臨時の緊急家族会議。
一方、自宅では。
「だから見合いとかそういうの勝手に段取りしないでよ。絶対しないから。」
「あんた、まだ恋愛して彼氏ができてプロポーズされてとか夢見てんの。縁談って気がつくと全く来なくなるのよ分かるでしょ。」
「そういうの迷惑なの。彼氏見つかるし、デートとか全然アリだし。電話であれこれ楽しみたいし。」
「そんなだからいつまでたっても乙女座なのよ。」
「それずっとそうじゃん。変わんないでしょ。」
リビングで奇抜な格好のヒーラーの母親に説得されるわが妹みどり。
玄関のチャイムが鳴る。
「こんにちは、小包です。妙子がわざわざお持ちしました。只今ラブレター返信用封筒セットをお買い求め頂くと赤い貯金箱が当たるキャンペーンを実施しております。」
「妙子来た。上がってきて。お母さん会いたいって。」
「え、何で居るの?魔法少女メタモルフォーゼっ!まあいいや、おばさんサイン頂戴。小包じゃなくトレカに。」
「久しぶりね妙子。この子ったら聞いてよ。見合いしたくないっていうの。縁談が来てるのに。」
「おばさんみどりモテるよ。よりどりみどりさんて町内会で有名だよ。まだまだイケるしバイト先のレジに行列できるって噂で、他所に嫁いじゃうとおばさんがなんて言われるか知らないよ。」
どうやらそうらしい近所の噂では。どちらかというと年上である姉の私に先に持ってきてほしいものだ。まぁそんなわけのわからない縁談は固くお断りだが。
「昨日、うちに居たモモって晴れ着たちっちゃいの、あの子どうしたの?」
「相変わらす物覚えが悪いというか、忘れんぼさんというか…。あの子昔、居候してた座敷わらし。戸棚の和菓子とかあげてた。」
「チェリーブラウニー、思い出したわ。」
「そんな名前だったけ?モモちゃん。お姉ちゃんの職場で桜の精霊やってんだって。」
「今年の桜って派手に咲いたんじゃない。妙子どうだった?」
「なかなか散らなかった。この前の春の嵐で大方無くなったけど、まだ散ってない樹もくつか残ってる。」
「ここ最近、魚や野菜の値段が高かったでしょ。」
「何で分かんのそんな事。」
「花が咲くって結構樹には負担でね。大地のエネルギーやら何やら使ちゃうから過ぎると実らなくなったりするの。野山の影響が出ると川下の魚まで獲れなくなっちゃう。そんなものよ。」
「それ主婦の経験か豆知識ってやつ?」
「根拠はない。気がしただけ。」
「諦めて一旦帰ろうかな、お母さんいないとお父さん寂しがるから。」
「その方がいいと思うけど、弟たちに連絡取れるようにしててから向こうへ行ってよね。ああ見えて心配性で気が小さいんだから。」
「手紙送ったけど届かなかった?」
「あんな、意味不明な暗号文書受け取ってもどうしろっていうのよ。普通に無事な様子を何日かに一度で。お願いだから。」
「親の都合ってものがあるのよ。」
「転校の理由みたいな言い訳やめてよ二十歳過ぎて通るわけないでしょ。」
「定期連絡とかお母さん忘れそうだからそっちから。お願い。」
「まぁまあ、二人共そんなに熱くならないで。あたしが配信ネタでおばさん日記みたいなファンチャンネル始めるから。それなら手間もかからず安心でしょ。」いつもごめんね妙子。うちの家族で迷惑ばかりかけて。
「皆んな、元気に生活しているようでお母さん安心した。お父さんとお母さんは冒険者を楽しみながらそんな姿をお届けする仕事を選んじゃったんだ。あなたたちも『今、本望と思えてる感じ』なんて日々が続けば、それがあなたたちの笑顔の未来につながるの。」
「お母さん、モンスターに倒されて平気なの?なにが嬉しいの?」
「だってそれがお母さんのキャラなのよ。強くて正義やってるだけなんて頭悪そうじゃない。」
確かに悪役が悪役らしからぬ行動したり、ヒーローが最終的に育児パパで子供を車で送ったり。そういった意外性を垣間見れれば愛されやすい。しかし母のあれは無自覚とは考え難い。一応は本人も理解しているんだよな、まさか『それで本望よ』なんて捨て台詞を聞かされるとは思わなかったけど。母はいつだって信じて直そうとしなかったのだ。
「どうしよう今年の夏は、モブの皆さんにお中元とか送らなきゃ。」みどりは泣きそうになる感情を抑えるように口に手を当てた。




