展望台で春の星座を眺めたい。
帰宅後、リビングにソファーに寝転んで天井を見つめる。
「車で高台の天体望遠鏡を覗きにいこうか…。」
「どうしたん。悩み?」側にいたみどりがつぶやく。
「勤め先に昔絵を描いてたって人がてね。協力したいなって。」
「良いことじゃん。何かあったのかと思った。」
「その人躊躇しちゃってて、過去に嫌なことがあったみたい。」
「それトラウマってやつかな。気にせず始めればいいけどそれが出来ないそんな感じなんだろうね。」
「駐車場のワゴン借りていい?考えがまとまらないから。」
「あたし運転しようか。事故っちゃうといけないから。梅ちゃんボーっとしてるし。」
外出用のスカートに着替えて薄手の上着を羽織る。妹と二人で丘へ向かうことにした。
ウインカーをカチカチと鳴らしゆっくりとハンドルを切る妹。
「灯火何に使うの?」みどりは私が礼に頼んだアイテムが気になってた様子。
「精霊と契約。以前うちに居候してたちっこいやつ憶えてる?」
「モモ?憶えてるよ。急に家出したので気にはなってたけど。」
「勤務先の桜に宿ってた。ちょっと手伝ってほしくてね。」対向車線のヘッドライトを眺めながら登坂車線を登り始める。並木の桜は散ってしまい派手さはないが瑞々しい。
「そこの自販機で飲み物買ってかない?」広めの空き地に停車する。
雑木林からガサガサと音がする。
「狸でも居るんかな。」目を凝らし暗闇をライトで照らす。するとシダの中から一匹の子リスが顔を出し話しかけてきた。
「婆ちゃんが急病なんです。助けて。」白い艶のある毛は湿気に濡れている。急いで木立を抜けてきたのだろう。私たちは救急キットを持ってリスの後を追った。
子リスの勇気ある行動で、幸い老婆は命を取り留めることが出来た。
「どうかこの子をあなたの側に置いてやって下さい。お役に立つと思います。」
まるで童話の様な断り切れない展開。名残惜しそうなリスの集落に見送られ、私たちは駐車場に戻ることにしする。困った顔をするみどり。
「また梅ちゃん拾ってきて。どうするん?」
「いつものこと。このご縁もきっと良い方へ転ぶから。」肩に乗った子リスは小さな少年に化け申し訳そうにみどりを見つめる。
「あんた手伝いなさいよ。やれる範囲でいいから。」車を運転するみどり。
目的地に到着する頃には、広い夜空に天の川が瞬いていた。




