楓との偶然の再会。
私たちは通りの地下通路を渡り商店街へ向かう。私は懐かしい顔を見かけることとなった。
「知り合い?」先輩が私に声をかける。
「昔の友達です。学生時代の。」
「いいわよ、時間あるし。私離れて待ってるから。」
向こうが気づき声を掛けてきた。
「梅子、久しぶり。こっちに戻って来たと?」
博多訛りの彼女は、楓。小さかった頃からの友達で親の転勤でこちらへ転校でやってきた際に知り合った。何年ぶりかの出会いに心躍る。
「どげんしたとね。ひっとして邪魔しとった?」
「ううん大丈夫。こちらの方は私の勤め先の先輩。」
「はじめまして、楓さん。じゃ私は向こうで電話してるから。」
先輩は私たちを気遣い。電話が鳴ったふりをして二人にしてくれた。
「近くの寮に勤めることになってね。今、引継ぎを兼ねた買い出しで出掛けるところ。楓は?」
「こっちに帰ってきてマンションに住んどるけん。今のところ家事手伝い。連絡先変わってないとよ。」
数年を経過したが、変わったところはない事を確認することができた。それは相手と再会するのにとても重要なことだ。良くも悪くも今を知ることが関係を良好に保つ一番の秘訣なのだから。
幸いこの楓という同級生。体系も顔立ちもそこそこで、ロリ系でも美人でもない。アニメや海外ドラマに詳しいわけでもない。チェーン店の牛丼屋で見かけてもストーカーどころか一般的人すら見向きもしないタイプだ。
「寮の管理人か。梅子らしいっちゃね。」
「希望した訳じゃないけど。何かそんな風に話が進んで見習い期間すっ飛ばしてそういう話になった。」
「世話焼きって性格、分かりやすいから。声掛ける側には分かりやすいんよ。」
「怪しかったり、いかがわしい話のアルバイトじゃないから。」
「当然やね。梅子みたいなタイプに変な話持って行くと、みんな不幸に落ちるけん。そんな心配は誰もしとらんよ。」
「そっちは、どう?平穏に生活してる?」
「平穏に飽き飽きするくらい。浮いた話も無いし。世間の需要が少しはあってもいいはずだと思うけどね。」
「楓は不器用というタイプじゃないし『自分は大器晩成』とかそんな風に捉えた方がいいと思う。」
「じゃ、長話で邪魔になってもいけんし。また連絡するから。」
楓は知らない。自分に思いを寄せる男子が多かった事を。彼女特有の空気感が性別を超えた雰囲気にさせる事を。稀にいるのだ、生まれた時からちょこんと座って湯吞み持ってる置物の様な存在が。




