あなただけにちょっとだけ耳寄りなお話し。
スケジュール帳を開き、今日のルーチンワークを先輩に確認する。
「これプラス寮内の拭き掃除くらいね、買い物は済ませてあるし。」
「たったそれだけ?」
「ええ、三人もいるから。当初の予定が大幅に削減されちゃって。」
楓が入社したお陰で仕事が減った。暇を持て余すと座学講習とか組まれそうで少々不安になる。
玄関には桜の花びらが敷き詰められ、ほうきで掃くには勿体ない。
しばらくすると玄関前にバイクが止まる音が聞こえた。
「郵便です。」
私は受け取りのためひとりドアを開ける。
「あれ?どうして?」聞き覚えのある声に私は顔を上げる。配達区域を巡回中の妙子が立っていた。
「こっちも配達してるんだ。ウチここでアルバイト始めたんだよ。おはよう。」
「そうだ、梅ちゃんたちに伝えなきゃって思ってたことあるの。忙しい?」
「込み入った話じゃなきゃ大丈夫。今は退屈しない程度に仕事が暇らしいから。」
真顔になり真剣な口調で話す妙子。
「実はね、ラビットリボン5周年記念トレーディングカードの限定発売が決まったの。」
「…へ?誰が何?」
「楓たちの両親がカードになるのよ。」
「あ~。オヤジのたちのパーティー名か。変な南国から帰って来ないと思ったらそんな感じで帰ってこれないんだ。」
「当たり前じゃない。知らなかったの?」
妙子は何もかもお見通しらしい。我が家が思いもしない角度で。位置情報のマップデータよりそっちの方面の情報だったのか。ホビー情報誌を向ける妙子。
届いたエアメールも今思えば「こっち来ればびっくりするよ。テッテレー。」両親の作戦が想像できる。
「そんなに有名になっちゃったんだ。うちの親。」この世界に辿り着く前は東の国でお調子者のゲームプレイヤーとして名をはせた実績を持つ転生二世。それがうちの両親だ。
「魔法少女メタモルフォーゼのブルー。いよいよ世界デビューといったところね。」遠くを見つめ変身する妙子。
ため息をつく私。変身ポーズ決める妙子に奪われたほうきを取り返す。
「仕事の邪魔してごめんね。じゃ配達があるから詳しいご報告はまた後で。」妙子は赤いバイクで去っていった。
「梅子さん、何だったの?」先輩が騒々しさに気付いたのか声を掛けてくる。
「郵便配達でした。」ヘアゴムで髪をまとめると私たちは今日の仕事を始めることにした。




