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第5話 撃たれました!ゾンビです

第5話 撃たれました!ゾンビです


(はい! こちら翔平!)


(私は今、コンビニだった建物に来てまーす!)


翔平は荒れ果てた店内を見渡した。


かつては弁当や飲み物、お菓子なんかが並んでいたであろう商品棚。


そこには今――


ゾンビが並んでいた。


それも、ぎゅうぎゅうに。


「ゔゔ……」


「ゔぁ……」


「ゔゔゔ……」


(商品の陳列は完璧!)


(もちろん商品は――ゾンビ!!)


(これぞ!!)


(ゾンビニエンスストア!!)


翔平は一仕事終えたような満足感に浸りながら、バックヤードでふんぞり返っていた。


(いやー、我ながらいい店を作った)


(誰か入ってきてくれないかなぁ)


その時――


ガチャ。


店の扉が開いた。


(来たぁぁぁぁ!!)


一人の男が店内へ入ってくる。


(ようこそ!)


(ゾンビニへ!!)


(いらっしゃいませぇぇぇ!!)


もちろん、声には出ていない。


男は店内を見渡した。


そして――


棚にぎゅうぎゅうに詰め込まれたゾンビを見て固まった。


「…………」


「なんでこんなことになってんだ?」


(ふっふっふ……)


(驚いてる驚いてる)


だが――


それはただの陳列ではない。


罠だった。


男が店の奥へ足を踏み入れた瞬間。


バキッ!


天井の一部が崩れた。


「!?」


そして――


大量のゾンビが降ってきた。


「ゔゔゔゔゔ!!」


「うおっ!?」


(ふははははは!!)


(流石にこれは予測できまい!!)


(上からゾンビが降ってくるコンビニなんて、ゾンビ映画でもそうそうないだろ!!)


男はすぐにナイフを抜いた。


「くそっ!」


ザシュッ!


一体。


ザクッ!


二体。


ドスッ!


三体。


次々とゾンビが倒されていく。


(…………)


(強っ!?)


(ちょっと待って)


(この世界の人間、やっぱり強すぎない!?)


それでもゾンビは次々と男へ襲いかかる。


「くっ! 流石に使うしかない!」


男が腰から銃を抜いた。


バン!


バン!


バン!


次々とゾンビの頭が撃ち抜かれる。


そして――


静かになった。


(…………)


(全滅したんですけど)


男は店の奥を見る。


その先にはバックヤード。


翔平はそっとドアを閉めた。


(…………)


ドンッ!!


ドアが蹴り破られた。


(キャーーー!!)


(強盗よぉぉぉぉ!!!!)


男が翔平へ銃を向ける。


(…………)


(やば)


翔平はギョッとして立ち上がった。


男が引き金を引く。


(やばい!!)


その瞬間。


驚いた拍子に――


ポロッ。


破れた袋から、何かが転がり落ちた。


(…………)


(またぁぁぁぁ!?)


カチッ。


だが――


銃から弾は出なかった。


「……弾切れか!」


(…………)


翔平は男を見る。


男も翔平を見る。


(これは……)


翔平は自分のポケットに手を入れた。


(こんなこともあろうかと!!)


(“玉”のストックはポケットに入れてある!!)


男は銃へ弾を込め始める。


翔平もポケットから玉を取り出す。


(…………)


(この勝負!!)


(先に――)


(“たま”の装填を終えた方が勝つ!!)


男は銃に一発ずつ弾を込めていく。


カチャッ。


カチャッ。


その目の前で――


翔平は必死に股間をまさぐっていた。


(入れ!!)


(入れぇぇぇぇぇ!!)


「うおぉぉぉぉ!!」


(うおぉぉぉぉ!!)


人間とゾンビ。


二人の魂の叫びがコンビニに響く。


そして――


バンッ!!


(撃たれた!?)


翔平は身体を確認する。


(…………)


(あれ?)


後ろの壁に弾痕ができていた。


外したのだ。


いや――


わざと外した。


男は銃を構えたまま、翔平を見ていた。


「……お前」


(…………)


「理性があるのか?」


(!?)


(なぜ分かった!?)


男は翔平の股間を見る。


「いや……普通のゾンビは、撃たれそうになって股間に玉を詰めたりしない」


(…………)


(ごもっともです!!)


男は銃を下ろし、改めて翔平を見る。


「しかし……理性のあるゾンビがまたいるとはな」


そして、少し驚いたように呟いた。


「こりゃ、たまげたぜ」


(…………)


(今、“たま”って言った?)


男は翔平の姿をまじまじと見つめる。


「銀次さんと同じなのか?」


(…………)


(!?)


(銀次さん!?)


翔平は男へ詰め寄った。


(銀次さんを知ってるの!?)


「うおっ!? 近い近い!」


     ◇


そして――


かくかくしかじかありまして。


(この人間の名前は川野優、27歳!)


(そして銀次さんを見たのは、何日か前のことらしい!)


(話をまとめると――こう!!)


ある日。


優は、一体のゾンビを見つけた。


そのゾンビは――


白旗を振り回していた。


(…………)


優が不思議に思って近づく。


するとゾンビは、落ちていた棒を握った。


そして――


ブンッ!!


ゴルフのスイングをした。


優は思わず、


「ナイスショット」


と言った。


すると――


ゾンビは丁寧にお辞儀をした。


(…………)


(いや銀次さん何してん!?)


(白旗振って!!)


(ゴルフして!!)


(ナイスショットでお辞儀!?)


(何そのコミュニケーション方法!!)


(ていうか、それで意思疎通できた優も何者だよ!!)


だが、その奇妙な行動のおかげで、優は銀次に理性があることに気づいたらしい。


そして銀次は――


ゾンビを研究している専門機関に保護されていった。


(…………)


(専門機関?)


翔平は考える。


(ゾンビを研究している……)


(理性のあるゾンビ……)


(研究機関に保護……)


(…………)


(それ十中八九、非人道的な実験するところぉぉぉぉ!!!!)


翔平は頭を抱えた。


(銀次さぁぁぁぁん!!)


(ゲームしかしてなかったから!!)


(こういう世界のお約束分かってない!!)


(研究所に連れていかれた特殊個体なんて!!)


(絶対ロクなことにならないやつ!!)


翔平は立ち尽くす。


(…………)


(え?)


(これ……)


(俺、助けに行くやつ?)


(…………)


(無理じゃね?)


(だって俺、ゾンビだよ?)


(走れないよ?)


(さっき人間一人にゾンビニ壊滅させられたよ?)


(…………)


(えぇ……)


果たして翔平は――


銀次を助けに行くのか。


それとも――


行かないのか。


(できれば行きたくない!!)


続く。

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