿勢制御不安定/身体制御の難易度上昇(小)
■朽ち果てた再起動体
┣♦蝕まれた体/【物耐】・【魔耐】激減
┗♦朽ち果てた体/【装甲】激減
■歪み撓んだ古代骨格
┣♦歪んだ骨格/身体制御の難易度上昇(小)
┣♦撓んだ骨格/身体制御の難易度上昇(中)
┗♦折れた骨格/身体制御の難易度上昇(大)
■蘇りし遥か昔の悪夢
┣♦破損した古代の記憶/メモリー損傷(大)
┣♦喪われた技術の記憶/一部スキル使用不可
┣♦古代の悪意/MP自動回復速度低下(中)
┗♦激戦の爪痕/身体制御の難易度上昇(大)
■不完全なる古修復跡
┣♦片腕欠損(右腕)/右腕使用不可
┣♦背部損傷(中)/背部ブースター使用不可
┣♦劣化した装甲/【装甲】激減
┗♦自動修復機能損傷/自動修復機能完全停止
■植物に侵されし絡繰
┣♦火炎嫌悪/【火属性耐性】激減
┣♦システム不安定/搭載支援システム弱体化
┣♦入り込んだ根/一部機能使用不可
┗♦締め付けられた関節/身体制御の難易度上昇(中)
■残された命令の残滓
┣♦破壊衝動/【精神】激減
┣♦揺れ動く照準/ターゲット機能の不具合
┗♦意図しない動作/身体制御の難易度上昇(中)
■凄惨なる古代の呪怨
┣♦逃れられぬ呪い/被ダメージ増加(大)
┣♦震える指先/【器用】激減
┣♦竦む歪足/【速度】激減
┗♦過去からの視線/【運気】激減
■大破せし古代の武装
┣♦砕けた剣/古代の剣使用不可・【筋力】激減
┣♦破れた盾/古代の盾使用不可・【装甲】激減
┣♦折れた銃/古代の盾使用不可・【器用】激減
┣♦曲った杖/古代の杖使用不可・【魔力】激減
┗♦褪せた書/古代の書使用不可・【精神】激減
★創造主からの置手紙
┣♦機神の呟き/【絡繰兵・一兵卒】から開始
┣♦機神の囁き/幻聴・幻覚(特大)
┣♦機神の口遊/パーティ機能使用不可
┣♦機神の願い/この世界に絶望を与えよ
┣♦機神の懇願/この世界に混沌を与えよ
┗♦機神の慟哭/上記全ての恩寵を得よ
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「うーん、改めて見ると、やっぱり酷いですね……」
素直な感想が口から漏れた。
今までも分かっていたさ。自分がまともな状態でゲームを開始していないことくらい、嫌というほど理解している。本来ならシステムに許されたはずのパーティすら組めないしね。
こうして恩寵一覧として並べられると、もはや悪意の展示会である。まともだと言える部分が一欠片も無いではないか。
「む、酷いとは心外だ」
サクスザント様は、まったく傷ついていない顔で言った。
「我の愛が深ければ深いほど、試練もまた深くなるのよ。お主に注いだ寵愛の量を思えば、この程度はむしろ品よく纏まっておる」
「品よく……?」
私は思わず復唱した。
この一覧を見て品がいいと思えるなら、機神基準の品性はだいぶ危険だ。
《覚醒と共に当機に現出した幾つかの恩寵は、あなたが選択したものとログで確認できます》
「正論で刺すのやめてもらえる?」
《事実の報告です》
逃げ道を塞ぐのが上手い。あなたも機神様の子だものね。
横に立つロヨンは、ウィンドウを直接読めているのか、それとも私たちの反応から察しているのか、顔色を忙しなく変えていた。
サクスザント様はウィンドウを眺める私の周囲をゆっくりと漂い、まるでイタズラするかのような顔で表示された恩寵名を一つずつを指さした。小さな指が宙を滑るたび、水晶板の文字が淡く光るのは、この御方仕様ですか?
「表示だけを見れば、確かに悪趣味に見えるな」
「自覚はあるんですか」
サクスザント様は満足そうに頷いた。
決して褒めてはいない。だが、機神様が楽しそうならそれでいいのかもしれない。少なくとも、ここで彼女の機嫌を損ねる理由はないし。
彼女はそこで、ふっと表情を変えた。
笑っているようにも見えるし、考え込んでいるようにも見える。その人形めいた美しい顔から感情を読むのは難しいが、その美しい瞳だけは、先ほどよりもずっと深く私の内面を覗いているようだった。
「一覧だけでは足りぬな。お主自身も、そこの支援AIも、見えているものには限りがある。今この身が、どこまで試練を揺らしているのか。そこは我が直に見てやろう」
「直に、ですか」
「そう怖がるでない、我が寵児よ。お主は我の被造物だぞ。どの部品がどこで軋み、どの傷がどこまで塞がり、どの呪いがまだ絡みついているかなど、我に隠しきれるものではない」
サクスザント様はそう言って、軽く指を鳴らした。
ぱちん。
乾いた音が神殿の中に小さく響く。
すると、彼女の人差し指の先に、淡い水色の光が灯った。炎のように忙しなく揺れるものではなく、小さな星をそのまま閉じ込めたような、なんとも儚い光だった。
「動くでないぞ」
「は、はい」
サクスザント様は私の前まで滑るように近づき、その光る指先を、つん、と私の額に当てた。額に触れたのは、柔らかな指先の感触だけだった。
「?」
特にこれといって何も感じないが、サクスザント様は目を細めたまま、しばらく黙っているのみだ。
軽い確認だと言っていたはずなのに、その沈黙は妙に長く感じられる。ロヨンも息を潜めている。神殿の白い床に落ちた彼の影が、緊張をそのまま形にしたようにジッと動かなかった。
「……ふむ」
サクスザント様が小さく頷く。
「なるほど、なるほど。上から眺めていただけでは詳しく分からなかったが、随分と食わせたものだな。色々な時代の機械部品に、統一性の無い魔物の素材、鉱石、それに噛み合いを考慮していない機構と、実に機神の寵児らしいではないか!」
なにやらご機嫌な様子だ。私は彼女の望むだけの冒険をできていたということだろうか。しかし、
「それ、褒められているんですよね?」
「うむ、かなり褒めておるぞ」
なら素直に受け取っておこう。
その間も、サクスザント様の指先はずっと額に触れているけれど、私自身にはいったい何が見られているのか分からなかった。
「古びて朽ちた箇所は、想定以上に削ぎ落とされておるな。放置され、瘴気に晒され、錆び、腐り、グズグズに崩れた傷は深かったはずだが、揺り籠で多少はマシになっていたのか……」
私がこのゲームを開始する前の話だろうな。揺り籠と言えば、今でも私のインベントリに眠っているあの大きな箱のことだろうか?
「優れた素材と機構を取り込み続けたことも大きいか。加えて、やはり最適化だな。あれが内側の詰まりをかなり解いている」
サクスザント様は、今度こそ私の額から指を離したが、点った光は消えない。彼女の指先に残ったまま、ウィンドウの文字へ向けられる。
■朽ち果てた再起動体。
その文字が水面のようにプルプルと揺れた。
「それから、古代骨格の歪みと撓み。これも随分と直ったな。最適化で随分と整頓されている。元の骨格そのものはまだ傷んでおるが、これも直に癒えよう。こちらも克服と見てよい」
「え」
思わず間抜けな声が出た。サクスザント様は、あまりにも軽く言った。まるで、棚の上に置いた小物を二つほど片付けるくらいの調子だ。
「そなた、恩寵を克服できるぞ?」
「えっと……今、ですか?」
「今だ」
嘘だろう?もちろん〈火炎嫌悪〉や身体制御難易度に関する部分はかなり克服できていた自覚があったが、そちらではなく、むしろずっと気にかけていた装甲の方が……。
それに、今?もう?ここで克服できてしまうのですか?
「そんな、急に?」
「なに、急ではない。お主は目覚めてからここまで、壊れた機体で歩き、戦闘や探索で得た物を取り込み続けできたではないか。大神殿に身を置いたことで、古く絡みついていた瘴気の濁りもだいぶ薄れておる。条件は既に揃っていた。たった今、我がそれを追認しただけのことだ」
「追認しただけで、そんなにあっさり……」
「我の寵児なら、この程度は容易かったか?」
サクスザント様はさらりと言った。
いや、全くもって容易ではなかった。
なんせ開始直後からだいたい一週間は、あのビルの上の空き部屋で歩行練習していたんだぞ?階段を下るにも四つん這いになって、なんと情けなかったことか。誰かに見られていたらと思うと、死にたくなっていたに違いない。ん?御一方居らっしゃる……ん、何でもない。
銀索蜘蛛との戦闘は普通に死ぬかと思ったし、溶岩蜥蜴の火も最悪だったし、ああそれから旅人五人組との戦闘も完全に面倒な出来事だった。ここまで来るために何度も壊れかけているしさ。
ただ、それを今さら一つずつ説明する前に、サクスザント様はもう次の動きへ入っていた。
「よし、行くぞ」
「え、ちょっと待ってください。まだ心の準備が」
「必要ない。これは肉体を作り替える儀式ではなく、既に変わったものを神の名において認める手続きだ。お主の内に新たな臓器を生やすわけでも、突然腕を増やすわけでもない。安心しろ」
「それは安心していいんですかね」
《確認します。現在、機体内部に未知の構造物が発生する兆候はありません》
「マリーがそう言うなら……」
「では往くぞ!」
凄絶な表情を浮かべをたサクスザント様が、左腕を大きく振りかぶってその指先を二度にわたり宙を走らせた。
水晶のようなウィンドウの表面に、細いサクス文字が連なっていく。まるで既に記録されていた事実に、正式な認印が押されていくようだった。
次の瞬間、視界に新たなシステムログが開く。
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【恩寵の試練を克服しました】
■朽ち果てた再起動体
┣♦蝕まれた体/【物耐】・【魔耐】激減
┗♦朽ち果てた体/【装甲】激減
【克服判定】
・長期放置による機体腐朽状態の改善を確認
・複数素材、機械部品、魔石、特殊機構の吸収同化履歴を確認
・特殊リアクター補助機構との結合を確認
・深層伝達補助機構の十分な定着を確認
・最適化による内部機構整理を確認
・神聖領域内滞在による残留瘴気の低下を確認
・機神サクスザントによる承認を確認
【恩寵の試練が加護へ昇華しました】
■朽ち果てた再起動体
↓
■再鋳されし神造躯体
【加護効果】
・【物耐】激減補正を解除
・【魔耐】激減補正を解除
・【装甲】激減補正を解除
・【物耐】に超極大補正
・【魔耐】に超極大補正
・【装甲】に超極大補正
・吸収同化済み機構の定着安定性を大幅に上昇
・機械系素材による補修効率を大幅に上昇
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続けて、二枚目の表示が重なる。
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【恩寵の試練を克服しました】
■歪み撓んだ古代骨格
┣♦歪んだ骨格/身体制御の難易度上昇(小)
┣♦撓んだ骨格/身体制御の難易度上昇(中)
┗♦折れた骨格/身体制御の難易度上昇(大)
【克服判定】
・最適化によるコア機構の整理を確認
・最適化による継続的な補修を確認
・戦闘、探索、高負荷行動下での持続的な運用を確認
・機神サクスザントによる承認を確認
【恩寵の試練が加護へ昇華しました】
■歪み撓んだ古代骨格
↓
■抗い堪忍ぶ古代骨格
【加護効果】
・身体制御の難易度上昇(小)を解除
・身体制御の難易度上昇(中)を解除
・身体制御の難易度上昇(大)を解除
・身体制御を超極大補正
・精密動作時の意識と動作のずれを大幅に軽減
・姿勢保持、踏み込み、重心移動への補正を大幅に上昇
・高負荷行動時の制御乱れを大幅に軽減
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私はしばらく、表示を見つめたまま固まった。
えー、っと?
かなり……強い?それも、分かりやすく強い。
物耐、魔耐、装甲の激減補正が解除されるだけでも大きいのに、そこへ大幅な上昇補正が乗る。単純にカッチカチになり、生存能力が跳ね上がることだろう。今までなら直撃すれば終わっていたような攻撃を、受け切れるようになるかもしれない。
いや、受けたくはないけれど。
そして、古代骨格の方もかなりまずいことになっているようだ。
身体制御難易度上昇の小、中、大がまとめて消え、さらに制御補正が大幅に上がっている。
サクスザント様にその効果を窺うと、どうやら私の想定していたものとは異なっているようだ。
というのも、これまで私は、自分の体が朽ちた機械の体だから動かしにくいのだと思っていた。右腕がなく、右目がなく、重量配分もおかしいのそこに拍車をかけていただろう。機械の体とはそういうものだと、どこかで納得していた。
だが、どうやら違ったらしい。
この超害悪デバフがお仕事をしていた結果、私の体が思うように動かなかったようだ。それが改善されたということは、である。
私はその場で深く屈み、軽く力を溜める。それを一瞬で解放すると同時に調子を確かめるつもりで跳ね上がってみた。思わず言葉を失った。
軽く蹴ったはずの床は私の力を何倍にも大きくして押し返し、そのままそれなりの推進力を伴って天井付近にまで飛び上がれてしまった。下を見下ろすと、サクスザント様が笑みを浮かべ、ロヨンが愕然としているのが見える。
現実の自分の体を動かす感覚とは、まるで比較にならない。本来、人間の体はもっと鈍いはずだ。身体能力も反射神経も、もっと曖昧で、もっと大雑把だ。しかし今の私は、この体を動かそうと思ったその線を、綺麗にそのままなぞれる。
これまでも、戦えていた。もちろん多少の苦労はあったけれども、そのいずれをも何とか乗り越えてきた。銀索蜘蛛を倒し、瘴人を倒し、旅人も倒した。
だから、自分の動きはかなり改善されていると思っていた。あれで十分に戦闘可能だと、そう判断していた。けれども、今の感覚を知った後では、まるで重い鎖を引きずりながら動いていたようなものだろう。
「……いや、嘘だろ」
思わず声が漏れた。
《機体反応を再評価。身体制御関連の補正値が大幅に変化しています。現在の応答性は、これまでの記録と比較して異常な水準で改善しています》
「マリー、これ、私が驚きすぎてるだけじゃないよね」
《はい。主観的錯覚ではありません。実数を鑑みても、異常な上昇幅だと言えます》
「だよね」
同時に、少しだけぞっとした。
恩寵が二つ加護へ転じただけで、これほどまでに違うのか、と。本来のエクス・マキナ・アポカリプスがどれほどの存在だったのか。それを想像するだけで、口元が勝手に吊り上がりそうになる。
そのまま自由落下し、軽やかに嫡子することができた。うん、素晴らしい。
「お主、今かなり悪い顔をしておるぞ?」
サクスザント様が楽しそうに言った。
「おっと、失礼しました」
「謝る必要はない。我はそういう顔も嫌いではない」
「たしかに」
先程のあの顔、かなり凄い顔をしていたような。
ロヨンは震える声で呟いた。
「恩寵が、二つも……。しかも、神御自らの承認により……」
彼の目はほとんど潤んでいた。研究者としての興奮と信徒としての感動が、顔の上で盛大に衝突している。サクスザント様はそんなロヨンをちらりと見て、それから私へ視線を戻した。
「とはいえ、まだまあまあだな」
「えっと、これで、まあまあですか?十分に強力な力を得られたかと思っていたのですが……」
「当然だろう。お主はまだ右腕も右目も欠けたままだ。背の翼も眠り、古き武装も死に、自動で己を癒す機能すらまともに動いておらぬ。今のは、朽ちた体がようやく体裁を取り戻し、曲がった骨格が少し真っ直ぐになったというだけだ」
「う、たしかにその通りですね」
「我が寵児よ。お主の本来を思えば、まだ影の端を撫でた程度にすぎぬ」
その言い方は、たぶん慰めではない。だが、私にとっては十分な激励だ。
「なるほど」
サクスザント様は、私の顔をジッと見つめ、その小さな口を開いた。
「かつてのそなたは、幾千幾万の勇者を撫で切りにするだけの力を秘めていたのだぞ?多少動きが良くなった程度で、そんなに大はしゃぎされては困る。まだまだその身に眠る力を呼び覚まして貰わないとな」
サクスザント様がにやりと笑う。
「無茶もよい。悪巧みもよい。お主が壊れず、止まらず、歩き続けるならばな。ただし、努努忘れないで欲しい。我が願いは、ずっと変わっていないゆえ」
「心得ています」
「ならば励め。我が寵児よ。絶望と混沌を齎すには、まずその身を使いこなさねば話にならぬ」
祭壇の光が、静かに薄れていく。
それに合わせて、サクスザント様の気配がゆっくりと宙へと霧散していくのが分かった。手足の先から光の粒子が舞い、その影が淡く消えていく。
「む、そろそろ時間のようだ。いつも見守っているぞ、我が愛しの寵児よ。それに、我が神官もな」
「その宿願を成就させるべく、ひたすらに励みましょう」
「うむ。そなたに助言を一つ。仲間を集めよ。二人ではできることもできまい」
その通りだ。今はさすがに手が足りて無さすぎる。その余裕が無かったと言えばそれまでだが、とはいえ少ない。当面の目標は、サクスザント様の助言に従い、仲間集めにしようか。
「ではな。また逢おう」
そういうと、まるで元よりそこには何も存在しなかったかのようにその気配を消してしまった。嵐のような時間だったな。
……ん?
横を見ると、ロヨンが立ったまま気絶していた。どうやら自身が崇め奉る神に激励を貰った結果、ショートしてしまったようだ。
「何をしているんだいったい……」
小さくぼやき、とりあえず客間の一つに放り込んだ。
私も手頃な客間を拝借し、誂えられたベッドの上に横になる。仲間、仲間か……。
そのことを考えた瞬間、復元された神殿の清らかな空気の中で、私は自分でも少しだけ悪い笑みを浮かべていた。
ということで、ルイスくん念願の恩寵の克服が叶いましたね。振り返ってみると、長い道のりでした。
多くの苦労があったので、その喜びも一入でしょう。ただ、まだまだ機神の宿願には程遠く、といったところですね。
また、改めて最新のステータスは人物紹介の方に記載することとしますので、お楽しみに。




