桜の精霊。秘術とレシピ。
「すみません。ちょっと寄り道してて。」
「まだ、ミーティング始まってないから大丈夫よ。」
私は急いでエプロンを身につけて掃除道具を準備中。
「今朝またゴッホさんに会ってね、先輩連れて遊びに来てください。だって。」
貰ったばかりの地図を二人に手渡す。地図の端にメイド服姿の萌えキャラと休日予定が書き込まれていた。
「何か、昨日言ってたイメージと違うわね。」顔を見合わせて地図を確認する二人。
「ゴッホって確かこんな顔のイケおじで、跳ね橋とか描いてた人じゃ…。」眉間にしわを寄せてこめかみを押さえる仕草をする先輩。
近くにいた猫たちが警戒を始める。他の惑星の出身は顔真似も尋常ではない。
「今日は、お昼ご飯誰かに食べて欲しいな。」
「大丈夫たい。ホアとリンが顔出すって連絡ばあったけん。」楓が料理本を広げ昼食のメニューを検討し始める。
「そうなんだ。どんな料理がいいんだろうね。」私は積んであったメニューからポトフの材料をメモし、倉庫へ取りに行った。
しだれ桜が咲いている中庭を通る。着物姿の座敷わらしが幹にもたれかかり眠っている。
「祭壇に祀られず咲かせるのに力を使い果たしたんだな。汝…。」回復の言葉を使いそっと仕事へ戻ることにした。
天界から様子を伺っているロリ娘。
「今のところ困った様子はないか。」数人の男たちと雲の上でテーブルを囲んでいる。
「そろそろ降りる頃合いかと思います。」
「我々も黄金の休息日。数日間は向こうの世界で過ごすことができましょうぞ。」
「まぁそう急ぐでない。イベントはいつも後のほうが充実しておるわ。」
お昼前の食堂。清潔なキッチンからいい匂いが漂っている。
「こんにちは。上の人が行っていいって。」ホアとリンがやってきた。
「もうすぐできるから座ってて。食べられないのがあったら正直に言ってね。」
まだ着なれない真新しい制服姿やって来た二人。
他の人には見えないが、桜の精霊が私の側にいる。
「パスタとかうどんとかその辺りは、いつでも作れるから。」今日来たメンツは満足な様子。
「お国柄というか、見慣れない料理ば作れんけど、事前に言ってもらえれば準備ばできるけん。」
精霊がそっと見えない花を器に咲かせる。回復効果のあるハーブエッセンスの類だろうか。
「モモ、ほどほどにね。気づかれると後々面倒なことになるから。」
「わかっとるがな。花瓶の花だけっちゅうのもおもろないし、リピーターになって貰うにはサービスせえへんと。」
素朴な居心地の良さの演出。モモに手伝ってもらう部分はそれだけのつもりであったが、彼女もひとりで寂しかったのだろう。
「ご馳走のありがとう。午後の仕事、また頑張れる。」満面の笑みでアンケート用紙を記入するホアとリン。
先輩はモモに気づき、暖かく見守っていた。




