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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ
第二章▼避難所から始まる地下研究所探索▼

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20/27

第20話『決着・後編』

 記念すべき第20話ですね!!!

 気がつけばもうこんなにも執筆していたのですね……


 26/4/24

 次話との繋がりを考慮し、一部の表現を修正しました。

 次話の前書きにも補足しておきます。

 私は立ち上がろうとし、左腕でハンマーを支えに膝を立てる。全身の損傷や欠損が重心を狂わせ、視界がわずかに傾く。脳内に何らかの警告音が響いた。


《機体損傷増加。右肩接続部に二次損傷。左腕駆動も不安定です》


「動くなら問題ないだろう?」


《問題あります》


 ぐっ。


「こんな時に私が唸るような正論を言うな」


 私はハンマーを持ち上げた。重い。重いな。


 さっきよりも、明らかに重い。左腕に流れる力が安定せず、明確に握力が落ちている。肩の駆動も滑らかではない。振り上げた瞬間にすっぽ抜ける可能性さえある。


「しばらくはこんなのの繰り返しだろうね。はあ。直しては壊し、直しては壊し。その循環の中で少しずつ強くなっていく……」


 よいしょ、と中腰になり、そのまま立ち上がった。


 銀索蜘蛛の潰れた腹部と胴体の境目に、黒い亀裂が見えた。配管の落下で外骨格が割れ、そこに内部の柔らかい組織が覗いている。探せば他にも剥き出しの弱点がありそうだが、とりあえず狙うならあそこしかない。


 不意に銀索蜘蛛が前脚を振り上げる。しかし、その速度は以前と比べるまでも鈍重だ。今の私ですら余裕を持って避けられる程度には、ゆっくりとしたものだった。


 あるいは、あれは私を狙った攻撃ではなく、ただ脚を無造作に振るっただけなのかもしれない。


 振り下ろされる前脚の軌道の外側へ逃げるのではなく、あえて内側へ潜り込む。もちろん近付くためだ。


 お互いの距離が詰まった。私はハンマーを、亀裂へ叩き込んだ。


 一撃目。


 外骨格の割れ目が広がり、黒い体液のようなものが飛び散る。銀索蜘蛛の脚が反射的に暴れ、床を抉る。残った銀糸が震え、部屋のあちこちで様々な構造物が不気味な音を立てて崩れる。


 二撃目を入れようとした瞬間、銀索蜘蛛の残った脚の一本が私の脇腹をかすめた。


 装甲が僅かに削れ、体が少しだけ押される。ただ、それだけだ。あの銀索蜘蛛が、私に耐え難い恐怖を与えた怪物が、こんなにも弱々しい攻撃をする程に……。


 ああそうだ、攻め手を止める理由などない。


「ふっ!」


 重力と遠心力に任せ、脊柱を軸に、何度か回転しながら鉄塊を同じ箇所に叩きつける。


 二撃目。


 亀裂の奥で、何かが破裂するような音がした。銀索蜘蛛に関する生物学的な知見が皆無なのでよく分からないが、なにか痛打となるような一撃を与えることができたようだ。


 そのダメージに反応するように、銀索蜘蛛の複眼が一斉に揺らぐ。


 もう先ほどまでのような支配者ではいられないだろう。


 巣は崩れ、背部は潰れ、脚は折れ、糸は水と蒸気にまみれて床へ垂れ下がっている。部屋の中央に君臨していた怪物は、今や壊れた機械と腐った配管の中で、最後の無意味な反応を繰り返しているだけのロボットのようだった。


 私はハンマーの握りを変え、先端が左の臀部に当たるよう脇を開いて構える。腕だけで持ち上げるのではなく、脇と胸部に力を集中し、身体全体で振り下ろす。


 突如、銀索蜘蛛の複眼の全てがこちらを向く。赤みを帯びた紫の光が、蒸気の中で恐ろしい輝きを滲ませていた。その光に、分かりやすい感情はない。恐怖も、苛立ちも、痛みも、ここまで来て死んでたまるかという、みっともないほど強い執着も。


 私の一挙手一投足を見逃さないよう見つめてくる複眼に思わず身が竦む思いだが、成すべき目的は決して見誤らない。


「これで、終わりだ」


 私はハンマーを振り下ろした。


 重い鉄塊が割れた外骨格の隙間へめり込み、内部で何かを完全に砕く。銀索蜘蛛の巨体が一度だけ跳ねた。折れた脚が床を掻き、垂れ下がった銀糸が最後の震えを伝えようとする。


 複眼の光が、ひとつずつ消えていく。


 「!?」


 最後に大きく体を持ち上げ、私めがけて痙攣する前脚を振り上げた。天井に残った僅かな光源を反射するほどメタリックな外観をしたその爪は、果たして私に振り下ろされることはなかった。


 ガクリと脱力し、持ち上げた巨体ごと大きな地響きを伴って命の灯火を消す。


 「天晴!」


 この激闘の終わりに、思わず叫んだ。


 部屋には、漏れ続ける蒸気の音と、どこかから滴る水音だけが残った。痛いまでの静寂。壮絶な戦いに見合うか分からない、幾許か呆気なさを感じざるを得ない最期だった。


 私はその場に立ったまま、しばらく動けなかった。


 勝った、という実感がまるでない。


 むしろ、身体のあちこちが限界を訴えている。左腕は痺れ、左肩の装甲は剥がれ、右側の欠損部は戦闘前よりもさらに痛々しく抉れている。胸部にも浅くない傷があり、膝の駆動にも違和感があった。


 まともに正面から戦っていたら、間違いなく負けていただろう。


 環境を使い、壊れた身体を使い、相手の糸まで使って、ようやく勝てた。


《戦闘終了時に特殊なログの表示を確認。ライブラリ参照。……調査結果を報告します。この戦闘により、ルイス様のレベルの上昇を確認。その他複数の称号の獲得を確認》


「あー、とりあえず軽めに表示してくれ」


《最小限の情報をまとめ、表示します》


 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


 ▼レベル上昇▼

 ♦レベルが1から6に上昇しました。

 ♦レベルの上昇に伴い、全ステータスが5から30へ上昇しました。


 ▼獲得称号▼

 ♦【無謀?蛮勇?】

 ♦【ジャイアントキリング】

 ♦【好敵手と認められし者】

 ♦【回復は忘れずに】

 ♦【適者生存を体現せし者】

 ♦【環境利用の名人】


 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


 な、なるほどね……。


 それにしても、機械系種族は面白いな。以前掲示板で知ったのだが、機械系の種族はレベルアップ毎にステータスが5の倍数ずつ成長していくらしい。


 もちろん個人によって装甲が10増えて耐物が増えなかったり、あるいは逆だったりとするようだが、私は全ステータスがレベル×5と非常に分かりやすい。


 これが優れた上昇値なのかそうでないのかは分からないが、まあレベル1の段階でここまで戦えたんだ。言うほど悪くはないのだろう。マイナス補正がえげつないことになっているが。


 装甲なんてやぶれかぶれに振り回した脚が掠るだけで、かなりのダメージを受ける程度には厳しいことになっている。


 それに今回得ることができた称号も、矮小ながら強大な相手に立ち向かった者に送られるような名称のものが多いようだ。


 称号にもスキルや恩寵ほどではないが特殊な効果が付いているので、得ておく分にはマルっと強化に繋がって嬉しい限りだ。


 それにしても、


「……これでイージーか」


 本当だろうか……、いやどう考えてもベリーハード、エクストリームだったぞ!


《難易度表記は、機神様がこの機体に埋め込んだライブラリを参考に算出しています。機神様の思う平均的な装備、平均的な身体能力、平均的な戦闘手段という前提が、一般的なものと乖離している可能性を排除できません》


「うん、それだよね、全ての原因は……」


 何も言うまい。何も。いややっぱり言わせて頂こうか!


 機神様、確かにこの機体に秘められた力を十全に使えれば銀索蜘蛛など指先一つで消し飛ばせるのかもしれませんが、今の朽ちた体ではどうしようもありません。


 今の私の実力を中心に、ライブラリの各種記述を再度見直すというのはどうでしょうか……。


 ……。


 返事はない。念じても祈っても、暖簾に腕押し、糠に釘である。はあ、全く。


 と思った途端、私の背後に凄絶な存在感が現れた。全く、毎回急にだ……!


『分かった分かった。そうカッカするな。ふふふ。ふむ……、そなたの願いだが、今すぐに叶えるのは難しいのだ、許せ』


 なんでこうも私の信仰する神はフットワークが激軽なのだろうか。


 全く申し訳なさを感じない口調で囀った後、彼女は話を続けた。


『我を祀る祭壇や神殿を探し、そこで祈りを捧げるのだ。さすれば、ライブラリを含む今のそなたには合わない幾つかの機能を調整するのと同時に、恩寵の克服が可能かを見てやろう』


 お、おお!それは!


 かなりありがたいのではないだろうか。


 多くの情報源から恩寵の克服の判断はそれぞれの神を祀っている神殿や祭壇で行うことが確認されていた。


 遥か古の時代にて世界に絶望と混沌を齎した機神が、果たしてこの世界で祀られているのかと少し心配になっていたが、どうやら杞憂だったようだ。


『なければ、自分で作るのもいいだろう。何せ我が寵児であるからな、モノ創りなど朝飯前であろう』


 お?なんだろう、その言い方は。まるで無ければ作れば良いと言っているように聞こえるのだが。まさか本当にないのか……?


 仮に見つからなければ、自分の手で神に祈りを届ける何かを作れだって?


「無茶を仰る……、いやしかし、待てよ。あれを使えば……」


『さて、我はそろそろ帰るとするかな。伝えたいことは伝えきれたはず。では我が愛しの寵児よ、このまま励むのだ』


 相変わらず急に現れては急に帰ってしまう、不思議で面白いお方だ。あんな大らかな方が、どうして世界に絶望と混沌を巻き起こしたかについては、私にもよく分からない。


 はぁ、と一つ溜息を零し、辺りを見渡した。


 床に残った傷や落ちた配管、そして私の身体に刻まれた損傷は、妙に生々しいままだ。


 戦闘の結果だけがゲームらしく処理され、そこに至るまでの痛みや恐怖だけが、こちらへ取り残されているような気がした。


「マリーよ、銀索蜘蛛の全身を手に入れることができたが、特定の部位だけを取り出すことは可能なのか?」


《当然です。しっかりと腑分けを行い、丁寧に解体すれば、体の奥に存在する目標も綺麗に摘出できるでしょう》


「……なんて?」


 ああ、そうだ……。


 ポラリスのゲームは、倒したモンスターの死体が丸々手に入る代わりに、自分の手で解体を行わなければいけない仕様を好んでいるのだった……。

 さて、ようやくレベル1のニュービー卒業です。ここまで長かった……。


 そして、ステータスや称号に関する簡単な説明がされましたね。


 大した攻撃力もないルイスくんの場合、直接攻撃するよりも環境を利用した攻撃の方がよりダメージを与えられる、というのは仕方のないことですね。なんせルイスくん、全ステータスにとんでもないマイナス補正がかかっていますので。


 それから、誤字脱字を見つけた場合は報告よろしくお願いします(T_T)

 昨日細かく精読してくれた方が居て、全話を通して5箇所ほど修正が入りましたm(_ _)m

 本当にありがとうございます……!

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称号:【ジャイアントキリング】獲得……レベル差が10を超えてたのかな?
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