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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ
第三章▼恩寵の克服▼

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第68話『ロヨンと小手調べ』

 明日は、スパーズとOKCのゲーム7ですね!


 とても楽しみです。

 目覚めたロヨンと今後の話し合いをしているが、その内容はサクスザント様の助言の通り、如何にして多くの仲間を集めるか、という点で難航している。


 というのも、この世界に根を張って長いロヨンに気心の知れた知人が少ないことが原因の一つであった。僅かに残っていた縁も、地下空間に囚われている間に疎遠となってしまい、今では手紙のやり取りもないようだ。


 まあ、それは当然のことでもある。私との度を行う上で、一度も大きな都市に寄っていないので、そこは仕方あるまい。


 がしかし、一人も居ないというのだから、驚いてしまったではないか。


 「ルイス殿、覚えておくと良いですぞ。人との繋がりなど、簡単な切欠一つで途切れてしまうほど儚いものなのですよ。儂を反面教師に、友との連絡は欠かさないよう気を付けてくださいませ……」


 そう悲しい顔をするな、ロヨンよ。分かったよ、そうだな、改めて知人一同に季節の挨拶でも送るか。


 「って、ああ、私には心当たりがあるではないか。モリアに、林さんなんかは声をかければあるいは……」


 「ん?ご知り合いが居らっしゃるので?」


 「そうだね、何人かの旅人とは知り合いなんだ。そうだ、彼らに声をかけよう」


 私がそう言うと、彼は嬉しそうに口角を上げた。どうやら昨日の一件を受けてか、この〈アイランド〉内ではガスマスクは外しておくどのことだ。


 そもそもなぜガスマスクなんかを四六時中付けているのかと尋ねたところ、もはや癖のようなものであり、特に明確な理由はないとの事だった。


 その目的上、危険な地に足を踏み入れることがしばしばあったため、その対策に行っていた週間のようなものだったらしいが、気が付けばそれが身に染み付いていたらしい。


 まあ、地下暮らしではたしかにアレコレと気になるのも理解はできる。


 そんなことを考えている間にも、私はフレンド欄から幾人かの知人にメッセージを送った。このフレンドたちは、同じ施設で育った友人たちや、その他の私の数少ない知人などがいる。


 中でもこの人には是非来て欲しいと思っているのが、モリアと林さんだ。


 モリアは元よりこのゲームを楽しみ尽くすことを宣言していたので、今ではかなりの強さになっていることだろう。


 それにその性格も私たちとウマが合う気がする。データマンチであると同時にバトルジャンキーなので、戦いの多いであろう私たちの旅路には、ピッタリだ。


 林さんはその強さこそ未知数だが、メンタリティやゲームに対する向き合い方などは私も認めるところであり、機会があれば是非一緒にゲームがしたいと思っていた。


 最近はGoAにもよくログインしているようなので、もしかしたらと思っている。


 その他にも何人かの知り合いにメッセージを送った。十人にも満たないが、皆一癖も二癖もある変わり者たちなので、是非とも共に暴れたいものである。


 「よし、終わりっと。ロヨン、どうだろう、生まれ変わった私の小手調べに付き合う気はないかい?」


 作業を終えた私が尋ねると、彼は嬉しそうに快諾した。


「〈アイランド〉にはちょうど広い土地が余っておりましたからな。折角ならそこを利用するとしましょう」


 彼の言葉に従い、共に大神殿の外に出て、かなり広めの空き地へと向かった。


 大きな空き地の大地魔法で土に大きな跡をつけ、簡易的なフィールドを作る。ここから出たら負け、という簡単なルールだ。それから、互いに致命傷になりうる危険な攻撃は避けること。ルールはそれくらいだ。


「準備は宜しいですかな?」


「いつでもどうぞ」


 ゴングの音が響いた気がした。


 最初に動き出したのは、杖の先に数多くの水球を浮かべたロヨンだ。その口調からは想像もできない程の俊敏な動きで私に駆け寄ると、一気に跳躍し、空中から無数の水弾を放ってくる。


 以前の私ならば一溜りもない攻撃であったが、恩寵の試練が加護へと昇華した今、その程度の攻撃ではダメージすら負わないだろう。


 目にも止まらない猛スピードで駆け抜ける弾の軌道をマリーと共に正確に分析し、それぞれを適切な形で叩き落していく。上下左右、更にはその奥にと、老練な工夫が施された致命の技術を、機体性能で押し退けていく。


 「どうしたロヨン、手加減は不要だよ?」


 私が煽るように叫ぶと、彼もそれが煽りと分かってなお乗ってくる。


「そうですか、ならば!これはどうですかなあ!」


 水弾の弾幕が晴れると、そこには鋭く尖った氷の鏃が見えた。それがゆっくりと回転を始め、次第に強烈な回転へとなった。凄まじい轟音を伴って回転するそれは、とんでもない速さでもって打ち出された。


 あれはまずいな。当たれば私でもどうなるか分からない。この体の調子を確かめるという意味では受けてやっても良いのだろうが、それよりもむしろ抗ってみたくなった。


 私は絶好調になった頭で、強烈に地面がひっくり返る姿をイメージする。捲り上がる大地、ポロポロもこぼれ落ちる土と砂、氷の鏃の衝突に耐える大地の盾を!


 「大地よ!盾となれ!」


 私の念に応えてか、目の前の地面がぶわりと隆起し、そのまま壁となって立ちはだかった。胴ほどの厚さで、ゴブリンなど何匹でも推し潰せそうな大きさだ。


 その壁が生まれたまさにその瞬間、氷の鏃が土壁に激突した。私とリンクしているからか、その土壁がゆっくりと穿たれているのがハッキリと分かった。


 完全に押し負けている……!


 今回の恩寵に関する一連の流れの中で、魔法の制御に関するバフは一つも無かったから仕方がないが、こればっかりは年の功だ。だが、そう易々と引き下がるつもりは毛頭ないんだよ!


 私はリアクターから生み出されるエネルギーの多くを土壁へと注ぎ込み、その強度を保つと同時に補修していく。


 ロヨンは宙へ浮いたまま、杖の先をこちらへ向けていた。白い髭が風に揺れ、長い袖の内側から冷気が薄く漏れている。


 私は土壁の維持に回していたエネルギーの配分を切り替える。


《警告。土壁の構造強度が急速に低下します》


「いや、それでいい」


 リアクターから流していた出力を止めると、壁の内側でかろうじて噛み合っていた土と石の粒が一斉に緩んだ。代わりに、壁へ残していたエネルギーを吸い上げる。


 ロヨンはすでに地面へ降りている。氷の鏃を撃ち込んだ直後、こちらの状態を確認するためか、杖を構えたまま一歩分だけ姿勢を低くしていた。


 おそらく彼は、土壁ごと私を押し潰すつもりで撃ったわけではない。強度を見て、動き方を見て、私がどう防ぐかを確かめている。訓練である以上、殺しに来ているわけではないのだろう。


 だが、こちらとしてはその余裕に乗らせてもらおうか!


 私は崩れかけた土壁の影へ滑り込んだ。足先が地面を掴む。壁の強度が低下したことを受け、氷の鏃が土壁を突き抜けた。


 破片が頬の横を飛び、氷の先端がすぐ隣を通過する。冷気が装甲の表面を撫でたが、私の体には届かない。崩れかけた土壁の陰と、鏃の角度。そのわずかな隙間へ、私は身を押し込んでいた。


 壁が砕ける。


 乾いた土の塊がばらばらに落ち、足元から大量の砂煙が巻き上がった。視界の端が褐色に染まる。ロヨンから見れば、土壁が壊れ、氷が貫き、私の姿が煙に沈んだように見えるだろう。


「……む?」


 ロヨンの声が、砂煙の向こうでわずかに揺れた。


 私はその声を合図に、地を蹴った。


 恩寵の克服で得た身体制御の補正は、想像以上に凶悪だった。足裏が地面を押す。膝が沈み、腰が前へ出て、背部から首までが一本の軌道に乗る。右腕が欠けているせいで重心はまだ偏るが、それすら計算に入れた動きが自然に組み上がる。


 砂煙を裂いて、私はロヨンへ突っ込んだ。


 距離が一気に潰れる。ロヨンの目が細くなるのが分かった。彼は杖を横へ回したが、こちらの踏み込みの方がわずかに早い。


 左拳を力一杯握る。その胸、借り受けるぞ!


 今の装甲と身体制御なら、ただの拳でも十分な武器になり得る。


「貰ったあ!」


 私はロヨンの胴へ拳を叩き込む。その直前、どういうわけか急に加速して杖が割り込んできた。


 カンと乾いた音が鳴る。私の拳はロヨンの体ではなく、古びた杖の側面へぶつかった。手応えは予想以上に軽い。そのまま斜めへ滑らされている。


「おお、速い速い」


 ロヨンが笑った。


 次の瞬間、杖の先がくるりと回り、私の手首の下へ潜り込む。そこから梃子のように持ち上げられ、重心が浮いた。体勢を立て直すより早く、杖尻が私の腹部装甲を軽く押す。


 それだけで、私は数歩分後ろへ弾かれた。


 足裏が地面を削る。右腕の欠落で引っ張られた姿勢を、左脚と腰の動きだけで戻す。砂の上に二本の跡を残し、私は膝を沈めて止まった。


「……今の、どういう技だ?」


「今のルイス殿を正面から受ければ、儂の骨が先に悲鳴を上げますからな。勢いは逃がすに限ります」


「そんな歳でも無いだろう」


 私は左手を開閉しながら、ロヨンを見やる。拳には衝撃の名残が残っているが、壊れた様子はない。加護で上がった装甲と物理耐性は、確かに仕事をしているらしい。


 ロヨンは杖を肩に乗せ、口元に笑みを浮かべていた。老人の口調だが、その体は年若い青年のそれだ。今の受け流しは口調に似合う完全に達人のそれだった。このチグハグ野郎め。


「しかし、まこと見事でございます。先ほどまでの動きとは別物ですな。踏み込み、体の傾き、腕の振り。どれも無駄が減っておりまする」


「自分でも驚いてるよ。今まで、よくあの状態で戦っていたなと思うくらいだ」


《同意します。過去の戦闘記録と比較し、現在の身体応答は大幅に改善しています》


「マリーのお墨付きも出た」


「それは重畳。では、もう少し続けましょうか」


 ロヨンが改めて杖を構え直す。


 その先端に、薄い霜が集まった。地面に落ちていた砂粒が冷気を浴びて白く変わり、杖の周囲を小さな氷片が漂う。


「少々押しますぞ」


「望むところだ」


 私は低く構えた。


 ロヨンの杖が振られる。地面から氷の柱が斜めに伸び、私の進路を塞いだ。私はその横をすり抜ける。続けて左から氷弾。上から細い鏃。足元では霜が広がり、踏み込みの場所を潰そうとしてくる。


 ロヨンは私を傷つけるより、動ける場所を狭めることで詰ませようとしているようだ。こちらが速くなった分、その速度を活かす空間を削りに来ていた。


「やりづらいな、本当に!」


「褒め言葉として受け取りますぞ!」


 私は氷柱の側面を蹴った。硬い氷に足裏がかかり、体が横へ跳ぶ。そのまま崩れた土壁の残骸へ着地し、別の角度から低い姿勢で駆ける。ロヨンの視線がこちらを追う。杖の先が動く。


 その瞬間、私は足元の大地を蹴り砕いた。


 土と石の欠片が飛び散る。ロヨンの視界が一瞬だけ乱れると、私はその隙に真正面ではなく斜め後ろへ回り込む軌道を選んだ。


《左脚部への負荷、許容範囲内》


「なら、もう一段」


 踏み込みを重ねる。地面を蹴る音が短く連続し、体が加速した。視界の流れが早い。だが、以前のような焦りは生まれない。自分の体がどこを通り、次にどこへ足を置けるかが分かる。これまで曖昧だった動作の線が、驚くほどはっきりと見えている。


 ロヨンの背後へ回り込んだ私は、左拳ではなく、肩からぶつかりにいった。いわゆるタックルというやつだ。


 受けづらい角度のはずだった。


 だが、ロヨンは振り向きもしないまま杖を地面へ突いた。足元から丸い氷の壁が花びらのように広がり、私の肩を受け止める。衝突の直後、氷壁が砕けた。砕けた氷片の向こうで、ロヨンが半身だけ振り返る。


「よい判断ですな」


「これも読まれるか!」


「年寄りは経験で食っておりますゆえ」


 ロヨンの杖が軽く跳ねた。


 今度は足元から氷の蔓のようなものが伸びる。私は左脚を引き、絡め取られる前に飛び退く。その着地点へ、細い氷の矢が三本並んで突き立った。


 うん、いやらしい。なんだこれ、まるで手が出せない。


 私は思わず笑いそうになった。こういう相手は面白い。真正面から殴るだけでは崩れない。速くなった体を使っても、考えなしに踏み込めば容易にいなされる。


 いい訓練になるだろう。だったら、こちらももっと汚く行こうか。


 私は地面に残った氷片を蹴り上げた。細かな氷が光を散らす。その奥から、左手を地面へかざす。


「土壁」


 小さな土壁を二枚だけ起こす。巨大な防壁ではなく、ロヨンの視線と杖の軌道を、ほんの一瞬だけ隠すための薄い壁だ。


 同時に私は横へ跳ぶ。


 ロヨンの杖が一枚目を砕き、二枚目を避けてこちらへ向く。やはり反応が早いな。杖先がこちらを捉えるより一拍だけ早く、私はロヨンの足元へ滑り込んだ。


 拳を振るう。


 ロヨンは杖を縦に落として受けた。今度は受け流しではなく、きちんと止めに来た。氷の補強が杖の表面を覆い、私の拳とぶつかって白い粉を散らす。


 衝撃が返ってくる。


 腕が押し戻される前に、私は膝を上げた。拳を囮にし、下から膝を入れる。だが、ロヨンは片足で地面を叩き、小さな氷の段差を作って自分の体を後ろへ滑らせた。


 私と同じような手を使ってきた。結果、膝は空を切る。


「おお、今のは少し危なかったですぞ」


「……少し?」


「ええ、少し」


 にこにこと言われると、妙に腹立たしい。


 私は着地し、追撃へ移る。ロヨンは下がりながら杖を回し、氷弾を三つ放った。私は一つ目を避け、二つ目を左腕で弾き、三つ目を肩で受ける。砕けた氷が装甲に散る。衝撃はあるが、動きは止まらない。


《物理耐性および装甲補正が有効に機能しています》


「いいね」


 以前なら避けるしかなかった攻撃を、今なら選んで受けられる。これは大きい。受ける場所、角度、次の動作。すべてを計算に入れれば、多少の被弾すら厭わない頑強な鎧だ。


 私は氷弾を肩で割った勢いのまま踏み込み、ロヨンへ手を伸ばした。


 あと一歩。


 そこでロヨンの足元から、霜ではなく水のような薄い膜が広がった。氷が地面の表面だけを滑らかに覆る。私の足裏が一瞬だけ滑った。


「うお」


 姿勢が崩れる。だが、転びはしない。左手を地面へ突き、体をひねる。滑った足を利用して、そのまま前方向への低い回転へ変えた。


 ロヨンの目が楽しげに細まる。


「ほう」


 私は回転の勢いで脚を振り、ただ突っ立っているロヨンへと足元を振るう。杖が地面を打つ音がした。ロヨンの体がふわりと浮く。蹴りを避けた彼は、そのまま空中で身をひねり、私の背後へ軽く降りた。


 そして、杖尻が私の背中に触れる。


「ここまで、ですかな」


 私は動きを止めた。


 背中に触れている杖から、冷気がじわりと広がる。もしこれが実戦なら、氷の槍が背部装甲を叩いていたか、関節の隙間を凍らされていたか。どちらにせよ、かなり面倒な結果になっていただろう。


「……くそ、負けたか」


「勝ち負けで言うなら、儂の経験が少しばかり上回っただけにございます。今の成長幅を思えば、次はどうなるか分かりませぬぞ」


 ロヨンは杖を引き、楽しそうに笑った。


 私は立ち上がり、左肩に付いた氷の粉を払う。砂と氷と土が混じり、訓練場代わりに使っていた神殿前の広場はなかなか酷い有様になっていた。せっかく復元された神域で何をしているのか、と少し思わなくもない。


 まあ、ここは大地魔法の領分だ。私は大地に左手をつけ、元に戻るようイメージしながら魔力を込めた。すると、大地がぐにゃりとうねり、まるで何事も無かったかのように元の姿へと変じた。


「そうだ、ロヨン。恩寵を二つ克服した影響を見たかったんだけど、どうだったかな?」


「ルイス殿」


 ロヨンはやけに真面目な声で言った。


「これは成長というより、もはや進化でございます」


「そこまで?」


「そこまでにございます。先ほどの速度、姿勢の安定、回避からの攻撃への切り替え、防御を捨てずに前へ出る判断。どれを取っても、昨日までのルイス殿とは別物です。もちろん、欠けた右腕や右目、背部の損傷など、未だ補うべき点は多くございましょう。されど、器の歪みが正され、朽ちていた外殻に鋼鉄の芯が戻った。その差は、外から見ても明らかですぞ」


 そこまで言われると、なんだか少しむず痒いではないか。


 ようやくかあ。ゲーム開始からずっと、壊れた体をどうにか誤魔化して突き進んできた。その結果が、こうして形になっている。


「なるほど。進化か」


《表現としては概ね妥当です。恩寵克服前後の機体性能差は、単なる微修正の範囲を超えています》


「マリーまで言うなら、そうなんだろうね」


 この体は、まだ完成には遠い。サクスザント様が言っていた通り、右腕も右目も失ったままだ。背部のブースターも眠っているし、古代の武装も使えない。自動修復も戻っていない。


 過去に勇者を屠った頃と比べれば、なんてことはない成長なのかもしれないね。とはいえ、だ。絶望と混沌を齎すには、まずこの身を使いこなすことだ。


 サクスザント様の言葉が、頭の内側で静かに残っている。目的が明確だと、次にやるべきことも見えやすい。


「よし、訓練としては十分かな」


「ええ。儂としても、大変貴重なものを見せていただきました。神御自らの承認によって加護へ転じた恩寵、その実戦挙動を間近で観察できるなど、普通なら一族の記録に残して三代語れるほどの出来事にございます」


「三代で足りる?」


「足りませぬな」


「そ、そうか」


 ロヨンは真面目な顔で頷いた。


 この老人、研究と信仰が絡むとたまに妙な方向へ振り切れる。


「ロヨン」


「はい」


「風呂とか浴場に当たる場所はあるかな」


 ロヨンは一瞬だけ固まった。


「……風呂、でございますか」


「うん。水場でもいい。できれば体を洗える場所。さすがにこのまま神殿の中を歩き回るのは気が引けるよ」


《同意します。関節部への微細な土砂混入を確認。洗浄、または簡易清掃を推奨します》


「マリーもこう言っている」


 ロヨンは少し考え込み、辺りを見渡した。


「……まあ、無ければ儂の魔法で何とかしましょうか」


「そうだね」


 そうして二人並んで神殿へと向かった。

 戦闘シーンを描く時は、まず頭の中で映像を生み出して、それを文字に起こす。また続きの映像を生み出して、それを文字に起こす、という作業を何度も繰り返していますが、一々作業が止まってしまうのが辛いところです。


 サッと描ける人は凄いなあと、改めて思いました。


 さて、次のお話で第三章はおしまいです。その後は、何話か閑話を投稿し、第四章へ。楽しみにしていただけると幸いです!

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