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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ


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第11話『エネルギー充填を目指して』

 雷の魔石(中)を掌に乗せたまま、私はしばらく動かなかった。その内部で脈打つ光は妙に生々しく、一定の周期で明滅を繰り返す様子は、無機物というよりもむしろ生体器官の一部のような錯覚すら覚えさせる。


 そういえば魔石はどう生まれるのだろうか。多くの作品ではモンスターの体内の器官の一つとして存在しているのだが、本作も同じなのだろうか。


 鉱山を掘ったらそのまま出てくるとかでも面白いな。まあ今はどうでもいい話か。


 ふーむ。エネルギーは確かにこの中に満ちているようだ。だが、それをどう扱うかという段階に至ると、途端に単なるエネルギーの回復手段という発想が、急速に色褪せていくのを感じる。


 それ、つまらなくないか?機神の寵児なのに、エネルギーが込められたアイテムからエネルギーを取り出して終わりって、味気ないにも程があるだろう。


 吸収同化アシミレーターを用いれば、簡単に魔石内部のエネルギーをそのまま取り込むことはできるだろう。理屈としては単純で、失敗する要素も少ない。現状の枯渇を補うという意味では、最も確実で、最も効率的な手段だ。


 しかし、それはあまりにも短絡的だ。


 一度きりの補充に過ぎず、私のこの朽ちた構造には何も残らない。対処療法としては優れているのかもしれないが、再びこの魔石を得られる機会があるのかは分からないのだ。


 ただ消費して終わるだけの使い方では、この先も同じ問題に何度でも突き当たることになる。


「違うな」


 無意識に小さく呟いた声は、思いのほか大きく響いた。


 必要なのは一度きりの回復手段などではない。エネルギー供給の仕組みそのものである。もっと恒久的に、もっと持続的にエネルギーを生み出す機関が必要なのだ。


「心臓のような機構にできれば最高なんだが……」


 私は自身の胸を見下ろした。そこには朽ち果ててなお赤い明滅を繰り返すリアクターが寂しく佇んでいる。


 こいつは体を僅かに動かすのに必要な最低限のエネルギーを生み出しているのみで、この体の本来の性能をアクティベートするには現在の性能は圧倒的に不足している。


 外部から何らかのエネルギーを取り込み、それを全身に循環させ、必要なだけのエネルギーの常時供給を維持する構造へと補強できれば……。


 私は一度インベントリを開き、手持ちのアイテムをすべて洗い出す。


 そこに並んだ品々は、一見すれば統一性もなく、用途も曖昧で、ただの寄せ集めにしか見えない。だが、組み合わせ次第でいくらでも役割を与えられる余地がある。


 ▼使えそうなアイテム▼

 ♦大きめの背嚢×1(穴が空いている)

 ♦用途が分からないパーツ×約10

 ♦大きめの瓦礫×2

 ♦価値が分からない貨幣×結構な数

 ♦雷の魔石(中)

 ♦祓呪鉱石の欠片×3

 ♦砕け散ったガラス片×10

 ♦特殊な形状をしたペン×3

 ♦ギリギリ使えそうな紙×約30枚

 ♦何者かの繊維片×1

 ♦何者かの体毛×4

 ♦未知の装置(破損)

 ♦朽ちた金庫


 ふむ。使えそうな物の中に鑑定していないものがいくつかあるな。それも済ませておこう。


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【R】カンゼーロ魔銅貨

 ┗古き時代の貨幣。貨幣としての価値は失われて久しいが、使用されている金属を抽出することができれば、特殊な素材として利用できるだろう。


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【R】カンゼーロ魔銀貨

 ┗古き時代の貨幣。貨幣としての価値は失われて久しいが、使用されている金属を抽出することができれば、特殊な素材として利用できるだろう。


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 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


【SR】カンゼーロ魔金貨

 ┗ 古き時代の貨幣。貨幣としての価値は失われて久しいが、使用されている金属を抽出することができれば、特殊な素材として利用できるだろう。


 人によっては特別な価値を見出すこともある貴重な貨幣である。


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【SR】祓呪鉱石

 ┗穢れを打ち祓う力を持った特殊な鉱石。この鉱石を使用して作成する武具には破邪の加護が宿るとされ、多くの戦士達に重宝されてきた。


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【SR】感応鉱石

 ┗使用者の魔力に反応して特別な効果を発揮する鉱石。効果は作成時に込められた思いによってある程度操作することが可能であり、このペンに使われている鉱石には使用者の疲れを癒す願いが込められている。


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【SR】キーシュラ・魔力識別タイプ(破損)

 ┗古き時代の防犯アイテム。特殊な機構を用いることで所有者の魔力を正確に識別し、望まぬ尋ね人を拒む効果があったが、現在では壊れてしまっている。


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【SR】ダンザナイト金庫

 ┗ダンザナイト鉱石がふんだんに使用された金庫。鉱石の中でも特に頑丈な性質を持ち、簡単には壊れないことから武具や防犯用アイテムに使用されてきた。


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 静かに鑑定結果を眺めながら、私はある確信を得ていた。雷の魔石を核とした機構は、工夫次第で想像以上の成果をもたらすだろう。


 この街をもう少し探索するだけでこれ以上の素材と出会えるかもしれないが、怪物ロボットが跋扈していると分かった今、この朽ちた体で余計なリスクを負うのはなるべく避けたい。


 しかし、各素材の特性を無視して雑に組み上げれば、エネルギーの流れは淀み、効率は落ち、最悪の場合エネルギーの暴走すら招くだろう。


 だからこそ、素材の本質を理解し、きちんと熟考する必要がある。


 それを実現するのに役立ちそうなのが、私の授かったスキル、「ファブリケーター」だ。


 ただ物質を加工するのではなく、複数のアイテムや素材を組み合わせることで、精巧な機構や構造を作り出す特殊な力だ。この場面においての最適な手段はこれを使うことだと思う。


「ファブリケーター、起動」


 宣言と共に、 目の前に淡い水色の渦が現れた。


 よく観察すると物質的なものではなく、何やら複雑な情報そのものが渦を巻いているような、不思議な存在感を放っている。


 さらに今見ている視界の上に半透明のウィンドウが浮かび上がり、現実に重ねて展開される。まるで別の色のサングラスをかけたかのような世界だ。


 鑑定の結果を表示するだけでなく、各種アイテムや素材の構造を操作・再編成するための特別な編集画面のような物であることが直感的に理解できた。


「上手く使いこなせれば、もっと面白い物もガンガン作れそうだな」


 私は素材をひとつずつ渦の中へと投入していく。


 私が取り出した素材が情報の渦に触れた瞬間、素材はその形を崩しつつ細かな螺旋を描いて解けていった。それらは細かな粒状の光となり、渦に吸い込まれることで存在感を増していく。


 使用できると考えた全ての素材を渦に入れ終わると、渦は急激に縮小したかと思えば、凄まじい勢い膨張して先程から視界に映っていたウィンドウに吸い込まれた。


「す、すごい……」


 用途不明のパーツは外殻、導電層、骨格フレームなどに分離し、それぞれの損耗率や再利用可能率が浮かび上がる。


 カンゼーロ貨幣は魔銅・魔銀・魔金のに分類され、各金属の魔力の伝導効率や耐久性が簡潔なパラメータとして可視化される。


 祓呪鉱石は「何かしらの侵食に対する減衰曲線」として、感応鉱石は「使用者との同調率」として、別々の軸を持ちながら視覚化される。


 凄い。多くの人がこれら各種素材を用いる際に参照するであろう特別な効果を主軸にまとめられているようだ。


 もちろんその他のパラメータや数値も分かりやすく可視化されていて、これは眺めているだけでも楽しい。


 それらを眺めながら、とりあえず私のできる限りの知識や直感を利用して、仮ではあるがこの崩壊寸前のリアクターを補うような機構を作ってみた。

 エネルギーが常時枯渇するという試練とは、つまりリアクターが体を動かすのに必要最低限なエネルギー以上を生み出せないということです。


 彼は絡繰兵としての本来の機能を何も使えていません。他の種族が火を吐き、触手を唸らせている間、ただ体を動かす訓練をして、滅びた街を練り歩き、おかしなロボットに吹き飛ばされていただけです。


 神がその手で作り上げた機械が、そこらの機械に圧倒されるのは、彼の体に眠る力が文字通りエネルギー不足でお眠さんだったということですね。

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