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国家追放された公女とパーティー追放された聖女を拾ってみたら…  作者: ヒデミケ


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僕の矜持 ―side リオン―

 サーシャはその美貌を生かし、エリシア姉さんと婚約が決まっていた王家のカイル殿下をたぶらかし、熱を上げさせて、それに嫉妬したエリシア姉さんに姑息な虐めを受けたと言い張り、完璧な自作自演をしたひどい人だった。でも魔法を僕に教えてしまったことで自滅した。


 一応、全く王家に伝手のないサーシャを殿下にクリスマスパーティーで引き合わせてしまったのは僕なのだけど、そのお礼に魔法を教えてもらったんだ。

 だから、よくよく考えると僕も、その時は知らなかったとはいえ、サーシャのもくろみに加担してしまったんだな。面目ない。


 ただ僕は教えてもらった魔法を有効活用できた。

 サーシャに気付かれずに、彼女が自分で着ていたワンピースを切り刻み、肥溜めに飛び込んだ所をしっかり見て記憶していたのだ。

 サーシャはそれを、エリシア姉さんにナイフで脅されてやったと殿下に報告。あらかじめしっかり熱をあげさせておいたので、殿下はサーシャの言い分を全く疑わなかった。


 ここで僕は、全てを鑑み、国家に通ずる唯一のヒーローに逆転を懸けて一手をうった。

 それを解読できたのが今の連邦国盟主ライナー兄さんなのだけど。僕は何とかライナー兄さんに魔法で記憶した映像を伝えた。

 結局、当時信頼ある文官だったライナー兄さんの活躍のおかげで、エリシア姉さんは、冤罪が証明され、修道院から出られたんだ。


 この時、サーシャは当然の如く、代わりに修道院に幽閉されたんだ。


 この魔法、具体的には、


『書かれた文字に込められた記憶や強い思念を読み取る、及び自身の記憶や強い思念を文字に込めて投影させる魔法』


 これを使って欲しくて僕に手紙を書いた? でもどうしてリリアちゃんが僕にその魔法が使えるのを知っている? 


 あ! サーシャは悪役令嬢として、修道院に幽閉されていたんだった。リリアちゃんも今現在修道院にいる……

 接点あるじゃないか。


 ”ウサギが気がかりです“


 確か修道院は禊の場所だ。手紙の類は、外部へ通される前に、まず修道院内で内容をチェックされるはずだ。

 NGな内容をマスキングしているようにしか思えなかった。


 “ウサギ“はもちろん覚えている。おそらくリリアちゃんが受けとった僕が用意したウサギのぬいぐるみの事だろう。


 それが、気がかり?

 自分は大事にしていたけど、悪役令嬢として、修道院送りになったから、捨てられないか心配って事だろうか?

 魔法を使わずとも何とか意味は通じるけど……


 実は、僕は魔法は使いたくない。


 思念を読みとってしまうのが、厄介だから。

 例えば、“ごめんなさい“とただ一言書かれた文章でも、この魔法で、その時の書き手の気持ちをダイレクトに読みとってしまう為、“そんな事全く思ってないけどね“みたいな予備解釈がついてくる。


 ……でも。


 リリアちゃんは、明らかに僕に宛てている。やるしか前に進まない。

 読み取り方法は、対象の筆跡に指を指し当て、神経を同調させる事。


 “ウサギ“に指を押し当てた瞬間、恐ろしいほどの記憶と、思念が脳裏に流れ込んできた……


 ……おそらくクリスマスパーティーの日から、リリアちゃんは、一時も、このウサギから意識を放していなかった。


 だから、その記憶映像は膨大で、その分、暖かい家族関係や、生活ぶりまで垣間見えた。

 そして、リリアちゃんは、何処へ行くにもウサギが一緒だった。


 ……根底にある思いは……


『リオン君、いつも一緒だよ』


 こうやって見るのが、覗き見しているみたいで申し訳ない気がした。


 ……だが、ある時を境に、状況が一転している。


 記憶から勘ぐると、つい最近じゃないかな。


 リリアちゃんは、筆頭子爵家の令嬢だ。

 僕が言うのもなんだけどもう既に、際立つ美貌を兼ね備えている。


 あまり記憶にしたくなかったのだろうか、途切れ途切れではあるが、映像を繋げると、どうも齢10歳にして侯爵家嫡男との政略結婚が、決まったらしい。


 リリアちゃんは、はっきり言って優しい。

 気遣いよろしく弱いものには、手をさしのべる。

 僕は、リリアちゃんのそんなところが好きだった。


 そして家族思い。

 だから思うところはあれど、家の繁栄、両親の喜びようを見れば、受け入れる選択肢しかなかったんだと思う。


 ……ある夜、羊皮紙に涙を滴らせながら、書いている文章があった。


『リオン君が好き、好き、大好き!』


 こちらが赤面するほど、真っ直ぐな想いだったが、涙で濡れた紙を綺麗に折り、ウサギのぬいぐるみの縫い目に入れていた。どうやら自分なりのお守り代わりだったようだ。

 嫁ぐ事を決心に変え、僕に対する想いは、お墓まで封印する決意なのだ。


 ……ただそれからも、片時もウサギは放さない。


 そして、彼女は、見ていた。

 彼女が悪役令嬢とされてしまう決定的証拠を……

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