義妹だから添い寝しても問題ない
次回で最終話になります。その後、3話ほど番外編を投稿する予定です。
そんなことのあった夜。
突然事件は起こった。
「きゃー。」
急に隣の部屋からどたどたとうるさい音がしたと思うと美玖が部屋に駆け込んできたのである。
「どうしたんだ?」
「兄さん。出たのよ。」
「出たってなにがだ?」
「ゴキブリよ。ゴキブリ。あのおぞましい生き物が出たのよ。」
2階にか?一階では見たことがあったが二階で見た記憶はあまりない。
「さてはお前。部屋でおやつとか食べてただろ。」
母さんの教えで俺達は部屋では絶対に飲食をしない。そのため二階にゴキブリが入ってきたことはなかったのだが、美玖は最近、夜中におやつを食べることがあるため部屋でも食べているのではないかと常々怪しいと思っていた。
「何を言ってるんですか。そんな訳ないじゃないですか。」
何となくこの焦っている感じから見て黒と判断して間違いないだろう。
「はあ。自業自得じゃないか。」
「私は、食べてないって言ってるんですけど。というかそんなことより、問題はGです。何とかしてくださいよ。」
「まだいるのか?」
「もういません。どこかに逃げられました。」
「じゃあ。しょうがないじゃないか。明日バルサンでも焚こうぜ。」
「明日って。じゃあ今日はどうするんですか?」
「今日は、もう遅いし、寝るしかないだろ。明日には何とかするから焦るなよ。」
「はあ。兄さんは、頼りにならないんですね。」
美玖はそう言うと寝巻の上に羽織っていた上着を俺の勉強机の椅子に掛けた。
「なんで脱いだんだ?」
「寝るからですよ。私。上着を着たままじゃ寝れないんです。」
よく見るとお風呂上りなのか少しだけ体がほてっている。めったに見ることのない無防備な寝間着姿であり、俺は、思わず布団に顔まで入って見えないようにした。
「ここで脱ぐなよ。部屋で脱げばいいだろ。」
「ここで寝ますよ。もうあの部屋には戻りたくありませんから。」
「はあ。」
俺は思わず、布団から顔を出すと、ちょうど布団に入ろうとしてくる美玖と目が合った。
「何ですか。急に大きい声を出して。あと、邪魔なので、もう少し右によけてもらえますか。」
俺は焦って再び布団に顔をうずめる。
「本気か?なんで一緒に寝ることになってるんだよ?」
「一人で寝てGが来たらどうするんですか。兄さんと一緒じゃないと怖くて眠れないんですよ。」
美玖はそう言うと強引に布団の中に入り、枕元に有った、スイッチで電気を消した。
「おい。さすがにまずいだろ。」
俺は壁の方に体を傾け、美玖の方を見ないようにしながらそう言うと美玖は、俺の背中に抱き着いてきた。
「うるさいですね。寝ますよ。」
こんなんで寝られるかよ。背中からは美玖の高い体温と強い鼓動が感じられている。明らかに美玖も緊張しているのだ。なら、こんなことするなよという話ではあるが。
「おい。美玖。」
美玖は俺を無視して何も答えない。
はあ。美玖は頑固なところがあるからな。
「なあ。美玖。」
俺が諦めたことが伝わったのか美玖は俺の問いかけに答える。
「何ですか兄さん。」
「昔はよくこうやって一緒に寝たな。」
「そうですね。」
「お前がずっと話し続けるからなかなか眠れなかったよな。」
「そういう時代もありましたね。」
「母さんに怒られたよな。二人で話ばっかりして夜寝ないって。」
「早く寝なさいと早く起きなさいはお義母さんの口癖でしたからね。早く寝て早く起きれば人間は立派に育つからって。」
「そうだった。そうだった。それ良く言われてたわ。」
「懐かしいですね。」
俺と美玖は昔を思い出してしみじみとした雰囲気になった。
「なあ。美玖。」
「なんですか?」
「そう言えば一つ、お前に言っておきたかったことがあったんだ。」
「言っておきたかったことって何ですか?」
「義母さんが死んだ後、この家に戻って来てくれて本当にありがとな。お前がいなかったら、今の俺はきっとこんな風に笑えてなかったと思うんだ。」
「どうしたんですか。急に?」
「ずっと言いたかったんだ。お前だって中学で全寮制の女子校に行ったときはそれなりの覚悟があって行ったわけだろ。それを俺のために戻って来てくれて。お前には本当に感謝してるんだ。」
「はあ。兄さんはなにも分かってないんですね。」
「どういう意味だよ。」
「私が戻ってきたのは自分のためです。女子校は楽しかったですけどちょっと規則が厳しかったですし、推薦も今の学校の方が生徒が不真面目な分、有利な感じがしましたから。」
思わず笑みがこぼれる。これこそが美玖の美玖たる由縁なのだ。この期に及んで、推薦のためにこの家に戻ってきたなんていう話を信用するやつがどこにいるのだろうか。
それからしばらく俺達は下らない話をして気づいたら眠っていてしまったのだった。




