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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ
第二章▼避難所から始まる地下研究所探索▼

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第25話『昇降機に乗って』

 改めて、誤字報告ありがとうございます(T_T)


 これまでに20個ほど修正していますが、まだまだあると思いますので、見つけた方は報告よろしくお願いします!

 

 私の方でもこまめにチェックしているのですが、小さな誤字が隅っこに隠れているので、偶に見逃してしまいます。皆さんのお力が頼りです……

 手に取った資料のタイトルには、「研究者マージスの独白」と書いてあった。


 古びた革表紙に刻まれた文字は、長い年月に晒されて少し擦れている。それでも、題名は妙にはっきりと残っている。


 なにやら物々しい響きだ。


 私は表紙に積もった薄い埃を指先で払い、ゆっくりと捲る。紙は思ったよりも脆くなっておらず、乾いた音を立てながら素直に開いた。そこには、私でも読むことができる美しい文字で、びっしりと文章が書き込まれていた。


 『サンクティンの地下にあるというゲートには、この世界とは異なる世界に繋がる力を持っているらしい。遥か古代に造られたその構造物に使用されている技術を応用すれば、街と街を、国と国を繋ぐ長距離移動用の設備を作れるのではと考えた。予言による災厄の日が目前に迫る今、多くの無辜の民を救うためには、一日でも早くこの理論を完成させることが不可欠である。』


 異なる世界に繋がるゲート、か。


 多くのゲームでいう、ポータルや転移門のような物だろうか。少なくともこのマージスという研究者は、それを単なる神秘や遺物として扱ったのではなく、再現可能な技術として解析しようとしていたらしい。


 これは日記のようにも見えるし、調査記録書のようにも見える。どちらにせよ、個人的な感情と研究者としての視点が混ざり合った、奇妙に熱を帯びた文章だった。


 そして、初めて目にする「予言による災厄の日」という言葉。


 それは、アビステイカーなどによる襲撃を示唆しているようにも見える。あるいは、機神様による絶望と混沌を指しているのだろうか。ここの記述だけでは情報不足で判別できない。


 ただ、少なくとも一つだけ分かる。


 この時代の人々は、間違いなく何かが来ることを知っていた。


 私は思わず周囲を見回した。朽ちた研究室。崩れかけた棚。乾ききった床に散る紙片。何かから逃げ出すように放置された器具の数々。


 それらはすべて、ここにいた人々が最後まで落ち着いて研究を続けられたわけではないのだと、無言で告げているようだった。


 もう少し読み進めるべきだろう。


 『私が思うに、あのゲートは今よりもずっと古に栄えたとされる、サクス文明の時代の物ではないだろうか。精巧な彫刻は一見ただの装飾に見えるが、その模様が全くの無意味だとは到底思えない上、なにやら不思議な力を感じるのだ。私の求めるこの理論を完成させるための最後のピースは、その模様の持つ特別な効果や意味を解き明かすことにあると踏んでいる。』


 サクス文明?


 これまた知らない情報だ。文明の名前に取られている「サクス」という言葉は、その時代に興隆した強大な何かに肖って付けられたものに違いない。国やら勢力やら、あるいは神の名や支配者の名や、色々と考えられる。


 文全体から強く感じるのは、この研究所がまだ現役だった頃から見ても、その古の時代の技術が非常に優れた理論を持っていたことに対する、ある種の憧れのような感情だ。


 そして、それをどうにか自分たちの時代へ引き戻さなければならないという、切迫した使命感がある。


 彼の求める長距離移動用の設備を作るために不可欠な理論は、そのゲートに刻まれているらしい模様に眠っているという。


 模様。彫刻。装飾。


 それらがただの美術的意匠ではなく、機能を持つ文字や回路のような物だとすれば、確かに古代の技術体系そのものに触れることができるのかもしれない。


 私はページの端に指をかける。紙の縁がわずかにざらつき、指先に乾いた感触が残った。


 『それがいつになるかは分からない。もしかしたら間に合わないかもしれない。予言によると、この地域も滅びることが決まっているらしいが、そんな非科学的な物を信じてこの偉大なる術理を未完のまま捨て置くのは、あまりにも愚かなことだ。そして幸いなことに、私は馬鹿ではない。きっと災厄の日など来ない。しかし、それでもなお、この技術が多くの人を助けると信じて研究を続ける所存だ。一人でも多くの命を助け、一つでも多くのレガシーを後世に託すため、私はあらゆる苦労を惜しまない。』


 そこで一度、私は読む手を止めた。


 紙面に残された文字は静かだ。だが、その奥には叫びにも似た感情が見える。


 まだ先にも文は続いていたが、それは民に対する愛や、研究に対する思いなどが書き連ねてあるものだった。


 研究者としての誇り。街への愛着。家族を逃がすべきか迷っているような記述。若い研究員たちに危険な作業をさせていることへの罪悪感。


 肝心の技術については、この書には詳しく書かれていないようだった。恐らく別の資料を探せば見つかるだろう。


 なるほどね。


 これはタイトル通りの強烈な独白だ。


 非科学的な災厄の日など来ないと書かれているが、きっと心のどこかで分かっていたのだろう。それは間違いなく襲来し、多くの人の命を消し去るということを。


 だからこそ、この研究を続けることに大きな意義を見出し、必ずその理論を完成させると決意したはずだ。


 しかし、この街の惨状を見れば分かる通り、残念なことに彼の予感は見事に的中してしまった。


 災厄の日は実際に起こり、この街を含む多くの地域を不毛の地にしてしまった。


 果たしてこの技術は完成したのだろうか。それとも、この研究所の放棄に合わせて中断されてしまったのか。それは分からないが、少なくともマージスの熱意は本物だった。


 私は開いたままの資料をじっと見下ろす。


 《本の背表紙やタイトルを確認し、技術書と思われる物から集中して調査しましょう》


 「そうだね。いつまでもここで時間を浪費するのも惜しいか」


 私は「マージスの独白」を一旦デスクの上に置いた。古い木製の天板は乾いてひび割れており、本を置いた衝撃だけで細かな埃が舞い上がる。


 その埃を払いながら、技術書と思われる本が収納されている本棚を探した。


 研究室の壁際には、背の高い本棚がいくつも並んでいる。そのうち幾つかは傾き、幾つかは棚板が抜け落ち、床には書物の残骸が散らばっていた。私は慎重に本棚の間を進む。


 足元に転がっていた金属製の筒を踏みそうになり、慌てて足を止めた。拾い上げてみると、中には細く丸められた設計図のような紙が入っている。ただ、端が焼け焦げていて、今すぐ内容を確認するには少し扱いが難しそうだった。


 それをひとまずデスクの上に置き、改めて本棚を眺める。


 「ここらかな」


 本棚には、なにやら難解そうなタイトルが背表紙に書かれた本が大量に並んでいて、その文字を目でなぞるだけで目眩がしそうである。


 『異界接続理論における相位固定の基礎』


 『サクス文様群の分類と応用』


 『門構造体における安定化結界の試作報告』


 『長距離転位装置の街道網応用案』


 タイトルだけで頭が痛くなりそうだ。しかも、どれもこれも軽く読んで理解できるような代物ではない。


 それでも私は、比較的保存状態のよさそうな本を抜き取り、机の上へ運んでは中身を確認していった。


 幾つかの書物を確認して分かったことだが、多くの書物が指摘しているように、この空間の地下には「ゲート」と呼称される異界への扉が鎮座しているらしい。


 その扉は遥か古の時代に栄えたサクス文明なる者達が作り上げた代物らしく、特別な力を持つ不思議なアーティファクトであるそうだ。


 もっとも、研究者たちの書き方を見る限り、それを単なる魔法の産物として片付ける者は少なかったようだ。彼らはゲートを、未知の理論によって稼働している巨大な機構として扱っていた。


 長距離移動用の技術以外にも、その扉を研究することで実現に近づくとされた多くの超技術のために、日夜多数の研究者が訪れ、その研究に没頭したらしい。


 特に目を引くのが、「長距離移動用のポータル」、「サクス文字を用いた結界」、「対象を異次元へ飛ばす装置」辺りだろうか。


 どれも目前に迫る脅威に対して考案された、決戦兵器のような雰囲気が漂っている。


 マージスが研究していたとされる長距離移動用のポータルは、避難路や補給線としての運用を想定していたらしい。資料の余白には、サンクティンから周辺都市へ逃がせる人数の概算が細かく記されていた。計算式の横には、何度も修正された跡がある。


 サクス文字を用いた結界については、都市全体を覆う防御膜のようなものを構想していたようだ。ただし、実験記録には失敗が多い。小規模な結界の発生には成功したが、広域展開すると文様同士が干渉し、出力が暴走する危険があると書かれていた。


 そして、対象を異次元へ飛ばす装置。


 これは文字通り、敵への攻撃を目的にした技術であるらしい。特定範囲内の対象をゲートの向こう側へ強制的に転送する、あるいは異なる空間へ消し飛ばす。そんな物騒な説明が並んでいた。


 その力次第では、災厄の日が来る前に人間同士の争いになりかねない、いわゆる核のような代物に感じてしまう。


 実際、その危険性を危惧した研究者もいたようだ。


 別の薄い資料には、赤いインクで大きく「軍事転用を禁ず」と書かれていた。だが、その下には別の筆跡で、「災厄に対抗するための兵器化は避けられない」と書き足されている。


 紙の上でさえ、彼らが揉めていたことが分かる。


 一つのゲートを研究するだけでも、これだけの技術研究が行われるほどに超越的な技術が使われていたサクス文明とやらは、いったいどれ程の力を持っていたのだろうか。


 そして、多くの書物が著していることから考えると、なぜパタリと消えてしまったのだろうか。


 それだけの文明が、何の理由もなく歴史から消えるとは思えない。これまた災厄に滅ぼされたのか。あるいは進歩し過ぎた自分たちの技術で自滅したのか。


 それとも、どこか別の世界へ移ったのか。


 次々と疑問が湧いてくる。


 私は棚の奥から、半分ほど破れた索引のような紙束を見つけた。そこには、この研究区画に収蔵されていた資料の一覧が書かれている。


 『ゲート本体観測記録』


 『地下第一封鎖区画安全確認報告』


 『サクス文字列照合表』


 『昇降機操作手順書』


 その中でも、最後の一つに目が留まった。


 昇降機。


 つまり、この地下へ向かうための手段は、この書物を確認することで学ぶことができるだろう。


 こういった調査をしていると、当然そのゲートとやらについて自分も調査したいと思えてくるから、人の好奇心とは恐ろしいのだ。


 この体でどこまで行けるかは分からない。地下に何が眠っているかも分からない。


 それでも、サクス文明という言葉が、頭の奥に引っかかって離れなかった。


 「マリー、多くの調査から分かったと思うが、この地下に眠るとされるゲートには、凄まじい技術が使われているらしい。その技術の一部でも手に入れることができれば、この体の強化に繋がるだろうか?」


 私が問うと、すかさず返事が返ってくる。


 《その可能性は否定できません。また、ライブラリに存在しない情報なので定かではありませんが、サクス文明にあるサクスという言葉と、機神サクスザント様の名前の一部が一致しているのは、単なる偶然ではない可能性を考慮する必要があります》


 その通りだ。


 薄々気付いていたが、このサクス文明とやらは、どう考えても我らがサクスザント様に関係している文明だろう。


 サクス文明。


 サクスザント様。


 まったく関係がないと言い切るには、あまりにも近すぎる。


 この部屋に入室する際に行われた何らかのチェックも、それが関係している可能性を排除できない。もし、この研究所がサクス文明由来の技術を扱っていたのなら、私の体に宿る何かが反応したとしても不思議ではない。


 「ならば、なおさら地下の探索は必要ではないだろうか」


 《同意します。しかし、長期間に渡って管理がなされなかった機構は、不安定な状態になっている場合があります。十分に注意を払って探索する必要があるでしょう》


 その通りだな。


 当時の人々が起動しているゲートの調査をしていたのか、あるいはその残った機構自体を調査していたのかは不明だが、どちらにしろ長期間放置された精密機器は、余程特殊な力でもない限り等しく風化していくものだ。


 まして、ここはただの倉庫や廃屋ではない。


 異界へ繋がるゲートの研究施設だ。


 壊れた配管一つ、停止した制御盤一つでさえ、何が起こるか分かったものではない。


 なおさら慎重に探索を進める必要があるだろう。


 私はデスクの上に戻り、先程見つけた紙束の中から「昇降機操作手順書」と記されたものを抜き出した。紙面には手順が箇条書きで記され、その横には簡素な図が描かれている。


 なになに。ふーむ、かなり簡単に起動できるようだが、そのためには研究員証が必要らしい。困ったぞ、研究員証など持っていないのだが。


 そう思いかけたところで、手順書の下部に小さな追記があることに気付いた。


 緊急時には、管理者権限を持つ者の生体認証、あるいはサクス文様への適合反応によって代替認証が可能。


 ……なんだそれは。


 私は思わず昇降機の脇に佇む操作盤の方を見た。


 そこから漏れ出る光から分かるように、まだ完全に死んでいるわけではないらしい。表面の割れ目の奥で、ごく微かに青白い光が瞬いている。


 「この部屋に入る時に認証されたのなら、きっとこの昇降機でも大丈夫だよね?」


 私は資料を片手に、埃の積もった床を踏みしめ、昇降機の操作盤へ向かって歩き出した。


 「あいや、とりあえず回収できそうな資料は粗方回収するべきか」


 もしゲートを見つけることができたなら、ここで研究されてきた技術調査資料と見比べることで、より多くの技術を学べるかもしれない。そのためには多くの資料を持っていくのが良いだろう。


 私は使えそうな資料の多くを収納し、改めて昇降機脇の操作盤へと向かう。操作盤には何やら複雑な機構が取り付けられていたが、操作手順書を確認しながらシステムを起動していくと、なにやら大きな駆動音が響き、ガコンと揺れた。


 強烈な光に覆われて驚き、思わず出処の昇降機を睨め付けると、そこには青と白の光に彩られた美しい機械が鎮座していた。


《昇降機の起動を確認。今後は昇降機内のパネルでの操作が必要です》


 たしかにそう書かれているね。よし、なら早く地下へ行こう。


 私は昇降機の構造を具に観察しつつ、昇降機内のパネルを確認する。なるほど、後は地下へ行くためのボタンを押せば下降していくのか。単純な構造で大変分かりやすい。


 「マリー、準備はいいかい?」


 《勿論です》


 よし、出発だ!


 私がパネルに付いていた大きな赤いボタンを押すと、想像よりも静かな音で滑らかに下降していくのが感じられた。


 この地下にあるゲートは、どのような技術が使われているのだろうか。

 ドラクエ11sにハマってしまって結果、執筆に著しい影響を及ぼしているのですが、これって私悪くないですよね?


 キラーマシンが大好きなので、いつか無意識にリファレンスした機械が出てくるかもしれません……。

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― 新着の感想 ―
キラーマシンの姿をした、汎用人類抹殺機動兵器がこの小説で爆誕する可能性が微レ存……?
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