~エピローグ~ 国家追放された公女とパーティー追放された聖女を拾ってみたら…
「リオン、俺の後を継ぐのはお前しかいない!」
俺は希望を込めて言い放った。
こんなに幼い彼が表舞台に現れない影の英雄となり、連邦国設立の立役者になっていた事はライナーさんより聞いていた。
俺が風紀隊を組織した事を知った彼は、10歳にもかからわず眼を輝かせて俺に弟子入りを志願してきた。
あの時の澄んだ、そして真っすぐな決意に溢れた眼を俺は今でも覚えている。
そして、俺はとうとう決断した。
リオンであれば俺以上に皆を引っ張っていけると思ったんだ。
彼は、幼なじみのリリアを悪徳侯爵から見事に救い出したんだ。
もう一人立ちは十分出来るだろう。その剣技は華麗で俺と違い、見る者を魅了する。
ただの10歳ではない。
彼曰く俺の魔力暴走事件が引き起こしたTS異世界事件でリオンは精神年齢まで逞しくなっていたのだ。つまりは少女や淑女の経験をした少年と言う事だ。全く以て意味が分からない。
あっ? まあ、俺のせいか……
――俺は意を決してリオンを呼び出すことにした。
「師匠、腰の調子はどうですか?」
「……ああ、大分良くはなってきたんだけどな」
リオンは真面目だ。何でも俺の言う事は真に受ける。
実は真面目過ぎて詐欺とかに引っかからないか心配しているくらいだ。
「それよりも、お前に伝えなければいけない事があるんだ……」
「……スージーさんとの誤解の事ですか?」
「いや、その誤解はもう解けたんだ、まあそもそもあれ魔物だし……」
「少し言いづらいんだけどさ、ほら? 俺この前魔王倒しに行っただろ?」
「はい……まさか!? それで腰を痛めたと?」
「いや、それは夜の方で……」
「では?」
「魔王がさあ、死ぬ間際に呪詛かけてきやがって……この様なんだ」
「えっ? まさか魔王があの最強の呪詛王だったんですか?」
「うん。見事にやられたよ……日に日に衰弱し、俺は1年かからず立っているのもつらくなるという呪詛にかけられたんだ。もう時間がない……」
「そんな……師匠にはまだこれから教えて頂かないといけない事が多いのに……」
ちなみに呪詛なんて真っ赤な嘘だ。
もしかけられたとしても、【自動蘇生】の応用で、呪詛自体を受けなかった事に強引にしてしまう事も出来るからだ。
呪詛王こと魔王は余裕で切り伏せた。
「……すまない。もう時間がないんだ」
「そんな……」
「そこでリオン、お前に風紀隊を任せたいんだ。次期勇者も襲名した事だしな」
「……僕はまだ10歳ですよ? 僕にそんな大役が務まるのでしょうか?」
何度も言うし、リオンもそう言うが、彼はただの10歳ではない。
凄まじいTS異世界線を少なくとも15年は経験してきた強者だ。男女両刀使いである。
完全なる勇者と言って過言ではない。
「うん、そもそもメンバーが優秀過ぎる。俺が風紀隊で何をしていたか知っているか?」
「指揮官です」
「うん、そうなんだけどさ、まあいろいろと……もう窓際行き寸前で……」
――その刹那、可愛らしい声色で横やりが入る。
「……やっぱり上手く言えなかったのですね。クロード様」
「うふふ。でもそれがクロード様ですから」
リーシャとマールだ。
「リーシャさん、マールさんこんにちは」
「リオン君。大活躍していてすごいね」
マールが明るく微笑んで声をかけた。
マールは人懐っこいので誰にでも好かれる性格だ。
「頼りない人ですが、わたし達をいつでも一番に考えてくれる素敵な人です。リオン君、あなたにもそんな大切な人……リリアちゃんがいるでしょう。クロード様が築き上げてきたものをあなた達に託します」
リーシャはしっかり者で、俺を陰から支えてくれたっけな。
ずっと暖かい目で俺をいつでも見守ってくれている。
今、俺は君達を幸せに出来ているのかな?
――そんなことを考えて2人を見た。
にっこり微笑んでくれた2人。
そして気が付くと俺は彼女達に向かい合っていた。
最愛の彼女達に……
フッと息を止め、眼を閉じる。
――今、思えばあの時に全ては決まっていたんだな。
俺はゆっくりあの日を思い出す。
そう、予想外の場所からレアーヌをお持ち帰りしてしまった……あの日だ。
――魔力暴走の日。
そこにいたマールから出た言葉は罵詈雑言ではなく俺にとっては本当に想定外の物だった。
最初こそリーシャマール両者から、集中砲火を浴びたが、彼女達はとっくに分かっていた。
俺が意味もなくレアーヌを連れてくるはずはないと言う事を。
″彼が好意を持たれる事は仕方がない事。止められない事だから。だってかつての自分がそうだったから。だからこそ彼は唯一無二の王子様″
リーシャマール両者から俺はひしひしと感じていた。この最高の愛情を。
「ふふ、クロード様また好きになられちゃったのですね。でもそこの魔法少女さん、クロード様を好きになるって事はそれ相応の覚悟が必要になりますよ」
「そうですわね。こうなってしまっては、もうクロード様への想いの強さで勝負する事を提案しますわ」
そこへリーシャが追い打ちをかける。
俺はというとリーシャとマールだけが特別であり、そこはブレていない。
だから他に気持ちが移る事はない。それだけは断言できたのだが。
「わたしは絶対誰にも負けない!! 好きだからついてきたの!」
そこへ立ちはだかるレアーヌ。
「そうはいきません。わたしだってこれだけ熱い想いを育てたんです! だにゃ!」
アヤネとミリーが間に入る。
「あたしだって、ここで身を引くわけにはいきません、逃げたりしたらマール師匠にも顔向けできませんから」
ミミが割って入る。
ここに来てまさかの便乗組がいた。
前々から彼女達の何らかへの異常な熱意は感じてはいた。そしてそれが向けられた先とは何かとも考えた事もあった。
――ええと……つまりこれって……
どういうこと!?
あの日をつい思い出し、つい照れる。
俺ってこんなに……
そして、目を開けると彼女達の笑顔があった。ただしそれは5人に増えていた。
総勢5名。エリシアさん曰く嫁ーズだ。
何故俺と5人が向かい合って笑い合う?
そう……今日は結婚式だから。
考えに考えたところ、俺の事を特別だと思ってくれる5人を花嫁に迎えよう。
そこに俺の意思はもういらない。
何故なら5人ともに心底愛せる覚悟があるからだ。
そういう結論に至った。
タイミングを計ったようなエリシアさんのお膳立ての重婚認可制度制定もきっとその為だろうから。
来賓としてライナーさん、エリシアさん、サーシャさんの夫妻、アークとドイルの元勇者パーティー。
リオン&リリア。風紀隊の面々であるエドワード、スージー。ミミの師匠、性女マールさん。
そして……
「マールお姉ちゃん結婚おめでとう!」
「マール君、婚約おめでとう!」
なんとそこには笹峰陽一さんと息子の海斗の姿があった。
「マール! いつも綺麗だけど今が一番可愛いよ!! また美容院行こうね~!」
「マール、結婚おめでと!」
ユリとミサキだ。マールの友人だそうだが、俺が王子様だとか何とかで激しく突っ込まれた。
まあ、友達想いのいい子達だ。
何故地球の彼らが俺達の婚姻式にいるのか。
それは俺の地球遠征があるきっかけで、ある事を意図したものに変わったから。
あるきっかけと言うのがライナーさんとエリシアさんの重婚認可制度制定という援護射撃。無駄にするわけがない。
本来の目的であるマールの復讐のためでもなく、聖名学園の編入の返事でもない。
俺が異世界でマールをもらいますとマールの親しい人たちに意思表示をする事。
リーシャも承知してくれた。
だが、当人のマールは斜め上の回答。
”わたくしはフキさんの願いの聖名学園編入と異世界でのイケメン王子様獲得両方とも諦めません”
つまりは異世界間を行き来しつつ青春を謳歌すると? でも傲慢ではないか? などとは思わない。
俺が無駄に苦労を強いられる気がしないでもないけど、不遇な境遇のマールに最高の幸せを届けてあげられるのが俺だと言うなら喜んで引き受けようと思う。
笹嶺さん擁する地球組も激しく賛成しているから。
ただしリーシャは、また一味違っていたようでマールの家族やフキさんの仇である3人組のアジトを90%スージーとアヤネの諜報で簡単に割り出し、きっちり一日もかからず始末していたようだ。
マールを家族同然に思っているから彼女からすれば当然なのかもしれない。
”あっ? あのゴミ共の屍ですか? ポチの餌になりました”
立つ鳥跡を濁さずか。
海斗たちは婚姻式にどうしても行きたいという事で連れてきた。聖名学園に行くはずだったマールをもらいうけてしまうのだから、呼ばなきゃ罰が当たるもんな。
「レアーヌ! クロード君! 結婚おめでとう! もうレアーヌを追放なんてしないでねー!」
地球組を連れてきたのなら、この人も。
ということでスタイルがすごいリノアさん。
「レアーヌ。不本意だけどお前、俺が何処行っても来ちゃうみたいだし……だったら離れるな!」
「うん、何処までもついていくんだから! 愛してるから!」
背筋が凍り付く、いや、むずがゆくなる言葉。
ただ嬉しくて仕方がない。
「ミミ、大事な風紀隊の参謀役ありがとう。お前の献身、折れない想い、全部伝わったから、俺は精一杯受け止めたい」
「何があってもあたしはあなたの参謀です。ずっとついていきます」
ミミにはこれを機にちょっときわどい衣装を着させるのは控えさせよう。
「クロードさん、わたし今日ほど嬉しい日生まれて初めてでございます。あなたに身も心も救っていただいたのですから! うんにゃ!」
どこかで聞いたフレーズ。
ああそういえば見た目はメルだしな。ただし俺が好きなのは中身だよ。アヤネ。
「す……すみません。何かメルさんの時の一番嬉しいが出ていたみたいです。改めて。わたしあなたに会えるのなら、どんな不遇な転生強いられても何度だって乗り越えて見せます」
そういえば、メルと言えば……バカップル。
リーシャのためにバカップルのルディーとメルを追放に追い込んだのだけど、今思えばルディーそれほど悪くなくね? あと話を聞くとメルも操られていただけとか……
悪いことしたな……いっそのこと2人して転生でもして、結ばれていれば目覚めは悪くないかもな。
それとマールのために風紀勇者たちを堕天使マールさんの元へ粛清で送り込んだのだけど、あいつら今の方が幸せみたいだな。めでたしめでたし。
っと、ひたっていたら、何処からともなく魔物の影が。
追ってくる魔物は超巨大なカニだな。全長10メートル程だろうか?
ジャイアントビッグクラブってとこか。
ここはしがない自然に囲まれた僻地、子爵領での、婚姻式だもの!
お祝いに、みんなでわたしを食べて! って事ではるばるやってきてくれたのだろう。
巨大ガニが迫ってくる。
へー外殻は固くて防御力はありそうだ。
まあ俺には関係ないけどな。
剣で捌いてもいいのだけど今そんな物騒な物持ってないや……
あっても甲羅が硬いから刃こぼれするよなー。
ここはこれで。
「【時空裂く剣】!」
技名に剣が入るが実際のところは徒手空拳である。
何故ならこれは魔法だから。
巨大ガニが触れている空間そのものを切り裂いて次元に歪みを生じさせる超上級『時空魔法』。
生物を形作る元素が触れている次元が捻じ曲げられたらどうなるか?
それに伴い硬度は関係なく歪みに逆らえずやがてひしゃげることになる。
バリバリバリ……ゴリゴリゴリ……バキッ!!
巨大ガニの硬い甲羅がいとも簡単にぞうきんを絞るかのようにひしゃげて飛散した。
「みんな! 今日はこいつで盛大にお祝いだ!」
皆唖然とする中……
「絶対に幸せになろう! リーシャ! マール! レアーヌ! アヤネ! ミミ!」
俺の力強い言葉に、更に力強く頷く5人だった。
そして、彼女達は俺の頬へ順番に優しい口づけで応えた。
そして、この日最大の拍手が、会場を包んだ。
「わたしリーシャはクロード様! あなたを愛しています! 永遠に……」
「わたくしマールは何があっても永遠に、あなたを愛し続けます! クロード様!」
「クロード。わたしをいくら追放してもずっと一緒だからね」
「クロード様、あなただけのあたしでいたいです、ずっと」
「クロードさん。愛してます! 愛してるにゃ!」
彼女達の真っすぐな告白が飛び交う。
そして彼女達5人は不思議とこの時全く同じ事を思っていたようだ。それは……
”あなたは、出会った瞬間から、わたしの運命の王子様でした!!!”
全てのきっかけはリーシャとマールとの出会いだった。
そして俺は声を大にして今なら言える。
国家追放された公女とパーティー追放された聖女を拾ってみたら……
――世界最高の幸せが手に入りました!!!
皆様に楽しんで読んで頂けるよう一生懸命書き切りました。最後は癖のあるヒロイン、負けイン5人をクロードが愛情いっぱいで娶るハッピーエンドに出来ました。よろしければご感想やご評価、ブックマークで足跡残していって頂けたら大変嬉しいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました。




