↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/39

並行世界の|道標《みちしるべ》。

寮のアルバイト三日目。私は管理人室の鍵を開け、エプロン姿に着替えた。

「先輩の新車ないや。間に合った。」

誰も居ないのを確認し、ビオラを取り出し試しに弾いてみる。

ヨーロッパ風のレトロな様子に室内が変化した。

「こうなると思った。やっぱり先輩の趣味か。」手を二回叩くと元に戻った。

「いっそのこと、この部屋は最初からこれでしたって事にならないかな。めんどくさ。」

この世界は酷似しているが分岐した並行世界。所謂(いわゆる)パラレルワールドという訳だが、この世界にはこの世界なりの日常的な秩序がある。

「自宅なら模様替えで済む話も職場じゃ勝手が違うし、こんな時や場所を選ぶ楽器なんて渡されても…。」

外が一瞬光り、ガレージから先輩が出てくる。

「先輩ってどこかの星から来たのかな。深入りする気はないけど。」


「おはよう梅子さん。昨日はあれからどうだった?」管理人室に入って来る先輩。

「結構、楽しかったです。楓が我が家に来るの久しぶりで、家族がはしゃいじゃって。」

「あ、弾いてくれてたんだ。」

「お返ししようかと。」

「気に入らなかった?」

「いえ、色々辺りが変わっちゃうから。」

「ああ、それなら…。」先輩は無造作に置かれたリモコンのボタンを押す。

管理人室の地下への階段が姿を現す。

「この部屋、地下シェルターがあるから。万が一に備えて。」手招く先輩。

照明が点き辺りが見渡すと洋風の部屋。シェルターの様な備蓄倉庫の雰囲気はない。

「プライベートルームになっちゃってますね。」呆れる私。

「だって、万が一なんて滅多に起こらないのに勿体ないじゃない。」

先輩は花瓶に花を生けてサイドテーブルに飾る。

「このパネルで、世界の名所が投影されるから。私じゃなくて元々オーナーの設計なの。ヴィオラを弾いてもここでは何も起こらないから安心して。」天井に映し出される月の満ち欠け。

「試奏してみて。大丈夫だから。」

私はドビュッシーをワンフレーズだけ演奏する。

「こんな感じでいいですか?これから仕事があるから。」

管理人室へ戻り、私たちは仕事の準備に取り掛かることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。