桜ひらり。
そんな桜の花びらが舞う中、私はキッチンの椅子に腰掛け壁に掛かった時計を見つめる。
「また、午後3時。」
「あれ?姉ちゃん、家に居たんだ。」
「うん、まあね。部屋全然片付かないし。ここで冷たい水を飲みながらどうしようかなって。」
「礼はさ、将来何になりたいとか夢があったりする?」
「強くなりたいのはないかな。ボクはこんな性格でしょ。興味を持ったら何でもしちゃうタイプだから。」
「ま、大抵そんなもんよね。サッカー選手になりたいだとか、アイドルタレントになりたいだとか思っても諦めちゃう子、実際多いから。」
冷蔵庫からパック入りのジュース。あと食器棚にあるマグカップを二つ取りだし、私は弟の礼と話を続ける。
「どうしたん?姉ちゃん。」
「うん、この島けっこう暇だから、今まで頑張ってきた自分は何だったんだろって。」
「何それ、まぁ東京とは違うから戸惑ってるのかい?婆さんや。」
「そうさのう、そんなところさね爺さん。」
そんな兄妹二人での会話を続けていると気が付けば夕方。私は炊飯器に米と水を入れ夕飯の支度を始める。
「礼は、今夜食べたいものある?」
「和食かな?」
「あんたいつもそうね。ハンバーグとか餃子とか普通答える年頃だと思うけど。」
「飽きちゃった。」
「まぁそうね。ウチもあっさりした料理の方が落ち着くし。」
「手伝おうか?」
「怪我すると大変だし、姉ちゃんやるから。そこでテレビでも見てなさいな。」
私は、味噌汁の準備をしながら不思議な感覚に陥った。目の前が暗くなり立っていられない。
「ちょ、姉ちゃん!」
礼の慌てる声が遠くなった。




