弟たちとランドセル。
妹との帰り道、私はみどりと辺りの風景を楽しみながらゆっくりと歩みを進める。
「梅ちゃん、あの二人よかったね。優しそうで。」
みどりは縁石の上で両手を広げバランスを取りながら、私に話しかけてきた。桜の木立ちと畦道に咲く黄色い菜の花が咲き誇っていた。
この時期になると、田舎では土筆が顔を出す。昔は妹とよく土筆採りに出かけたものだ。
「最初は、え?異国の人って思ったけどね。この辺りではあまり見かけないから。」
「都会だとコンビニの店員とかで珍しくないけどね。」
「年が近くてよかったじゃない梅ちゃんと仲良くできそうで。」
「でもさ、不安だと思うな。この国の治安はいけどさ、中途半端な田舎ほど偏見があるから。」
「相談やら、何やらで頼りにされたりしてね。」
「逆かもしんないよ。うちらが相談する側かも。」
「あ、それあるかも。ああいう人ってしっかりしたとこあるから。」
我が家への道のりは30分もかからない。玄関のドアを開けると弟たちのランドセルが並べて置いてあった。
「二人とも学校行ってたんだ。」みどりがそうつぶやく。
そう、我々の弟たちは、あまり学校へ行きたがらない。感染病の流行もあり不登校の生徒が増えた時期もあったが、弟二人は引っ越す前から周囲と馴染めない性分らしく、ずっと不登校が続いていた。
「学校へ行ってたんだね。偉い。偉い。」みどりはリビングにいる二人に話しかける。
「まぁ、約束した日だから。それに会いたい友達もできたし。」
大抵、学校とはそういうものだ。勉強も大事だが仲のいい友達ができればそれが理由で集まりたくなる。
引っ越してすぐに、担任教師との面会があったが、最初は成績を気にせずに遊びに来る感覚で登校すれば良いとの事だった。
「作ってたの出来た?」私は、二人のそばにあった金属製のアイテムを見てそうつぶやく。
「まだ、試作段階だけど、形にはなったかな。もう少しで動くようになると思う。今なら好きに触ってもいいよ。」
涼は、そう言って手の平サイズの物体をみどりに手渡した。
「で、何なのこれ?」
「異世界転移用の道具。」
みどりは、その言葉を鵜呑みにしたわけではない様子。当然だ。誰でも小学生の妄想と思うが自然だから。
「完成するとどうなるの?」
「この家が異世界の出入口になるんだよ。床に古代文字が光って、移動できるんだ。父さんや母さんがいつでも家に戻れる様に。」
にわかには信じ難い。みどりと私は、やれやれと言った表情で苦笑いをした。




