お空の龍神。雨雲の正体は。
「目立っちゃうから、ちっちゃくなってくださいね。」天界の少女は不機嫌そうにそう言った。
「これで、いいじゃないかよこっちの服着てりゃ気づかないって。」
「あの家族は気配で感じるんだから、精霊使いが敏感なの分かるでしょう。」
デパートで洋服を試着している龍神と少女。
「じゃ、この時間何だよ。これ買わないでとっとと見に行けってか。」
「ぐずぐずしてないで、サッサと買ってって言ってんの。女の子がセール中の服選びしてんじゃないんだから。」
「お前どうすんのそんなに買い込んで。置き場所困るだろ。」
「そのホストみたいなスーツ着てあんたわかってないわね、もうそのまんま天界に引き返しなさいよ。」
この世界でもよくある光景だか、こういうのにはいつも男の方は心折れる。大量の紙袋を持たされ下界の街並みを歩くふたり。
「この後、船に乗って島までもうすぐだから。ほら。」
「どこかで、ビール飲んでからにしないか。気持ち落ち着かせたいから。」
「それじゃ、仕事になんないでしょ。酒は仕事終わった後にして。」
「あれだぞ。その胸元の空いたの着てると下着見えそうだぞ。」
「あれこれうるさいわね。あんたの妹の天宇受賣の方がもっと大変な衣装じゃないですか。」
「あれはいいんだよ。仕事着がそうなってんだから。」
「それもこれもないわよ。このくらいの服こっちじゃ普通です。」
「(気づかれてないですよね。龍神様。)そんなに気になるんだったらこっち見なきゃいいだけでしょ。」
「(あぁ、それにしても変なのと同行する羽目になったな巻くか、因幡。)ほら物陰の男どもが目のやり場に困った顔してるだろ。」
「嫁入り前のそんな貧相な姿、親父さんに見つかってみろ。」
「それは、ちょっと言い過ぎです。龍神様。」
「(ちょっと姿変えて、船着き場の上の方から見下ろすから。)」
霧に隠れ青空から見下ろす龍神。おおよそ一尺の小ささでは見上げても影すら見つけられない。
「半妖の類、狐の一族か。あの規模なら里の狐ではなくはぐれ者。親玉は見当たらないし妙だな。」
周りに居る小天狗に合図を出して元いた場所に姿を現す龍神。
「どうでした。様子は?」
「敵意は感じなかったが、念のため監視を付けた。因幡、乗船して飯でも食おう。」
デッキで食事を摂るふたり。サラダをフォークでつつきながらおもむろに筆を取り出す因幡。
「それだけで、足りんの?」
「ウサギの好物ですよ。野菜。」
「あぁそう。じゃぁまあいいか。」
護符が仕上がり龍神に分け与える因幡。
「必要ないよ俺は。」
「念のためです。邪魔になんないから。」
「そう?貰っとくよ。」
一方、狐面で顔を隠した男たちの集まりは、船上で集まって話を始める。
「嫁入り行列での祝いだ、小雨程度は仕方ねべさ。甘露さ思ねばわがたちは務まらんよ。」
「んだな。こればかりはギャラリーにも我慢して貰った手前、うちらの踊りも短めになるわけさ。」
落ち込んだ様子の狐面たちが、りんごをかじりながら反省会を続ける。
「ダンスユニット鳴子連に迷惑さかけたけんど、嫁入りの晴れ舞台に小雨はつきもの。若いお前にゃ意味が分からんじゃろうが。気にすな、な。」
「娘さんたちの晴れ着が汚れるから短めとか、あまりではないですか?」
一番年下であろう少年は半べそで訴える。
「昔ながらの行列だけだとはじからはじまで歩くだけ。俺らが呼ばれる訳ねぇし、踊りの稽古場維持するため。」
「そうそう。割り切って稼がんと、解散するかどうかの瀬戸際をなんとかせねばよ。」
「上々だ、お前はようやったほうじゃ。朗らかにな、次ば目いっぱい踊れば気が晴れる。そう辞めるば言わず続ける、ええな。」
「はい。」
「踊れんかったパート、ここでこのフォームで。」
「因幡。おふだであの連中をどうにかするより、おさつでねぎらった方が良かね。」
「少し様子を見ますかね。黒いトレーニングウェアなんで札つきのワルだとばかり。」
「お前そういうところだぞ。見た目で判断しようとすんのは気をつけようって天界の会議でしょっちゅう話に出んのは。」
「あ、始まった。踊ってる踊ってる。龍神様かっこいいですよあのダンス。」




