幼馴染は最近の状況がなんだか面白くない。
次の日の朝、俺はいつも通り裕子と学校に向かっていた。
「それでね。同じクラスの圭ちゃんが着物を着たいっていうから、お茶のお稽古に一緒に連れて行ってあげたんだけど、正座がきついって言ってて。そこは気合いよって教えたら、逃げ出そうとしたんだけど、足がしびれてころんじゃったの。」
「それは大分愉快だな。ちなみにお前って長時間の正座も平気なのか?」
「まあ。平気といえば平気かな。結局は気持ちな気がする。」
「大分根性論なんだな。」
「当たり前でしょ。美しさは気合いなんだから。例えば凄く寒くてもばっちり決めた服で、行くのが私のこだわりよ。」
そういわれると確かに裕子は冬でもばっちりと決めている。
人形みたいな見た目でごまかしているがすぐももひきを履き出して、(兄さん、今日は寒いですよ。そんな恰好で大丈夫なんですか?)と得意げにする美玖とは大違いだ。
「お前のそういうところ、本当に尊敬するな」
「そこまでじゃないわよ。私が好きでやってるだけだし。」
裕子のこういう姿勢には女子の中にもファンがいると聞くし、裕子が嫌いだという人間は聞いたことがない。
いや。一人はいるか。まあ、明らかに問題があるのはあっちの方だが。
そういえば一つ聞いておくことがあった。このタイミングが良いだろう。
「なあ。裕子って美玖についてどう思ってるんだ?あいつだって、幼馴染だろ。」
裕子は一瞬だけ、顔をしかめたように見えた。しかし、気のせいだったのかすぐにいつも通りの笑顔に戻った。
「えっ。お人形さんみたいで可愛いなあとは思ってるわよ。クラスが違うせいかあんまり話す機会は少ないけどね。でも尊敬してるよ。しっかりしてて、なんでもそつなくこなすイメージね。」
「そうか?あいつは結構不器用だと思うけどな。」
「えー。そうかな。少なくとも私も含めて学校の人はそう思ってないと思うけどな。風紀委員でも大活躍みたいだし。」
「まあ頑張ってるんだろ。責任感も強いし、実は面倒見も良いしな。まあ家だとドロドロの恋愛ドラマばっかり見てるがな。」
「あー。昔から好きだよね。」
「そうなんだよ。全く、ドラマ見ながら勉強するとか本当、何考えているんだろうな。」
裕子は俺の言葉に答えず、じっと俺を見る。
裕子がまれにしか見せない少しだけ近寄りづらい雰囲気をまとって。
「どうしたんだ?」
裕子は俺の問いかけに我に返った様子で俺を見た。
裕子にはもう近寄りずらい雰囲気はなく、いつもの明るく穏やかな雰囲気に戻っている。
「いいえ。あんまりドラマとかみないなあと思っただけよ。それよりも、三ツ谷先生の新作の話ししましょうよ。全然、語り足りないわ。」
「奇遇だな。俺もだ。」
その後、俺達は最近読んだ歴史小説の話をしながら学校に向かったのだった。




