草木芽生え。
ー 私たちの暮らす島は、山や海に暮らすかの様に自然に覆われ、泉は水を讃え続けている ー
「梅子ちゃん。大丈夫?梅子ちゃん?」
聞き覚えのある声がリビングに響く。
「え、何?」
私はそう答えると、目を覚ました。
「何か夢を見てたみたい。とても綺麗で優しい感じの夢…。」
妹のみどりがそっとコップの水を差し出す。
「急に気を失って。それからずっと眠ってたんだよ。良かった気がついて。」
「今、何時?」私は妹に尋ねた。
「朝の10時。何か独り言ごとの様に話てた…。気持ちよさそうに。」
「あ、ゴメン。いま朝ごはん作るね。」
「いいって、お姉ちゃんおはよう。」
一杯の水が身体をゆっくりと目覚めさせる。私は身体を起こしリビングのソファーに体重を預けた。
「目が覚めないのかと思うくらいぐっすり眠ってた。」
エプロン姿のみどりはそう言うと朝食をテーブルに運ぶ。
「ありがとう。いただきます。」私は両手を合わせるとゆっくりと食事を始める。
外では雀が囀り、とても過ごしやすい朝だった。
「今年の夏も暑くなるらしいって。」
みどりはテーブルの食器を片付け、冷たいコーヒーを準備する。
「どう?梅ちゃん、落ち着いた?」
「あ、うん。有り難う。まだ、眠たい。」
「引っ越しとかいろいろバタバタしてたから、疲れたんだよきっと。」
弟たちは、まだ起きてこない様だ。
「今日、用事ないんでしょ?ゆっくりしたらどう?」
「近所の挨拶回りとか、予定してたんだけど。」
「お蕎麦ならもう、近所に配ったから。いい人たちばかりだったし、後で自然を顔合わせるんだから、無理に気を遣わなくてもいいって。」
みどりも随分と大人になったものだ。素直にそう思った。
リビングにはいくつかの楽器が無造作に置かれている。バイオリンやチェロなどの弦楽器。学生時代に使っていたベースやギターも立てかけてあった。高価な物な何一つないが、手に取り奏でると当時を思い出す。
「久しぶりに何か弾いてあげようか?」
みどりはそう言うと、どこかで聞いた様なフレーズをアレンジして演奏し始めた。高校三年間続けたその音色はリビングに心地よく響いた。




