第100話『第一回イベント⑥リザルト』
記念すべき第100話です!
この後も投稿します!
私の腕よりも太い首は、ゴブリンほど軽くは落ちない。途中で異様に発達した頚椎に当たり、嫌な抵抗が左腕に残った。機械の肩がミシリと軋む。私は奥歯を噛む代わりに、内部駆動の出力を強引に押し上げた。
スパッと刃が抜けた瞬間、ホブゴブリンの頭部が横へずれた。それに合わせて巨体がゆっくりと前へ傾く。その結果を確認する前に、私は振り返った。まだ仕留めるべき獲物が残っているからだ。
最後まで生き残った剣盾ゴブリンは、得物を振るうのに不可欠な拳を失ったまま、砂の上にうずくまっていた。痛みに震え、こちらを見る余裕もないらしい。大ボスが光の粒になったにも関わらず、それを認識すらしていないようだった。先ほどまで上げていた喧しい絶叫は、今では掠れた息に変わっている。
そのあんまりな姿を見て、可哀想だ、とは思わない。こんなのは、今までのゲーム体験の中で腐るほど見てきたから慣れてしまった。とはいえ、長々と痛めつけてやるのも雑魚モブだと趣がないな。
折角その首を叩き落とし易いよう蹲ってくれているのだ、ならばありがたく刈り取ればいい。私は静かに近付き、そいつが顔を上げるより一拍早く、首を一撃で落とした。
「ふぅ、ようやっと一仕事終えたよ」
視界を埋め尽くさんばかりに迫っていたホブゴブリンの巨体も、最期に素っ首を差し出していた剣盾の身体も、床に残った黒い大剣も、砂に散った黒紫の血も、すべてが粒子となって空気中に溶けていった。残ったのは、戦闘で荒れた砂地と、我が身に刻まれた浅い傷だけだったが、それすらもが既に治っている。
しばし、広間は静かだった。
「……終わりかな」
《敵性反応、完全に消失》
視界の端に通知が浮かぶ。
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♦イビル・ホブゴブリンを討伐しました。
♦イビル・ゴブリンを討伐しました。
♦イビル・ゴブリンを討伐しました。
♦イビル・ゴブリンを討伐しました。
♦経験値を獲得しました。
♦レベルが上昇しました。
♦ダンジョンポイント[48]を獲得しました。
♦以下のアイテムを獲得しました。
▼ホブゴブリンの牙×1
▼ゴブリンの耳×3
▼黒曜の大剣×1
▼粗悪な盾片×1
▼長槍の柄〔破損〕×1
▼欠けた短剣×2
▼粗末な腰巻×3
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「おお、上がった」
レベルアップの表示を見て、思わず声が漏れる。
ここまで倒した数を考えれば、ようやくという感じだろうか。最近はあまり上がっていなかったので、これは素直に嬉しいな。ホブゴブリン込みの最奥戦で、しかもソロだ。ダンジョンポイントも四十八。さっきの三体で十六だったことを思えば、妥当な増え方に見える。
もちろん、どういう基準で加点されているのかは分からない。被弾回数、敵の数、こちらの参加人数、攻略中の行動、何かしら細かい要素を見ているのだろう。正確な式を知りたいという気持ちはあるが、今ここで詳らかに分かるものでもないし、それを知ったところでという話ではあるか。
私はグッと握り締めていた骸を軽く振った。血が付着していない刃は、淡い光を受けて冷たく光る。敵の身体と一緒に汚れも消えるのはやはり便利だ。告知を見て思ったことの振り返りになってしまうが、戦闘後の整備が楽なのはありがたい……。
とはいえだ、この仕様に慣れてしまうと、通常探索へ戻ったときに少し面倒を感じそうで困る。
などと考えていると、もう一つ、別のウィンドウが開いた。
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【インスタントダンジョン攻略完了】
♦ダンジョン名
【彷徨う醜鬼の腕試し】
♦難易度
☆
♦攻略結果
最奥領域の敵性存在を討伐しました。
♦獲得ダンジョンポイント
討伐獲得:66
探索獲得:10
攻略報酬:30
合計:106
♦獲得アイテム
▼ゴブリンの耳×7
▼ホブゴブリンの牙×1
▼粗末な腰巻×6
▼粗末な棍棒〔破損〕×1
▼錆びた剣〔破損〕×1
▼歪んだ短槍〔破損〕×1
▼欠けた小斧〔破損〕×1
▼黒曜の大剣×1
▼粗悪な盾片×1
▼長槍の柄〔破損〕×1
▼欠けた短剣×2
▼簡素なポーション×3
♦初回攻略報酬
▼境界迷宮踏破証〔☆〕×1
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「あれ、インスタントダンジョンに名前あるの?」
そこに一番驚いた。
入場ごとに生成される簡素な特殊領域、そういう理解で潜っていたので、個別の名前が表示されるとは思っていなかった。しかも【彷徨う醜鬼の腕試し】。醜鬼というのは、ゴブリン系列の敵を指しているのだろう。腕試しという部分も、難易度星一つらしいと言えばらしい。
私は広間全体へ意識を向け、簡易鑑定を試した。
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【彷徨う醜鬼の腕試し】
境界迷宮踏破戦において生成された小規模インスタントダンジョン。瘴気に侵された醜鬼種を中心に構成され、罠、宝箱、複数戦闘、最奥領域の敵性存在との戦闘を通じ、基礎的な探索能力と戦闘能力を確認するための腕試しを目的とした領域。
難易度:☆
攻略状態:完了
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「……うわ、見落としていた」
私はガクリと肩を落とした。
入口の時点でダンジョン全体へ簡易鑑定をかけていれば、名前くらいは分かったのかもしれない。扉や敵や宝箱にばかり意識を向けていたが、空間そのものを対象にする発想が抜けていた。
《次回以降の確認項目に追加します》
「そうしよう。いや、これは少し悔しいね」
まあ、取り返しのつかない見落としというほどでもないか。名前が分かったところで、罠や敵の内容まで全て読めたとは限らない。むしろ、攻略後に名前と説明が出たことで、このダンジョンが何を目的に構成されていたのかを整理しやすくなった。
たしかに、今思えば腕試しという名前に相応しい構成だったね。あからさまな落とし穴や、段階を踏んで厄介になっていくゴブリン、宝箱に補給、致命的な罠。そして最後に、役割の異なる取り巻きと上位個体をまとめてぶつける、と。
星一つという表示から受ける印象より、ずっと面白い戦いの連続だった。探索自体も一筋縄ではいかない緊張感のあるもので、ある種のマンネリ予防にもなっていたような。特に矢の罠なんかは、私でも少し危なかったからね。
その時、円形広間の中央で淡い光が立ち上がった。
砂地の上に、サッと細い線が走る。白い光が円を描き、内側に幾何学的な模様を刻んでいく。数秒ほどで、床の中央に魔法陣の描かれたサークルが出現した。直径は二メートルほど。足を踏み入れるには十分な大きさだ。
「うーん、帰還用かな」
《攻略完了後に出現した転送用サークルと推定されます》
「だろうね」
私は念のため、周囲をもう一度見回した。
敵はいないし、追加の宝箱もないようだ。辺りを見渡すが、隠し通路らしきものも見当たらない。
「よし、帰ろうか」
ロヨンたちにも情報を共有しなければならない。星一でこの程度なら、普通のパーティは問題なく攻略できるだろうが、住人同行者がいる場合はまた少し話が変わるかな。落とし穴や矢罠は、見落とした瞬間に同行者の命に障る。ロヨンがあのような簡単な罠に嵌るとも思えないが、一応心配だし。
私は骸を鞘へ戻し、中央のサークルへ歩く。
足裏が魔法陣の光に触れた瞬間、円の内側の模様がふわりと明るくなった。広間の景色が薄く揺れる。石壁も、砂地も、天井の淡い光も、遠ざかるように輪郭を失っていく。
《帰還処理を確認》
視界が白く染まった。
パッと視界が晴れると、まだ見慣れないあの部屋の中に立っていた。部屋の中央には相変わらず不思議なオブジェがあり、その奥にはモヤモヤとした扉が佇んでいる。インスタントダンジョンに応じて材質が変化するという仮説は如何に、だ。
そのままぼーっとしていると、ポッとウィンドウが浮き上がった。いったいなんだろうか。
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▼レベル上昇▼
♦レベルが11から12に上昇しました。
♦レベルの上昇に伴い、全ステータスが55から60へ上昇しました。
▼ステータス変化▼
♦HP:110 → 120
♦MP:110 → 120
♦筋力:55 → 60
♦魔力:55 → 60
♦装甲:55 → 60
♦物耐:55 → 60
♦魔耐:55 → 60
♦速度:55 → 60
♦器用:55 → 60
♦精神:55 → 60
♦運気:55 → 60
▼獲得称号▼
♦【境界迷宮に潜りし者】
♦【ゴブリンキラー】
♦【戦巧者】
♦【仲間なんて必要ない】
♦【境界迷宮帰還者】
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おっ、ステか。それにいくつかの称号も獲得できたようで、これは幸先が良い。
というわけで、初探索のリザルトです。
順調な滑り出しですが、果たして今後はどうなるか。
記念すべき第100話です!これまで愛読してくださった皆さん、どうもありがとうございます。執筆初心者が手探りで始めた本作品ですが、有難いことに多くの方に読んでいただけているようで、嬉しい限りでございます。まだまだ本作の更新を続けていくので、どうか応援よろしくお願いいたします!




