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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ
第三章▼恩寵の克服▼

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第65話『小島再誕・後編』

 とある読者様がメッセージ機能で報告して下さり、第51話が投稿できていなかったことに先程気が付きました……<(_ _)>


 わざわざカクヨム様の方で確認した方も居らっしゃったようで、本当に申し訳ないです。


 既に投稿済みですので、まだ確認できていないという方が居らっしゃるようでしたら、改めて該当エピソードを確認して頂けますと幸いです。


 感想などでも触れている方が多かったようで、その件に関しても確認が遅れてしまい、申し訳ない気持ちで一杯です(T_T)


 心臓がバクバクして死にそうでした。


 今後は同様の事態が起こらないよう、しっかりと注意して参ります。

 玄関ホールへ戻る頃には、建物の外から聞こえる音が明らかに変わっていた。


 最初は、遠くで石が積まれているようなトットットッという軽い音だった。それが今では、地面の奥から響く低い唸りと、砂が大量に流れるザラザラとした乾いた音、それから水が深い場所へ吸い込まれていくような重い響きに変わっている。


 何かが島の外で大きく動いているようだ。


「……これは、しっかりと確認しないと駄目そうだね」


「ええ。先ほどから足元の震え方が尋常ではありませんぞ。幸いなことに神殿そのものは安定しておりますが、外側の地形が動いておる気配がありますな」


 ロヨンは杖の先で床を軽く叩き、そこから伝わる震動を確かめるように目を細めた。


 普通なら、地形が動くなんて言葉を聞いただけで警戒すべきだろう。なんせこの世界には、それらを起こし得る存在がゴロゴロと眠っているらしいからさ。


 だが、今の私は警戒よりもむしろ期待の方が勝っていた。なにせ、これをやっているのが機神サクスザント様であるからね。少なくとも私たちを害する方向にはならないはずだ。


 きっとね。多分。


 私は美しい装飾が彫られた木製の大扉の前に立ち、それを開きながら外へと向かって一歩踏み出した。


 そして、再び言葉を失った。


「えー、っと……?」


 目の前の景色は、私がこの島へ来た時に見たものとは完全に違っていた。


 まず、どう考えても以前よりもずっと湖が広い。


 いや、広いというより、深くなっているのが一目で分かる。以前のオアシス湖は、緑に囲まれた穏やかな水辺という印象だった。美しくはあったが、オアシスであるので当然浅く、岸辺から中心の島までの距離もそれほど大きくは感じなかった。


 がしかし、今はまったく違う。


 湖面はずっと遠くまで広がり、澄んだ水の下には深い青が沈んでいる。底が見える場所と、まるで夜を閉じ込めたように暗く深い場所がはっきり分かれており、ただ水の量が増えたのではなく、湖底そのものが大きく掘り下げられたのだと理解できた。


 いや、島全体に魔法をかけていたのは見ていたので分かったが、湖も含めてなのか……。


 しかも、その変化はまだ終わっていなかった。


 湖の外周では、全ての方向へ、まるで円を描くかの如く大量の砂が津波のように動いている。


 それは風で流されるといった軽いものではなく、見えない巨大な板で押されたかのように、砂の層そのものが外側へ向かってずるずると運ばれていく。砂は崩れ、盛り上がり、また押され、やがて湖を囲むような壁状の砂丘へ整えられていった。


 まるでブルドーザーが何十台も並んで、湖の周囲を強引に押し広げているようだった。


 湖畔に生えていた草木を避けるように流れ、邪魔になる砂だけを外へ運んでいく。もともと豊かだった緑は、その水と土の動きに合わせるように葉の色を濃くし、花の輪郭をより鮮やかにしていた。


 新しく生まれたというより、元から持っていた生命力を思い出したかのようだ。


 先程の祭壇でも思ったことだが、サクスザント様は植物に関しても特別な力を持っているように感じてならないのだ。私自身の属性もそうだが、今の光景を見て、ますますその実感が強まった。


「これは……湖底を浚っておりますな」


 ロヨンが呆然と呟いた。


「浚う?」


「水底の砂や泥を取り除き、深くしているのですじゃ。ですが、普通なら水は濁り、周囲は泥まみれになりますぞ。それが、この透明さを保ったまま……」


 彼の声は途中で掠れた。


 湖底から削り取られた砂や土砂は、濁流として水中へ舞い上がることなく、光の帯のようなものに包まれて運ばれていた。一部は湖の外側へ押し出され、外周の砂壁へ組み込まれていく。


 そして、その一部はこの島へと向かって来た。


 島の縁に、砂と土砂の流れが静かに集まっている。だが、それは砂浜のように雑に積もるわけではなかった。水際から白い石組みがせり上がり、その奥へ土砂が流し込まれ、圧縮され、固められ、さらにその上から石畳や低い縁石のようなものが形作られていく。


 どうやら、島そのものが少しずつ大きくなっているようだ。ん、やっていること、おかしくないか?


 島の内側に目を向けてみても、私たちの立つ神殿の外周に、大地がうねりつつ新しい余白が生まれていく。湖側へ張り出す歩道。草木を植えるために誂えたかのような区画。小さな水路。


 それから、まだ家が建っているわけではないが、将来的に何かを増やすことを前提にしたような空間が、次々と整えられていった。


「……これ、かなり規模が大きくない?」


《外周地形の変化を確認。島の面積が拡張中です。正確な数値は未計測ですが、現在確認できる範囲だけでも、当初より大幅に拡大しています》


「そりゃそうだろうね」


 浮浪者のような生活を許容できるなら、以前の段階でも数百人くらいなら普通に滞在できそうだったのだ。それが、更にその規模を大きくしている。


 無理をして、畑や貯蔵、施設内部の部屋、外周の余白まで使えば、数千人規模でもどうにかなるかもしれない。もちろん、今ここに街並みができているわけではないし、民家も市場も工房街もないので、QOLはお察しなのだが。


 とはいえ、それらを成せる器が創られているという事実は、もう少し真剣に受け止めなければならないだろう。国とまでは行かないまでも、大きな都市を有することができれば、それだけでその力は絶大であるはずだからね。


 そんな風にして、人が増えた時に受け止められるだけの、余白と基盤が用意されつつあった。


 私は思わず笑ってしまった。


「機神様、随分と盛ったなあ」


「果たしてこれを盛ったなどという言葉で済ませてよいのでしょうか……」


 ロヨンは杖を抱えるように握りながら、湖と島と神殿を忙しなく見比べている。


 神殿からみて右方向の湖側へ伸びる新しい道の先には、小さな桟橋が作られ始めていた。木造ではないようで、どうやら白い石と鈍い銀色の金属が組み合わさった、安定した桟橋だ。


 湖面の高さに合わせて使えるよう、階段状の段差がいくつもあり、縁には船を留めるための金具らしきものが生えていく。


 金具の根元には細いサクス文字が刻まれ、それが湖水に触れるたびに淡く光った。


 反対側では、近未来的なデザインの半屋外の作業場らしき場所も形になっていく。屋根はあるが壁は少なく、風通しが良さそうだ。石の作業台、水を使える洗い場、何らかの素材を干すための棚、細かな部品を並べられそうな平たい台。


 いかにも採取したものを洗い、乾かし、分け、加工前に整理するための場所だ。


 私向けにしか見えない。


「ありがたいけど、完全に私の行動を見越して作ってるよね」


《その可能性は高いと判断します》


「いつも見守られているというのは、なかなか落ち着かないね」


 そう言いながらも、口元は緩んでいたと思う。


 島全体に延びる水路は複数の建物の内外を繋ぎ、湖の水をただ引き込むのではなく、一度細かな石組みの中を通してから畑や植物園へ送っているらしい。サクス文字によって水を浄化しているのか、何かを調整しているのかは分からないが、特殊な処置を施しているらしいというのは理解できた。


 サクス文明らしい技術が、目立ちすぎない形でそこかしこに仕込まれている。かなり大掛かりな改造なの上、きっとこれでも控え目ってところが末恐ろしいよね。


 その気になれば、東京とかにあるような超高層タワーすら作れそうなのに、あくまでもこの島に合わせた石造りに制限してくれているのがせめてもの良心だ。


 やがて、外周の砂壁も形になっていく。


 湖を囲むように積み上げられた砂は、ただの山ではなく、外側は風を受け流すような緩やかな斜面になり、内側は湖へ向かってなだらかに落ちているようだ。ところどころに古い石材のようなものが混ざり、表面を固定するためなのか、細い植物の根が光に導かれるように砂の中へ伸びていった。


 砂漠の中に、まるで湖と島を抱える大きな窪地が作られたようだ。外から見れば、ここはただのオアシスではないと一目で分かるだろう。


「ロヨン、これって……街みたいに扱えると思う?」


「街、ですか」


「いや、まだ家はないし、他に人もいないけどさ。規模と設備を見れば、流石に二人だけで過ごすことを意図して創られているとは考えずらくてさ」


 ロヨンはしばし湖を眺め、次いで拡張された島の外縁を見た。


「条件次第では、十分に拠点として扱えるでしょうな。少なくとも、ただの神殿一つという規模ではありませぬゆえ。豊富な水、畑、貯蔵、居住、祭祀、研究と、その全てが揃いつつある。あとは、そこに人が集まるかどうかですじゃ」


「ふむ、なるほどね」


 ロヨンの言葉に、私は素直に頷いた。


 ここは今後、私にとってかなり重要な場所になるだろう。間違いなくね。機神様の祭壇があり、ロヨンの研究拠点にもなり、私の整備や素材管理にも使える。


 そんなことを考えているうちに、島の変化は終わりへと近づいていった。


 砂の流れが少しずつ弱くなる。湖底を掘る重い震動が遠ざかり、湖面の揺れが静まっていく。外周の砂壁は最後の形を整え、島の縁へ運ばれていた土砂も、白い石組みの奥に収まっていった。


 最後に、神殿の屋根の先端から細い光が立ち上った。


 それは空へ伸びる柱のように一瞬だけ輝き、次いで島全体へ薄く広がる。湖、砂壁、桟橋、畑、庭、作業場、神殿。その全ての輪郭をなぞるように光が走り、最後には中央の大きな建物へ戻っていった。


 終わった。


 そう直感した瞬間、視界の中央にシステムウィンドウが開いた。


 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


【特殊拠点エリアが成立しました】

 ┗一定条件を満たしたことにより、当該エリアに街区管理システムの機能が適用されます。


【中核施設が登録可能です】

 ┗当該エリアの中心施設として、名称を設定してください。


【特殊拠点エリアの名称が未設定です】

 ┗名称を設定してください。


 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


「……ええ、お、おお」


 思わずおかしな声が漏れたではないか!


 やはり、システム側もこの場所をただの建物や遺跡とは見なしていないらしい。街区管理システムの機能、かあ。条件は不明。だが、システムからも拠点のようなものとして認められたと考えて良さそうだ。


 ロヨンもウィンドウが見えているのか、見えていないのか、私の反応を見てただならぬものを感じ取ったようだった。


「ルイス殿、何か?」


「システムメッセージが来た。どうやら、この場所は特殊拠点エリアとして認められたらしい」


「特殊拠点……」


 ロヨンは言葉の意味を噛み締めるように、ゆっくりと呟いた。


「それで、名前を決めろってさ」


「名前、ですか。うーむ、これは重要ですぞ。後世に残るやもしれませぬからな」


「そう言われると逆に決めづらいんだけど」


 私は腕を組もうとして、右腕がないことを思い出し、左手だけで顎のあたりに触れた。


 こういう時、凝った名前を付けようとすると大抵滑るんだよなあ。サクスザント様に縁ある島だから、サクスなんとか。湖があるから、なんとか湖上拠点。機械っぽく、歯車なんとか。


 どれも少し違う。


 もっと雑でいい。私が使う場所なのだから、私が呼びやすければそれでいいだろう。


「島だし……アイランドでいいか」


《名称候補〈アイランド〉を確認。特殊拠点エリア名として設定しますか?》


「する」


 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


【特殊拠点エリア〈アイランド〉が登録されました】


 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


 あまりにもそのままだが、逆に分かりやすい。ポラリスのシステムに表示される名前としても、妙に馴染んでいる気がする。


 問題は中核施設の方だ。


 私は背後に聳える荘厳な建物を見上げた。


 白い石材と淡い色の金属、細かな植物の装飾とサクス文字の光。祭壇、図書館、植物園、居住区画、畑、その他細々とした施設。うん、これは単なる神殿ではなく、研究施設であり、生活拠点であり、機神様の力が色濃く残る大規模な複合施設だ。


 ただ、それでも中心にあるのは祭壇だよね?


 ならば、変に捻る必要はないかな。


「こっちは……そうだね、大サクス神殿、かな」


 口にした瞬間、ロヨンがビクリと震えた。


「大サクス神殿……」


「嫌だった?」


「とんでもない。あまりにも畏れ多く、そしてこの施設に相応しい名ですじゃ」


 彼は目元を押さえるように俯いた。先ほどから感情の振れ幅が大きすぎて大丈夫かと少し心配になるが、まあ無理もない。


《名称候補〈大サクス神殿〉を確認。中核施設名として設定しますか?》


「設定する」


 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


【中核施設〈大サクス神殿〉が登録されました】

 ┗特殊拠点エリア〈アイランド〉の中核施設として認定されました。


【管理権限が付与されました】

 ┗詳細な権限範囲は、施設内の管理設備より確認可能です。


 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


 表示が消えた後も、しばらく私はその場から動けなかった。


 湖は深く広がり、島は拡張され、砂は外周を囲む壁となり、神殿はシステムから中核施設として認められた。


 突然、とんでもない規模の拠点を得た。使いこなせる自信が微塵も湧いてこないのは、どうしてだろうか。


 私はもう一度、湖と島と神殿を見渡した。


「……うん、いいね」


 自然と笑みが浮かぶ。


「ここなら色々と、悪巧みができそうだ」


 ロヨンは静かに頷いた。その横顔には、まだ涙の跡が残っている。彼の視線は、蘇った建物ではなく、その先にある未来を見ているようだった。


 そう、ようやく他の神の眷属を血祭りにあげることができそうだという、暗い未来を。

 GoA執筆の息抜きとして書いた『聖杭と魔王様』を投稿しました。こちらの短編作品はほとんど素案の形に近く、全体を通して本格的に肉付けを行う前の推敲不足な文体ですので、それが逆に新鮮かもしれません。


 それから、スト6にイングリッドが追加されましたね。当方は永遠にシルバーにスタックしているナメクジですのであれですが、ちんまりとしているシルエットが可愛いなと思いました。

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うおおおお!!サクスザント様万歳!!
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