その八百屋、天晴な青春讃歌。
この島は島という実感はない程度大きさで、山と海があり、温暖な気候と食べ物に恵まれた場所だ。人々の暮らしは豊かではないが、東方でスローライフを送るには人気の場所であることに変わりはない。
大きな観光スポットは不十分ではあるが、四季の移ろいを感じるためここで心と身体を癒す人々が訪れそして元居た場所へ去っていく。
宿場町でもないのに、その商店街は相も変わらずそこにあった。新しい小料理屋が増えたものの馴染みの客どうしが通りと行き来し、小さな住まいで生活を続けて暮らしは成り立っている。そんな風にみえた。
「先ずはそこの八百屋で野菜を見つくろって、帰り道に持って帰りましょう。」
先輩は私をその破格的値段がついた八百屋へ連れて行く。所狭しと並べられた商品の中には色や形の悪い物、古い物まであるが、安い。そして味もおそらく期待通りのはず。
「あんた、また酒なくなってる。店の奥に隠してあったの手えつけたね。」年配の女性の声が響くと店主のオヤジはため息をついた。
「今日はまた、一段と早いね。もう決まってるのかい?」店主の目がキラリと光る。
店舗の奥は息子たち夫婦が経営する小料理屋。要はあれである。このオヤジが仕入れた材料が厨房で調理さて小料理屋に並ぶ。息子が仕入れた酒がオヤジの喉を通る。上手く出来ている。
表の看板にはこう書かれてあった『フルーツパーラー源ちゃん』
「これは、一体…。」何か物語があるに違いない。私はそう確信した。
「店主さん、差し支えないなければこの店の名前の由来を教えてくれませんか。」
初対面できなり失礼だとは思った。しかし気になる。
「お姉ちゃんももの好きだな。」オヤジの瞳が輝く。
「あれはまだ令和の時代、この商店街振興組合の会合で一大イベントイベントが企画された(遠い目)。」
先輩の表情が曇った。あ、これ長いやつ。尋ねると小一時間足止めを食らう話題だ。
「すごい話やろ。この商店街の景気対策。こんな感じ三千万円規模でワンシーズン大盛り上がり。」
激安価格の食材買い出し。自慢話のおまけ付き。私たちは帰る時まで商品を預かってもらい次へと向かう。




