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国家追放された公女とパーティー追放された聖女を拾ってみたら…  作者: ヒデミケ


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もう一人の師匠 ―side リオン―

 ハイウルフの鋭い爪がリリアちゃんに襲い掛かったその時、ウサギのぬいぐるみがガードに入った……ように見えた。


 ガキ―ン!!


 鋭い金属音が鳴り響いた。

 何故? あれはただのウサギのぬいぐるみ。


 でもこれで間に合う!!

 ありがとう! ウサギ!


「多段【縮地】!」


 一瞬でハイウルフとの間合いをつめた。

 縮地を自分なりに改良した荒業だ。

 魔物は驚いた表情だがもう遅い。


「クロード流奥義! 【刹那なる一閃(ディー・クイック)】!」


 携帯していたダガーの刀身に魔力を流し込んだ渾身の奥義。

 防御力無視、回避不可能の離れ技だ。10歳の僕ではまだまだ師匠の域には達しないけど。

 ハイウルフは止まった豆腐のような感覚で切れた。上半身がずるりと崩れ落ちた。


「リリアちゃん!!」


「リオン君!!!」


 ギリギリで届いた僕の想い。

 危なかった。もう少しで全てを失う所だった。


 リリアちゃんが起き上がり飛び込んできた。

 僕はしっかり受け止めた。もう離すもんか。


 ウサギのぬいぐるみは空中に盛大にはらわたを巻き散らし、ラブレターがヒラヒラと落ちてきた。


 リリアちゃんが赤面したように見えたが、構わない。


「リリアちゃん!! 会いに来たよ」


 10歳の僕には男女の駆け引きとかそういうのは分からない。でも自然と涙が溢れた。


「ごめん。大事なウサギのぬいぐるみだったのに……」


「……いいの。だってここには、本物がいるんだもん!!」


 顔をクシャクシャにして泣いているリリアちゃんが愛しくて仕方なかった。



 …………


 ふと地面に宝石の欠片が落ちている。

 ――これは、『タリスマン』。


 防御石と呼ばれる魔力を宿した宝石。

 一度だけ危険な攻撃から身を守ってくれるありがたいものだった。


 あっ! あの時……サーシャがウサギのぬいぐるみからラブレターを取り出した時、こっそり入れていたんだ……


 まさか……二度も窮地を救ってくれるなんて。


 ――僕とリリアちゃんは、盟主であるライナー兄さんに、侯爵家の奴隷の件を速やかに報告した。

 侯爵家の隠し牢獄は、瞬く間に発見され、5人の奴隷が救出された。

 衰弱は激しいが、命は助かったと言う事だった。

 これにより、侯爵家はお家取り潰し。間者は全員国外追放となった。



 ――数日後。

 僕とリリアちゃんは、修道院に向かう最中だった。


「サーシャ姉さんさ、会ってみてどうだった?」


「……本物のお姉ちゃんの仇なのに、呼び方は『サーシャ姉さん』なんだね」


「仇って? 縁起悪いなー。エリシア姉さんは今幸せ絶頂期だよ。サーシャはちょっと敵から昇格しただけだよ。『姉さん』に」


「ごめんごめん。でもサーシャさんは、わたし達を助けてくれたヒーローよ。ダークだけどね」


 ――僕達はその最高のダークヒーローに会いに行くことにした。


 サーシャは、僕達を一瞥し、開口一番一言だけ言って、使いふるした羽ペンを器用に手でクルクル回していた。僕が送った誕生日プレゼント……嬉しそうに回すその姿は子供の時の眼をしていた。


「助けるのは当たり前じゃない! だって唯一の大事な弟子なんだから」


 クールビューティーなダークヒーローだった。

 ありがとう。サーシャ姉さん!


「――今日はもう一人、どうしてもサーシャ姉さんに会いたいって人を連れてきたんだ」


 きちっとした紳士。

 ――彼が僕の後ろから、意を決して赴いた。


「……あなたは……」


 サーシャ姉さんが驚いて目を丸くした。


「ここにたどり着くのが遅くなってすまない。君がリオンへ魔法を授けた意味がやっと分かったよ。僕が堅物で有名なライナーだよ。本物の英雄の君をこんな所にいつまでも閉じ込めておくわけにはいかない。僕と一緒に晴れ舞台に来てくれないか?」


「……リオン、さてはあなたのせいね?」


 僕は、サーシャ姉さんの功績を包み隠さずライナー兄さん、親友のエリシア姉さんにも伝えていた。自分の身を犠牲にしてまで姉さんを守ってくれた……そんなサーシャ姉さんに幸せがこないのはおかしいから……


 ――それにこれはエリシア姉さんからのたってのお願いだったんだ……


 あどけない笑顔を作ったサーシャ姉さんは、僕と遊んでくれていた、あの屈託のない綺麗な目をしていたあの紛れもない憧れのサーシャお姉ちゃんだった。


 見事に呪縛から放たれたサーシャ姉さんはとても眩しかった。


 そして意気揚々と詰所に戻るとその吉報に引き寄せられたかのように地球から舞い戻ったと思われる師匠達の姿がそこにはあった。


 あれ? もう皆して行って帰ってきたとか?


 会議用のテーブルの上には所狭しと、戦利品と思われる物が並べられていた。アヤネ姉さんやマール姉さんに地球の話を日頃からよく聞いていた僕には、並べられたこれらが地球産だとすぐに分かった。ただレアーヌ姉さんを彷彿とさせる魔法少女と言われるスケールフィギュアや、漫画本ばかりだった。


 あなた達、はるばる地球まで何しに行ってきたんですか……?




 ――2週間後。


 ライナー兄さんとサーシャ姉さんの婚約パーティーが盛大に行われた。


 ライナー兄さんは心に決めていた。サーシャ姉さんを娶り、彼女の機転で作り上げた国を見せようと。エリシア姉さんとの約束もあった。自分を命を懸けて救ったサーシャ姉さんに幸せを……と。


 ただここに至るには、エリシア姉さんのたっての願いがあった。

 ライナー兄さんが救った連邦国……これが何を意味するのか。そう、新しい制度改革が成せる事。


 ”わたしのたっての願いです。わたしを命を賭して救ってくれた親友サーシャに幸せを。

 彼女にあなたの作った新しい景色を見せてあげてください。

 そしてサーシャもあなたの特別になって欲しいから。

 重婚認可制度を作りましょう。

 きっとわたしとあなたの他にもすごーい身近に喜ぶ人がいると思いますし”


 不遇を受けていたがそれを自ら跳ね返したエリシア姉さん、その親友を身を挺して救ったヒーローサーシャ姉さん。ライナー兄さんはこの二人に最大の愛情を注いでいくと思う。


 サーシャ姉さんもライナー兄さんの真摯な愛を受け入れ、初めて自らの幸福を感じたようだった。

 そして、もう今のサーシャ姉さんは打算も陰りもない無邪気な少女のような可憐で素敵な令嬢だった。



 新しい景色を見上げるライナー。左隣にはサーシャ、右隣にはエリシア。


 ”今、この素晴らしい景色を3人で見られるのは、クロード君。君のおかげなんだろうな。

 お膳立てはしたよ。さてクロード君、君はエリシア曰く”嫁ーズ”にどうけじめをつける?”

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