俺の義妹は、恋愛ドラマの見過ぎである。
そんなやり取りのあった夜。
俺は夢を見た。夢の主は勿論、美玖である。俺と美玖はあたかも付き合っているように、家のソファーで二人で身を寄せ合って映画を見ている。
「ねえ。お兄ちゃん。国立の医学部はやめて私大の医学部にしてよ。お兄ちゃんと一緒の大学に行きたい。本当は私も医学部に行きたいけど私の頭じゃ無理だしなー。」
こいつ。夢だからってなんてこと言いだすんだよ。凄い言い分にびっくりしてしまった。
「急にどうした?」
「いやー。なんかしみじみ考えちゃって。お兄ちゃんが大学で私以外と思い出を作って笑っている姿なんて想像しているだけでも耐えられないよ。」
美玖の言葉に夢の中の俺は真剣なまなざしで美玖を見つめる。
「俺もだ。俺だって耐えられない。本音を言えば、俺はお前をどこにも行かせたくない。ずっと俺の目の届くところに置いておきたいくらいだ」
こいつ。俺の癖に言ってることやばいな。独占欲強すぎるだろう。
そんな俺の気持ちとは裏腹に美玖は凄く嬉しそうだった。
「へー。そんなに私を独占したいんだ。私以上の独占欲だね。案外、自分に自信がないの?こんなに可愛い私をよその大学になんてやったら誰かにとられちゃうかもって不安なわけ?」
お前が勝手に夢で都合よく言わせてるんだろ。俺はそう思ったが見ているだけなので何もすることはできない。
そして、夢の中の俺は俺とは違い落ち着いた様子だ。
「俺を挑発してるのか?」
そういう俺様系の発言は、俺が10倍イケメンじゃないと成り立たないと思うのだが、どうなのだろうか。
しかし、美玖には特段の不満は内容で、少女漫画の俺様系に迫られたヒロインの様に顔を真っ赤にしている。
「えっ。ごめん。ちょっと意地悪しちゃった。でも、裕子ちゃんとキスするお兄ちゃんが悪いんだよ。」
「はっ?キスなんてしてないだろ。」
「えー。してたよ。昼休みに裕子ちゃんから渡されたイチゴミルクを飲んだでしょ。あれは、最初にちょっと裕子が口をつけていたかられっきとしてキスだよ。」
美玖はあれをキスと認識していたのか。そういえば、あの時、美玖は不機嫌そうな様子だった気がする。
「あれはそういうのじゃないだろ」
「えー。あの女は絶対狙ってやってるって。私に見せつけようとしたんだよ。気さくな感じ出してるけど本性は名家のお嬢様だからね。基本的に滅茶苦茶ガードが固いし、自分以外の人間は一切信用してない。お兄ちゃんみたいなお人好しは油断してるところっと騙されちゃうよ。」
「なんだ。嫉妬か?」
「そうだよ。あの女が嫌いなのは事実だけどね。」
「じゃあお前には直接してやる。」
夢の中の俺は美玖を抱き寄せると唇を美玖に近づける。
「馬鹿。もう。そんなことされると私、本気にするよ。今も昔も私にはお兄ちゃんしか見えないの。お兄ちゃんしかいらないんだから。」
美玖は駄々っ子の様にそう言うと、俺にキスをした。
はあ。
あいつ、こういうドラマばっかり見てるからな。
俺の思いもむなしく、二人は互いを貪るようなキスを続ける。そして息が苦しくなったのか美玖が口を離した。
「お前の唇。イチゴの味がするな。昼に飲んだイチゴミルクよりずっと甘い。」
これ、かっこいいか?思わず笑ってしまったんだが。
だが美玖は非常に満足そうだ。
「もう。恥ずかしいからやめてよ。」
美玖は恥ずかしそうに下を向き、息を整えると再び俺にキスをする。
やっぱりあいつは死ぬほど面倒くさい。
さっきのビンタは一体何だったんだよ。
俺のことが大好きじゃないか。
呆れる俺をよそにキスを終えた美玖は俺の胸に抱き着いた。
「ねえ。お兄ちゃん。一つだけお願いして良いかな?」
「なんだ?」
「今日は、一緒に寝てほしいな。お兄ちゃんと一緒にいるとなんだか安心するの。」
その後も、俺は延々と二人の愛の語らいを見せられたのだった。




